2 マイと出会ったときのこと
マイこと『ただいま兄貴攻略中』氏と出会った経緯なんだけど、一か月くらい前、氏からDMを送ってきたことが始まりだった。当時俺は次のようなことをシャベっていた。
俺の妹は世界一@sekai1
近親婚を禁止している民法734条が憲法24条に違反しているのは明白だ。民法改正はよ。
俺の妹は世界一@sekai1
ウェスターマーク効果は所詮仮説。反証として歴史上有名なイモウトスキーは枚挙にいとまがない。
今思えば煽りを呼び込む徴発系シャベルだったと反省してるが、尖ってたんだよ、あの頃の俺は。まぁ、身バレの心配がないので言いたい放題できてたってのもある。SNSの世界で空気な俺でも「民法改正はよ」の時は少し荒れた。
『ただいま兄貴攻略中』と名乗る人物からDMを受け取ったのはそんな渦中にある時だった。
ただいま兄貴攻略中@lovememuchmore
『はじめまして。『世界一』さんは妹と結ばれたいと思ってる人ですよね? 私も兄貴と結ばれたいと思ってます。良かったらこれから仲良くしませんか?』
俺が妹大好きな高一男子であること、マイが兄貴大好きな中三女子であること、奇しくも俺の妹が中三でマイの兄貴が高一であること。不思議な巡りあわせ、運命的なものを感じた。
俺の妹は世界一@sekai1
『『ただいま兄貴攻略中』氏、これからよろしくお願いします』
ただいま兄貴攻略中@lovememuchmore
『こちらこそよろしくお願いします! 私のことは妹なのでマイと呼んでください。ぜひ呼び捨てで』
俺の妹は世界一@sekai1
『俺のことは「お兄ちゃん」って呼んでほしいナ』
『キモっw 「兄さん」って呼んでいいですか? 実の兄は「兄貴」、世界一さんは「兄さん」ってことで』
『それでお願いします』
こうして俺たちは共闘関係になったんだ。
やり取りはシャベルのDMだけ。どんな顔してんのか興味がないといえば噓になる。が、DM以上を望んだ時、ぬるく心地いい関係は終わってしまう。
少なくとも俺は今の関係に満足してるよ。オンラインゲームとか一緒にしてみたいとも思うけどな。
『妹さんって本当に血繋がってる兄妹なんですか?』
これがマイからの最初の質問だった。
『残念ながら血は繋がってる。マイは?』
『それってどうやって調べるんですか? 血液型だけじゃわからないですよね? DNA鑑定ですか?』
『DNA鑑定はハードル高すぎるわー。5万くらいするらしいし、俺ら未成年やから親の同意がいるやろし、何より兄貴殿に「DNA鑑定したいから頬の裏の細胞採取させて」って頼めるか? 俺は無理だわー』
『じゃあ兄さんは何を根拠に血が繋がってるってわかったんですか?』
『戸籍謄本を調べた。もし俺か妹が養子だったらそのように書かれてあるはずだからな』
『どう書かれてたんですか?』
『実兄実妹だ。俺も妹もオカンの子だった』
『それってたとえばどちらかがワケありで貰われた子で、母親が自分の子として届け出たら、戸籍にはそう書かれるんじゃないですか?』
『そうかもな。事情があって赤ん坊を赤ちゃんポストに託す親や、トイレなんかで人知れず産み落とされる赤ん坊もいるからな。あり得ない話じゃないと思う。そこまで考えるならDNA調べるしかないんじゃないか』
『やっぱりDNAですか』
『せやなー。社会人になったら親の同意とカネの問題は解決するけど、相変わらず兄・妹の同意の問題が残るよな』
『検索したら、別料金で髪の毛でもオッケーみたいですよ。あくまでこっそり知りたいだけなんだから、同意なしでこっそり調べたらいいじゃないですか』
『おぬしもそう思うか。なかなかのワルよのうw』
『必死なんですよw DNA鑑定は大人になってから考えます。それにしても兄さん、戸籍調べてたんですね』
『くれぐれも間違わないでほしいんだが、俺は妹ガチ恋勢だ』
『お、おう。私もガチ恋勢ですよ』
こういうやり取りを経て現在にいたる。あっちから『仲良くしませんか?』だから最初から好感度MAXって感じだろ? だから気持ち的には楽だよ。MAXってことは後は下がっていくだけだから、そう考えると怖くもあるけどな。