表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
竜族の異端者 〜嫌われ者の大冒険〜  作者: 黒部
無情のジルドラス編
2/91

1話 本当の強さ


試練の時が刻一刻(こくいっこく)と迫る。

そんな事など知るはずもなく、太陽が最も高く上がる頃、少年は田畑を駆け抜ける。



「うわぁ、野菜がいっぱいだ!これ全部父さんが作ったの!?」

「まぁな。今年も豊作みたいで何よりだ」



日照りが続いているにも関わらず、ジャミルが一人で耕した広大な畑には沢山の野菜が実っている。アルシュは嬉しそうに、茶色い頭を髪になでつけて畑の中を腕白に駆ける。


「見てよ父さん!野菜があんなにいっぱい育ってるよ!?」

「ははっ、あまりはしゃぎすぎるなよ、転んだら怪我するぞ…っておい!」

「いてて…!」

「ああもう!だから言わんこっちゃない!」


手拭いで顔を拭い、ジャミルは盛大に転んだ息子の元へ行く。アルシュの擦りむいた膝小僧に手を翳し、唱える。


治癒魔術(ヒール)


「!」


直後に血がとまり、瞬きした頃、膝小僧には怪我の痕すら残ってらない。



「すっげぇ!やっぱり父さんの魔術ってすごいや!」

「そうだろ?もっと褒めてくれてもいいんだぜ?」



琥珀の瞳を輝かせるアルシュに対し、ジャミルは茶色い前髪を撫で上げ、歯をキラリと見せてドヤ顔を決め込む。


「俺もいつか、父さんみたいに魔術を使ってみたいなぁ!」

「別に、使えたってそんなにいい事なんてねえよ」

「なんで?だってすごいじゃん!」


羨望の眼差しを向ける息子ではあるが、なぜかジャミルは眉を(ひそ)め、苦く笑った。

その反応がアルシュにはどうも飲み込めない。



「それより仕事だ。アルシュ手伝ってくれ」

「えぇ?それよりなんでか教えてよぉ!」

「そ、それはだな…」



話を逸らそうと話を切り替えたが、何気に呟いた言葉に興味を持つ前のめりのアルシュにジャミルは後頭部を掻きながら言い訳を考える。


「あ、ジャミルさん。いつもありがとよ、おかげで助かってるよ!この様子だと、今年の納期も大丈夫そうだね?」


そこへ近所に住む恰幅の良い男性が現れ、ジャミルは良い抜け道ができたとホッ息を吐く。


「ああ、今年もたくさん余りそうだ。なんなら分けてやるよ!」

「いつもすまないなぁ。最近は不作でね、なかなか野菜が育たないんだよ」

「無理もないさ。最近は日照り続きだからなぁ、たまには雨でも降ればいいんだけど」


ジャミルは魔術を使って野菜を育てているが、他の住民は農業に役立つような魔術を使えないため、手作業で何とか野菜を作っている。


だが、日照りの影響で収穫の時期になっても満足の行く結果が出せずに困窮する者が多かった。

この男性もその1人で、家族を食べさせる事に必死でありながら、収穫量が不十分であることに不安を隠せなかった。


「や、やめろ!父さんから野菜を奪うな!あっち行け!」


そんな事情も知らないまま、少年は野菜を持って行こうとする男に非難の言葉を浴びせる。

アルシュは他人に野菜を分け与える事を快く思っていない。

ジャミルの畑に立ち入り、野菜を持って行こうとする住民を泥棒のように思い困惑する。だから野菜を盗まれないために、勇気を振り絞って住民から野菜を守ろうと立ち向かう。


アルシュは住民の体の大きさにたじろぎながらも、野菜を貰おうとした事に腹を立て追い返そうとする。それに対し、男は困惑しながら愛想笑いを浮かべる。



「な、なぁ坊主、俺は何も父さんから奪おうって言ってるんじゃないんだ...」

「ダメだ!父さんはこの野菜を天塩にかけて育てたんだ!それを他の誰かになんて渡さないぞ!このバカ!山賊!怠け者!」

「怠け者って…」



聞き分けの悪い少年に対して住民はどうしたら良いか分からず苦く笑う。


「こらこらアルシュ、近所のおじさんを怠け者呼ばわりしちゃダメじゃないか」


アルシュは突然の父からの叱咤に戸惑い、心の奥底から秘めていた思いを曝け出す。



「だって悔しいよ!父さんが納期に間に合わせるために必死になって作った野菜じゃないか!なんで知らないおじさんなんかに奪われなきゃいけないんだ!」



アルシュは心の中身を吐露したと同時に感情が漏れ出し、グスンと涙ぐむ。


息子の優しさに、ジャミルの頬は自然と緩む。彼はアルシュの目線に合わせるようにしゃがみ込み、微笑んだ。



「お前は俺のことを思って怒ってくれたんだな?ありがとう、父さんは嬉しいよ。でもな?あの人は納期に納められる野菜が少なくって困ってたんだ」

「でも、父さんだって頑張ってたじゃないか…」



住民の男が困っているということはアルシュにも理解はできた。だが、ジャミルは日照りが続く中で試行錯誤を行い、野菜を育て上げた。その苦労を長い間見てきただけにアルシュには納得しきれなかった。


「いいかアルシュ?俺たち竜族は誇り高い種族だ。ましてや大人になれば責任が伴う。自分だけが助かればいいって訳じゃない」


「で、でも…!」


意地を張ったアルシュは顔を歪めてジャミルの言葉に耳を傾ける事を拒んでいる。


「アルシュ?弱い者いじめなんてやって言い訳がないんだ。忘れるんじゃないぞ?できる限りでいい。困っている人がいれば助けてあげるんだ。これが本当の強さで、誇り高き竜族だ」

「責任?本当の強さ?助ける?」


幼いアルシュには父親の言っている内容がよく分からず首を(かし)げる。


「ははっ、お前にはまだ早かったか。でもな、お前が好きな竜族の偉大な戦士フリヤも災いや戦いなんかで他の種族が困っていたら必ず助けに行ってたんだぞ?」


ジャミルはアルシュがよく読んでいる本の物語に登場する戦士フリヤを例として挙げる。彼は大昔に世界を救った英雄の1人である。

「え?そうなの?」


アルシュは英雄の名を耳にして興奮(こうふん)させながら目を輝かせる。


「まぁ、責任とか、本当の強さなんて今は分からないだろうが、大人になればそのうち分かるさ。その頃には守らなきゃいけない女もできるさ」


そう言ってアルシュの頭をポンと撫でる。


「分かったよ父さん!俺、立派な竜族の大人になる!」

「よしいいぞ!それでこそ俺の子だ!


アルシュは笑顔で元気に答え、父のようになろうと心に決める。





                        ◆






その夜、夕食と湯浴みを済ませたアルシュは先にベッドに戻り、本に読み耽る父もまた、蝋燭を消して寝床に向かう。


「うぅん…!」

「アリシュ…?」


何やら息子の様子がおかしい。いくら夢にうなされているんだろうが、あんな辛そうな声を聞くと心配になる。ジャミルはアルシュの眠るベッドへ向かう。息子の顔色を見て驚愕する。


「アルシュ…?どうした?すごい熱じゃないかっ!?」


息子の体からは汗が滴り落ち、体が小刻みに震えていた。小麦色だった顔色は紅潮し、息が荒い。ジャミルは一刻を争う状況であることに気付く。


『主よ。癒しをここに治癒(ヒール)!』


アルシュは慌てて息子に手のひらを掲げ、詠唱込みの治癒(ヒール)を試みる。


「クソッ!下級魔術じゃダメか!」


だが、中級、上級と行けば効果があるのかもしれないが、最低限の治癒魔術しか使う事のできないジャミルでは、今のアルシュを救えない。



「だったら、今は医者の所に行くしか」



ジャミルは慌てふためきながら、とにかく医者の元へ連れて行こうと考えた。しかし、このナフィランドにいる医者のいる家は一件のみで、診てもらえるのは夕暮れ時までだ。


家で看病する他ないと考えたが、アルシュの容体は深刻で、濡れたタオルを当てた所でどうにかなるとはとても思えない。このままでは悪化の一途を辿る一方だ。

せめて誰かに頼りたい。ジャミルが途方に暮れていると、村から離れた丘の上に住む1人の医者が頭に浮かんだ。


『もしアルシュの体調がひどくなれば、いつでもいいから必ず来い。全力を尽くそう』


ナフィランドの離れの丘の上にのオースと言う老人が住んでおり、自宅で患者の手当てや治療を行っている。

あまり評判の良い医者ではなかったが、オースはジャミルから毎年野菜をもらっていることで恩を感じている。ここから距離もあるが、今は迷っている場合ではない。



「あの医者しかいない...!」



ジャミルは以前オースの言った言葉を思い出し、息子をおぶって家を飛び出し、農村から少し離れたところにいるオースの元へ向かう。


月明かりに照らされたナフィランドの村をジャミルは荒い息を吐き出しながらひたすら走り、医者の元へ急ぐ。

このままでは息子が死んでしまう。

それではこの子の母に合わせる顔がない。



「俺はこの子を守らなければならない。あの時約束したじゃないか!」

「死ぬなよ!アルシュ!」



走りながら背中を預ける息子に声をかける。その声は震えており、心は揺れ動いている。

アルシュは今にも消えそうな声を振り絞って答える。



「大丈夫だよ。僕は....強い竜族に...なるんだ。」


ジャミルは目から涙が溢れそうになりながら、ひたすら走りる。


「もうすぐだ!」


丘が見え、白い石造りの小さな平家がポツンと経っている。オースの家だった。


ようやく暗闇の向こうから光が見えてきた気がする。彼は急いで丘を登ろうと足を踏み入れようとした瞬間、ジャミルの体に衝撃と痛みが走る。


その体はアルシュと一緒に吹き飛ばされ、芝生の上に転がった。どうやら殴り飛ばされたようだ。

よろめきながら立ち上がろうとするジャミルの頭にさらに衝撃が走り、その場に倒れる。


床で寝そべるアルシュにはうっすらと意識がよみがえり、虚な目で何が起こったのか確認する。

ジャミルの体を3人が囲んでいるのが月明かりで分かった。

1人は木の棍棒を持っており、袖が破られている前開きの灰色の上着を着用した大柄の男。

もう1人は黒い羽織に胸と包帯を巻きつけ、口と頭部を布でお覆い隠した短髪の女。もう1人は髪を逆立たせ、毛皮を羽織った眼帯の男だった。



「よくやった、これで俺たちは飢えを凌げる」

眼帯の男は満足げに倒れたジャミルを見下ろす。しかし大柄の男は慎重に距離を置く。包帯の女は男2人を急かす。

「兄貴、まだ喜ぶのは早いぜ、こいつまだ生きてるよ」

「早く止めを刺そうよ!こいつから音、聞こえただろ?絶対金持ってるって」


彼らはこの辺りに住む野党のようだ。飢えを凌ぐため、金品を奪うために襲ってきたのか。


「ちくしょう、こんな時に...っ!」


無理もない。最近は野党が多いと言うのはよく聞く話だ。こんな夜更けに金銭を懐に入れてジャラジャラと音を立てれば、野党が襲って来ないわけがない。


「バカか俺は...っ!」


状況を察知し、最近多発している事件に巻き込まれたことに気付いたジャミルはうつ伏せの状態でため息混じりに自分を呵責した。




                           ◆



「早く止めを刺しちまおうぜ?じゃないと逃げられちまう!」

「まて!」


大柄の男が棍棒を振り下ろそうとした刹那、それをリーダーと思われる眼帯の男が片手を伸ばして止める。


「こいつどこかで見た事があると思ったらジャミルじゃねえか!」


大柄の男はナフィランドに住んでいた事があり、農作物を近所の住民に分け与える者がいる事を知っていた。


「ジャミル?それなら知ってるよ!こいつ、どんな手を使ってるのか知らないけどこの日照りの時期に作物をたくさん育ててるみたいじゃないか!」

「本当かよ!?それなら、どうやって作物を育てているか聞き出そうぜ兄貴!」


ジャミルはそれを聞いて嘲笑(あざわら)いながら答える。


「ケッ!お前らには無理だよ。バカだから」


「アァ!?」


それを聞いた眼帯のは青筋を浮かべながら近付く。


「そうか、俺たちには教えたくねえのか...それならよぉ!お前が話したくなるまでしっかり痛めつけてやらねえとなぁ!」


挑発に対して激昂した眼帯の男は地面に伏せるジャミルを痛めつける。それを真似するかのように他の仲間も彼を何度も蹴り付ける。


「父、さん....!やめろ....!」


息子は出せるだけの声を出すが、彼らには届かず、ジャミルは必死に野党たちからの猛襲に耐える事で精一杯だった。

アルシュは何もできない自分に嫌気がさし、歯痒い気持ちがいつまでも心の中に漂っていた。



「なんだこいつ、何がおもしれえんだ!?狂ってやがるのか!?」


しかし何度も蹴られながらジャミルは余裕を感じさせる笑みを崩さない。それに対し、眼帯の男は違和感を感じずにはいられない。


「なぁアルシュ…昼間の話、覚えてるか?竜族は偉大な種族だ。自分だけ助かればいいわけじゃない、弱いものいじめなんてしちゃいけないんだ。困っている人がいたらなるべく助けなきゃいけない…!」

「だから...俺はこいつらを絶対に許さねえ!」

「そしてアルシュ、お前の父親として教えてやる!俺たちは強いんだってな!」


蹴られながら、ジャミルは口を開く。その声は優しくも、はっきりとアルシュの耳に届いた。

少年は父の決意に感極まり、涙ぐむと同時に、心の中でこの窮地に対する不安を拭い切れずにいた。


「おい、その棍棒をくれ」


眼帯の男がそう指示すると、野党達は蹴るのをやめる。そして親子を嘲笑うかのように、大柄の男は眼帯の男に棍棒を渡す。


「守るならよぉ、まずは自分の身を守りやがれぇっ!」


眼帯の男は自身の太い腕で棍棒を自分の頭の上まで持ち上げ、渾身の力で一気に振り下ろす。


「やめろぉぉぉぉ!!」


アルカスの渾身の叫び。父が殺されてしまう事への恐怖と抵抗のあまり、弱々しくも、力を振り絞った声が夜の丘に響いた。


「っ!」


だが、棍棒はジャミルの眼前で止められ、それ以上奥に押す事ができない。眼帯の男は突然発揮された彼の異常な力にたじろぐ。

その力は、細身の体からは想像もつかず、野党の3人が彼の力に驚きを隠せない。


「ど、どうなってやがる!?こんなヒョロっちい野郎のどこにそんな力が....!?」


岩弾(ロックストライク)!』


「…っ!ぐおぉっ!」


その一瞬の隙を狙ってジャミルは魔術で地面から石を飛ばし、顎に直撃させる。眼帯の男はよろめき、体のバランスを立て直す事ができない。その隙に右手に力を込め、思いっきり殴り倒すと、眼帯の男はその場に崩れた。



一瞬の間を静寂が夜の丘に漂う。残る野党の2人は何が起こったのか、突然のジャミル の反撃に状況が整理できていない。

アルシュも父親の勇姿に圧倒され、言葉を失っている。そして心の中で歓喜が湧き立つ。



「す、すごい…っ!」


意識を失った眼帯の男を見て、状況を理解した顔を隠す女は慌てふためきながら腰にあった短剣を引き抜き、ジャミルに襲いかかる。



「調子に乗るな!」



しかし、魔術を扱って見せたその男は怯む様子を見せず、冷静に両手を構え、青白い光を放ちながら光球を作る。


「なに、?それ…?」


魔光弾(ライトブラスト)!』


勢い良く放たれた謎の球体は、風邪を切り裂く音を立てながら螺旋状の軌跡を描いて突進する。

そして刃先が身体に届く前に、女の腹部にジャミルの攻撃が直撃する。



「クッ....ハッ!」



それから吹き飛ばされ仰向けに倒れ込むと、痛みに苦しむどころか、それ以上立ち上がる様子を見せなかった。



「大丈夫だ、死んじゃいないさ」



それを見ていた大柄の男は腰を抜かし、必死に手足を動かしながら後退する。



「ひ、ひぃっ!...ゆ、許してくれえっ!」



大柄の男は割に合わない悲鳴を上げると、眼帯の男と包帯の女を担いで逃げようとする。ジャミルは「待て」と声をかける。


すると、体を凍らせるように動きを止め、恐る恐る後ろを振り返る。

彼は何をされるのか、恐ろしげに思っていたが、ジャミルは銀貨の入った小袋を渡す。



「これでそいつらに何かうまいものでも食わせてやるんだ。もうこんな悪いことはするんじゃないぞ」

「す、すみませんでしたっ!」



部下は銀貨の入った袋を持って仲間を引きずりながら去って行った。

虚な目が輝き出す。アルシュの瞳には、悪にも慈悲を惜しまない父の姿が偉大な戦士に見えた。

いつか自分も父のような男になりたい。アルシュは憧れを抱きながら、大きな背中にその身を預ける。


その後、アルシュを担いだ父は医者オースのいる家へ向かう。

ジャミルは戦いに勝ったとはいえ、不意打ちを受け、何度も蹴られたこともあり、ボロボロだった。

オースに払うはずだった金銭は野党にくれてやった。あいつらも生きる事に必死だったから恵んだつもりだったが...。


「何やってんだ...!ますますバカじゃねえか、俺....!」


ジャミルは自分を呵責しながらも、兎に角アルシュを担いで目的地へ辿り着き、家の扉を必死に叩く。


「頼む!ジャミルだ!開けてくれっ!」


髭を生やし、毛のない頭の老人寝床から突然の騒音に驚き、ゆっくりと体を起こして扉を開ける。


「なんだこんな夜遅くに」


オースは何のイタズラなのかと思っていたが、衰弱した少年を抱える、ボロボロのジャミルの姿を見たオースの目が一気に覚める。


「い、一体何があったんだ!」

「俺はいい、それより早くこいつを見てやってくれ!」

「まったく、こんな夜遅くに…‼︎とりあえずこの子を奥へ運べ!」


医者は嫌々ながらもジャミルをベッドに運ぶ。そして医者は彼に魔力を注ぎ込む。



超治癒(エクストラヒール)



緑色の光が彼を包む。

すると徐々にアルシュの表情に落ち着きが見られていく。

アルシュの容体が良くなっていくのを見て父の体の強張りが解けて行く。


「よかったぁ〜…」

「いや、今やったのは彼の熱を一時的に取り除いたに過ぎん。起きたらこの子に薬を飲ませるんだ」

「ありがとう、生憎今は金を持っていない。後日必ず払う」

「全く呆れた奴だな。まぁ今回は一刻を争う事態だったみたいだから金はいらんよ」

しかし、ジャミルは受け入れられない。息子を救ってくれたオースには対価が支払われるべきだ。

「そんなわけには行かない!金は必ず払う!いいな!?」

こうしてジャミルは息子を救ったオースに大きな借りができた。「この恩は必ず返す」彼は心の中で誓うのであった。


翌朝、アルシュの熱は嘘のように下がる。ジャミルは肩の力が抜け、喜びと共に眠りにつくのであった。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ