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23 リッカからの急報

黒沼洋太:高1。健人の同級生、幼馴染。バスケ部所属。ヤカラ系の怖そうな外見だが中身はオタク。

 今日退院した元ケガ人だけど質問ある?


 学校に行ったのかって? 今まさにその学校にいるわけです。

 退院手続きが完了して帰宅したのが11時。風呂入ったり入院セットの整理をしたりして昼飯時。午後から登校して授業受けたよ。まさか来るとは思ってなかったんだろうな、クラスのみんなはびっくりしてたわー。


「おいヒーロー」

 そう呼びかけてきたのは黒沼洋太。幼稚園から高校までずっと一緒で、部活も同じバスケだった。外見は色黒で筋肉質、目つきが鋭いものだからヤカラ系に見える。でも安心してほしい、中身はオタク寄りだったりする。

「何だ、半グレ」

 黒沼が三角吊り目をさらに吊り上げて睨みつけてきた。でも安心してほしい。中身はVチューバーにドハマりしてる健全な青少年だったりする。


 睨み合うこと数瞬、先に折れたのは言い出しっぺの黒沼だった。

「……やっぱりやめよう、恥ずい」

「言っとくけど俺の方が恥ずかしいからな」

 俺って、女の子を助けるために大ケガしたと学校では思われてるから、一目置かれてるような感じなんです。自分でいうのも面映ゆいんだけど英雄視っていうか、俺を見る周りの目が特別すぎて何だか恥ずかしい。


「バイト探しは進んでんのか?」

 そうそう、黒沼にはずっとバスケ部に誘われてるんだけど、俺、バイトに興味あるんスよ。思いがけず舞と急接近することになったからバイト探しはほったらかしになってた次第です。

「いろいろいっぺんに起こったから忘れとったわー」

「ラノベの主人公みたいで羨ましいわー」

「ラノベの?」

「女を助けるためにケガするとか、まんまラノベじゃね? 舞と同い年だろ? 中学三年生はヤバイけど、言うても一個下なだけだしな」

「いや、助けた女はヒロインじゃないんだよ。そいつ、好きな相手がいるからな」

 マユとは恋愛同盟を締結している。マユは俺と舞の恋愛をサポートし、俺たちはマユの父親攻略を手助けする。


「奪っちまえよ。略奪対象ヒロインの可能性だってあるだろ」

「お前、舞の前でそんなこと絶対言うなよ? そいつ、舞の親友なんだ」


「言わねーよ」

 黒沼は続けた。

「舞、ブラコンだもんなぁ。お前は笑い飛ばしてるけど、アイツは絶対ブラコンだぞ? 俺の目に狂いはない。羨ましい」

 そうなんだよ、コイツ、小学校の頃から舞のことブラコンだって言ってて、俺はずっとまともに取り合ってこなかったんだけど、当たってたんだよなぁ。


「お前にも妹いるじゃないか」

 俺の鋭い指摘に黒沼は嘲笑で返してきた。

「4歳女児やんけ。一桁年齢のガキなんて恐竜、ザウルス。口から火吐けるんちゃうかと思ってしまうわー」

「恐竜系ロリヒロイン、ええやん」

「あーあ、本っ当にお前が羨ましいわー」

 話にならぬとばかりに黒沼は大袈裟にかぶりを振って見せた。


 ここで携帯が振動した。

 見てみるとライムに着信あり。リツカからだった。無言チャットの後、『すみません誤送信です』と詫びチャット。これは二人で決めた一種の合言葉で、『急ぎ連絡したいことがある。『タリタ・クミ』のメール確認を求める』という意味になる。


「もう帰るわー。部活がんばってくれ」

「完治してないなら無理すんなよ」

 そう言って別れ、とりあえずトイレに籠もることにした。タリタ・クミを立ち上げ、チャットを確認する。


『昨日兄と父、天羽の三人が会議をしました。そのやり取りを録音したので聴いてほしい。すぐに会える?』


 敵側最高首脳会議の盗聴記録なんて最高じゃないですか!

『わかった、どこに行けばいい?』

 鷹城家ウチでもいいんやけど、リツカには遠いと思われる。

『城南公園の石垣の上のベンチで』

『了解。念のため聞くけど他校生と学外で会って問題ないのか?』

『私は加害者家族、あなたは被害者本人。問題ない』

 ホンマかいなと思ったが、リツカに従うことにする。

『すぐに向かう』

 短く返事してスマホをしまうとトイレから飛び出した。舞とマイに一報入れようかとの考えがよぎったが、録音データを確認してからにしようと思い直した。とにかく急行する。



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