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6 キスの魔力は万人不同、終生不変なので……

 今日も今日とてシャベルでマイと攻略相談だ。

 マイも舞と同じ受験生でやっぱ塾に通ってるらしい。塾がない日は夕方六時くらいにはやり取りできるが、遅い時だと十時を超える。今日は早いうちから連絡がついたので晩メシ食った後自室に籠もってやり取りを始めた。舞も塾のない日だったみたいで食後すぐ風呂入って今は自室だ。



『兄さんは避妊具はちゃんと用意してるんですか?』

『避妊具? コンド―さんのこと?』

『はい』

『用意してるわけないやん』

『どうしてですか?』

『使う予定ないのにお金の無駄やん』

『妹さんとの時、避妊しないんですか?』



 俺絶句。



『まともに会話すらしないのに、R18展開への備えなんて意味ないやん?』

『今はそうでも、万一に備えて男が用意しておくべきだと思います』

『そりゃそうだけど、兄貴殿は用意してるの? 部屋は調査済みなんだよな?』

『兄貴は持っていないようです』

『じゃあお互いまだ攻略が進んでないんだよ』

『妹さんはこないだ彼氏シャツ着てくれたんでしょ? もう彼氏と思ってるんだから自信をもって迫ればよいかと』

『あれは罰ゲームって言ってたからなー』

『本当に罰ゲームだったんですか?』

『親友に証拠写メ送るって言ってたから、その親友に確認すればハッキリするけどな。その親友は例のライム交換した子な』

『確認はダメです。妹さんの交友関係を巻き込むのはマズイですよ』

『そうなのかな? わかた、とにかく確認はやめとく』

『R18に備えるかどうかとは関係なく、避妊具を装着する練習はしておくべきです』

『うーん、そうだな。ぶっつけ本番で焦って恥かきたくないもんな。興味もあるし。わかた。ゲンかつぎの意味も込めて一つ買ってみるか。確か千円くらいで売ってるんやったな』

『英断です! ラテックスが装着カンタンらしいですよ』

『ラテックス? メーカー名?』

『材質です。他にもポリウレタンっていうのもあって、それぞれ特徴があるみたいです』

『スゲー。ちゃんと調べてんだな。俺も調べてみるわー』

『買ったら一報よろです』

『わかた。どっか遠いコンビニで買おう。ちょうどいい区切りだな。ちょっと落ちる。風呂入ってくるわ』

『お風呂の後、もう少しだけいいですか? まだ聞きたいことがあるんですよ』

『桶』



 湯船につかって、コンドーさんをどこで買おうか思案する。非常に有意義な時間を過ごして自室に戻った。

 シャベルと開くとマイにDMを送る。『風呂出た。聞きたいことって何?』



『兄さんってファーストキスはいつでした?』

『マイさんケンカ売ってるんスか?』

『すみませんwww眠ってる妹の唇奪ったとかはないんですね』

『考えたことなかった。ちょっと睡眠姦のやり方を調べてくる』

『ちょっと待って、合法の世界に帰ってきてw』

『マイさんこそどうなんスか? 兄貴殿の寝込みを襲ったりしてるんじゃないんスか?』

『はい、実は懺悔を聞いてほしくてこの話をしたんです』

『マジか』

『小3の時、眠ってる兄貴にキスしたのがファーストです。兄貴は気づいていません』

『そか。兄貴殿は当時小4ってことだよな。兄貴にとっても初めてやったんやろな』

『はい、そのようです。兄貴の同意を得ず、自分の欲に負けて兄貴の初めてを奪ったんです。私は最低なヤツです』



 兄貴の同意を得ず兄貴の部屋を漁っても無反省なのにキスは悔悟の情が湧くんだな。女子にとってキスは特別なんだろうな。



『気にするなって言っても気にするだろうけど、俺は兄貴殿がうらやましいわー。相手が妹だったら俺の唇なんかなんぼでも奪ってくれって感じだわー』

『wwwさんきゅです。少し気が晴れました』

『そうそう、気晴らしに「同意ありでキスをする方法」を考えようぜ。女からキスを求めるのって楽勝じゃないの? 超イージーモードに思えるんやけど』

『そんなことないですよ、超絶ハードモードです』

『まず潤んだ瞳で男を見つめる。次に目を閉じてそっと顎を上げて唇を差し出す。そうすれば男はキスしてくると思うけどな』

『ハードル高いですって。キスされなかった時のことを考えると怖くてできませんよ』

『そうかなぁ。絶対いけると思うけどなぁ』

『キスはやっぱり男から迫るものですよ。私を妹さんと思って、ロマンチックな口説き文句でキスを迫ってみてください』



 ハードル高すぎワロタ。

 まぁ、マイを元気づける目的もあるから真面目にやるか。



『眠り姫は王子様のキスで目覚めただろ? 他の誰でもない王子様のキスだったから姫の呪いは解けた。キスには呪いを解く魔力がある。そうは思わないか?』

『思います』

『その魔力の正体について考えたことあるか?』

『それはないですね』

『指紋ってあるだろ? この世に同じ指紋の人間は二人といない。だから裁判でも使われてるんだよな』

『それ、キスとどんな関係が?』

『口唇紋っていうのがあるんだよ。唇の紋様が指紋と一緒で万人不同、終生不変のものらしい。万人不同、終生不変って言葉に魔力を感じないか? 眠り姫を目覚めさせたのは王子の唇だった。姫の唇も王子の唇も唯一無二。二つの唯一無二が合わさったからこそ呪いが解けたんだよ。どう? 結構ロマンチックな口説きネタじゃね?』

『はい、素敵な話と思いました。兄さんの創作ですか?』

『いや、口唇紋について書いてる本があったんだよ』

『紹介してくださいよ。なんて名前ですか?』

『まぁ、知らない方がいい。知ることで解けてしまう魔法もあるってことで』

『なんで意地悪するんですか? エッチな本関係だからですか?』

『いや、犯罪の本。のぞき魔か何かが犯行現場の窓ガラスに唇の跡を残していて、口唇紋を使えば犯人わかるんじゃね?って感じの法医学の話なんだ』

『兄さん、サイッテーです』

『だから知るべきでないと言うたんやん!』』

『キスを汚された。つらい』

『俺が悪いんじゃないぞ? 口唇紋ってのは実在する。裁判で使われてるかは知らんけど』

『はい、兄さんは悪くないです。のぞき魔の話に感激した私が全部悪いんです。つらい』

『相手がお前だからネタ晴らししたけど、妹だったらそんなこと言わねーよ? 俺だってTPOくらいわきまえてるからな』

『そうですね、妹さんには絶対言わないでくださいね』

『なんか、俺が悪いみたいな感じで話が終わって悔しいんだが?』

『www冗談ですよ、楽しいひとときでした』



 いつもこんな感じでシャベってます。なんかこう、妹攻略は一向に進まないけど、自分の恋愛観とか他の価値観を確認できていい感じだわー。


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