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間章-ユキノのペルソナ-

藤原研究所の現局長である藤原ユキノの私室は、同年代の女性の部屋と比べて私服などの物が少なく…部屋の床には、食べ終えたカニやサケの缶詰の空き缶が複数列に分かれて積み上げられ…机の上には、天秤式のコーヒーサイフォンと写真立てが置かれているだけの無機質な雰囲気を放っている。


その写真立てには…戦マキナの桜・小町・葵に似た少女3人が黒のセーラー服姿で写っており…その隣に立つスーツ姿の女性であろう人物の顔部分のみが裏に折られている。


3月中旬の朝であるにも関わらず、簡素なベッドで寝るユキノは暑さにうなされており…

その暑さの熱源が、ワイシャツの第二ボタンまで開いた胸元で鼓動している。

その鼓動を打っている物の正体は、幾何学模様の8枚の花びらである。


その熱によって完全に目が覚めてしまったユキノは、天秤式のコーヒーサイフォンに、挽かれたコーヒー豆を左側のポットに入れ、水を右側のタンクに入れると…タンク下のアルコールランプにマッチで火を付ける。


そして、コーヒーが抽出される間に…新しいワイシャツに着替え…タイツを足先からゆっくりと履いていくが…


「葵とテフナ君が、あの長崎へ行くらしいね…私も興味深いよ…」

一人しかいない筈のユキノの私室に、気だるげな女性の声が響く…


コーヒーサイフォンに入れた水が、コトコトっと沸騰し始める…


その声に対して、ユキノのタイツを足から腰にかけて通していく手が一瞬だけ止まるが…気にする事なく身支度を続ける。


「行くことを許可したのは…ユキノ君の判断かな…それとも私かな…」

身体の内側から響く声を更に無視するユキノがスカートの下にワイシャツを入れる為に…持ち上げた瞬間、僅かに脇腹の左側に縫合された傷痕が見える。


更に水が沸騰し、コーヒーの抽出が進む…


「また彼女達を窮屈な所へ閉じ込めた癖に、ユキノ君は悠々自適に暮らしている…」

「やめて…」

無視しきれなくなった声に対して、ユキノから思わず否定の言葉が出る。


「科学者だからと言って白衣を着る必要があるのかな?…ユキノ君は、眼鏡が必要な程に目が悪くない筈だよね?」

ユキノの中で、気だるげな声が次第に大きくなる。

「いや…」

その声を掻き消す様に、ユキノが首を振った後…視線が鏡を捉えてしまう。


「今日も、明日も…君は立派な科学者ギークだよ。」

ユキノの背後には…鏡越しに気だるげな雰囲気を放つ科学者ギークの女性が立っている。


科学者ギークの女性がユキノへ、不敵な笑みを見せた瞬間…

抽出が終わった事を知らせるかの様に、コーヒーサイフォンのアルコールランプの蓋がカチャンっと音を立てて閉まる。


そして、身支度を終えたユキノが、珈琲を一口飲み…気分を落ち着かせると、その科学者は霧散していく…

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