【第七話】 理由
そんなことをしながらいくつかの街を壊滅させた俺達。あまりにも荒らしすぎたのでしばらくは大人しくしようと、山にこもることにした。
山にもいくつかの集落があるのを知っていたが、小さすぎて利がないので襲うつもりもなかった。
だが、ある日。
不意に山の中で聖獣と散歩していると、集落へつながる道を親子が歩いているのが見えた。
細身だが力強い足取りの父親と、まだ父親の腰くらいしかない幼子だ。
何かの用事の帰りなのだろう。健気にも山道をせっせと歩いていた幼子だが、途中で父親の手を引く。
身をかがめて、何ごとかと子供の声に耳を傾けていた父親だが、立ち上がるなり子どもを持ち上げて、肩車を始めた。
集落までの残り僅かな道のりだが、肩に乗った子供は遠目からみても楽しそうに見える。
その光景を見て、おれは胸によくわからないモヤモヤが広がるのを感じた。そのモヤモヤは昔から度々胸を去来し、意味のわからなさにイライラしたものだった。
「決めた。明日あの村を襲おう」
俺が呟くと、わんこはきょとんと俺を見上げてきた。
夜。
わんこの腹をいつも通り枕にして眠ろうとしたが、なかなか眠りにつけない。不意にわんこが身を捩り、少し離れたことで冷たい風が俺たちの間を通った。
そして、わかった。あのもやもやの正体がなんなのか。そして、正体がわかったことで無性に腹が立った。腹が立ってたって仕方がなかった。頬に流れる涙もそのままに、憤慨しながらわんこの腹に顔を埋める。
あのモヤモヤの正体。なんてことはない。俺はずっと、寂しかったんだ。悲しかったんだ。