12 悲報! R18展開を確信した俺氏、間男に水を差される
授業が終わって休憩時間に入るたびにトイレにしけ込みスマホの確認をする。マイから返事があったのは3限と4限の間に休憩時間だった。
『コラっ、襲ったらダメですよw オッケー出てるんだからムード重視で口説いて下さい。で、避妊具用意してますか? してないんだろうなー』
あ、コンドーさん必要やん!
マイの見立てでも舞とヤれるってことやな。……よし、ガチるぞ!
『コンドーさんお迎えする。ムード重視で口説いて襲って押し倒してコンドーさん装備、そういうことだな? 孔明!』
放課後。
校門を出たところでスマホを取り出す。マイとマユからDMが届いてた。
軍師を優先する。
『やっぱり襲って押し倒すんですねw 別にいいですけど。優しくリードしてください。報告待ってます!』
おう、待っといてくれ、マイ!
次にマユだ。
マユとの個別トークを開く。なお、俺、舞、マユのグループに新着はない。
『タケト君は舞と普段よく喋ってるの?』
よく喋るかと聞かれたらノーだな。今日セックスするけど。
『いや、しゃべらないけど。それがどうした?』
と返事してスマホを閉じた。歩き出そうとするとすぐライムの着信音。再び開いてみるとマユからの返事。はやっ。
『舞の好きな人、誰なのか気になってさ。タケト君から心当たりあるんじゃないかなぁって』
心当たりか……ないこともないよ? アイツは目下俺のことが好きなはず。何といってもセックスOKなんだからな。
今俺の頭の中は舞とのセックスでいっぱいやから返事は気もそぞろである。うっかり変なこと言わんようにせねば。
『舞とはそういうこと話したことないな』
嘘はついてません、嘘は。
返事はすぐに来た。
『好きな人がいることはわかってたんだけど、それが誰かずっとわからなかったんだよね』
『その口ぶりだと、誰かわかったのか?』
『うーん、物証シロ、心証クロって感じ。舞ってモットーがあるんだよ、知ってた?』
『モットー? あいつスゲーな。俺そんなん無いわー』
『私もw それがね『段取り8割、本番2割』だって』
『ああ、それ教えたの俺やな。『段取り6割、本番4割』だけどな』
『へー、兄妹でそんな話してるんだ?』
『あいつが中学に上がった時だよ。中学生になると部活とテストで生活が一変するだろ? どんなことでも準備をしといたら本番はぬるゲーやぞと教えたわけです』
『それ舞が言ってるの聞いたことある。マジかー、タケト君かー』
『その舞って子の兄貴、立派なヤツやな。顔を見てみたいわー』
『同意www で、舞の恋愛観がまさにそのモットーの通りじゃないのかなって思うんだ』
『どゆこと?』
『恋愛を成功させるために想像できないくらいの努力と準備をしてるんじゃないかなと』
『恋愛ってそういうもんじゃないの?』
『舞ってあの容姿とあの性格だよ? そこまで努力しなくても男作れるでしょ。そんな舞が落とせない相手ってどんな男なんだろうって思わない? 今こうしてる間も段取り8割の精神で攻略中なんだろうけども』
『いや、それは考えすぎじゃないか?』
俺以外に好きなヤツがいるんじゃないかと不安になってきたやん?
『タケト君は心当たりないんだ?』
『ないな』
『ふーん、まぁ、参考になったよ』
『そうか。舞のことよりもお前はどうなんだ? あの部屋、住めるか?』
『大丈夫、今はひたすら我慢の時でしょ?』
『そうだな。『娘の部屋で不貞行為』はお前にとって有利な事実だ。母親の親権確保は難しいだろう。むしろラッキーと思わないと』
『さすが舞の兄貴、冷徹だねー』
『俺は熱い男だぞ?』
『褒めてんの。こういうこと言ってくれる人だから頼りにしてるんだよ?』
『そっか。お前も大変だけど、がんばれよ。本当に全力で協力するからな』
『さんきゅ。私もタケト君が舞を狙ってるなら協力するよ』
⁉ 俺が舞狙い? バレてんの? それともカマかけか?
『返事が遅いな~w 違ってたら秒で否定する話なのに』
『急に変なこと言うからびっくりしただけだろ』
『変なことじゃないよ。否定してもいいけど、ガチだったらガチで協力するからね』
『わかったわかった、その時は協力してくれ』
『桶』
ひょっとしてこのやり取りで完全にバレてしまったんやろか?
女怖ぇぇぇぇっ!
夕方、帰宅。
帰りがちょっと遅れたのはコンドーさんをお迎えするためだった。潤滑ゼリーって知ってる? それも買ったよ。気合入ってるだろ?
玄関ドアを開けると舞の靴があって不覚にもドキッとした。
裸エプロンの舞が出迎えて「お帰りなさい。御飯にする? お風呂にする? それとも私?」と聞いてきたら、「風呂でお前をおいしくいただいてから晩飯いただきます。メシ食った後舞の部屋でヤリまくってからもう一度風呂場でヤリまくって俺の部屋でもヤリまくって寝ます」と答える所存。
どう? ムード盛り上げろって軍師に言われてるから頑張って考えてみたんやけど。
シーン…………
裸エプロンの出迎えなし。
リビングの方から料理の音が聞こえる。リビングの向こうにキッチンがある。
ここで俺はリビングではなく洗面室に入った。手洗い・うがいのためだけでなく、こっそり歯磨きしておこうと思ったのだ。
「ただいま」
リビングに入るとキッチンに立つ舞の後ろ姿が目に入った。俺のカッターシャツを着て、デニムのホットパンツ。白のシャツから伸びる生足が艶めかしい。
……彼氏シャツ!
「おかえり」
なんか素気ないんだよなぁ。俺に襲われるのわかってるはずなのにこの態度。……凄くイイ!
ダイニングキッチンに入るとテーブルの上に小さな紙箱が置かれていた。パッと見、化粧品とかオシャレ系お菓子のパッケージに見えなくもない。
コンド―さん? コンド―さんやん!
『quousque tandem』と書かれている。意味はわからないし何語かもわからない。
オシャレなコンドーさんもあるんやね。俺が買ったのは『極薄超級』って
馬鹿デカく書かれた商品だわー。
俺、鼻息荒くなるのを自覚しながらも無言でその横に『極薄超級』とチューブ式の潤滑ゼリーを置く。
その音が聞こえたのか、舞が振り返った。テーブルの上に増えた避妊具をチラ見するとすぐキッチンに向き直った。
「兄貴エロすぎ。何回する気なの?」
クールな声で煽ってきよる。
俺のコンドーさんは1箱10枚入り、舞のは1箱5枚入り。いろいろあるんやね。
舞の背後に忍び寄り(バレバレだが)、真後ろからそっとお腹あたりに両手を回して抱き締める。ムードを盛り上げろって言われてるから、恋人っぽくスキンシップのつもりです。
「15回」
「……っ!」
一瞬体を強張らせる。が、返事はない。あれ? 俺、足し算間違ってないよな?
「いやか?」
「……別にいいけど」
結構雰囲気よくないか? このままイケるんじゃね?
うなじに鼻を押し付け匂いをかぐ。いい匂いや……
「……っ!」
ビクッと体を震わせるのも男心を高ぶらせる。
「……料理できないんだけど」
「もうちょっと。もうちょっとお前の匂いを嗅ぎたい」
「…………」
エプロンの下に両手を差し込みシャツのボタンを外しにかかる。ここまでされても舞は抵抗も妨害もしない。
興奮を止められずうなじにキスをした。舌で舐める。
「っ! ……っ!」
うち震える舞。必死に声を押さえているのがわかる。舞の喘ぎ声が聞きたくて、舌を這わせた。
舞の息遣いを感じながらボタンを下から順番に外してゆく。第一ボタンは舞自身が外しているので第二ボタンまでだな。最後の第二ボタンを探っていると胸の膨らみに触れた。
胸を揉みしだきたい劣情に必死で抗いながらボタンを外した。
ボタンを外してわかったことだが舞はブラジャーをつけていなかった。もう理性が飛びそう。
ケダモノになって襲いかかるやろうと自己分析してたけど、違うみたいだ。なんていうか、舞をとことん気持ちよくしたいって思うんだよ。俺の気持ちよさだけ追求したら負けで、舞を気持ちよくさせたら勝ち、みたいにさ。つまり舞が喘いで快楽に身悶えする姿を見たくて見たくてしょうがない。
「舞……」
エプロンを外して床に落とす。ホットパンツのボタンを外して脱がしにかかると太もものあたりでスルッと床に落ちた。
もう舞を守るのは全部のボタンが外されたシャツとショーツのみ。
よ、よし、いくぞ……!
唇を奪おうと振り向かせた時、ライムの着信音が鳴った。俺と舞のスマホ両方に。
無視して唇を奪う。舞も受け入れた。舌を出して唇を舐めるとすぐに口を開けて招き入れてくれた。舌を絡ませ唾液が交じり合う粘着質な音がキッチンに響く。
「んっ…ン……ん……」
塞がれた唇から洩れ出るくぐもった声が俺の下半身を責め苛む。海綿体があり得ないくらい充血して破裂しそうだ。
いったん唇を離すと舞の方が未練がましく唇を追ってきた。その唇をふたたび塞いで舌をねじ込む。
「んんっ、ふぅン……ん……」
俺の強引さを悦んで迎え入れてくれた。ふたたびぴちゃ……ぴちゃ……と粘着音を出しながら舌と唾液の交合を愉しむ。お互い高め合いながら体をまさぐろうとした時、またライムの着信音が鳴った。今回も両方のスマホ。
マユからだろう。世間話がしたくてグループトークを飛ばしてきたわけではないだろう。
「……ダメだな、見ないと」
「……うん」
俺の言葉に同意したのは本心だろうか?
舞を離し、スマホをつける。ライムを起動するとマユから新着が来ていた。
『お母さんがいないのに家の前に間男の車があるの。どうしよう?』
次に届いたライム。
『入ってきた! 合鍵持ってるみたい! 隠れる!』
「「!」」
画面を見た瞬間俺は乱れた服装を直しながら舞に向き直った。
「まずい、中に入られたら110番もできない! ちょっと行ってくる!」
「私も!」
「わかった、俺は先に行くから準備ができたら追いかけてくれ」
さっきまでの甘い雰囲気は吹き飛び、俺たちは厳しい表情で頷き合うと臨戦態勢に入ったのだった。




