9.渡されたもの
衝撃の事実。
勇者一行は旅を続けていた。
しかし1人欠けた後の勇者たちは、前のようにはいかなかった。
「はぁはぁ。どうして上手くいかないんですかね」
「自分の胸に聞いてみろ」
「酷い人ですね」
「こんな時アリアがいてくれたら……」
リナは本音を吐露しました。
勇者プライムはそれを辛く受け取り、唇を噛みました。
「そんなこと言ってられないよ。さあ早く倒そう」
「そうね」
「だな」
ロットス以外は即座にプライムのサポートに入った。
リナは高火力の魔法が炸裂。
しかし、
「やっぱり倒せない」
「こいつは俺に任せろ」
そこに飛び込んだのが、ガレゴス。
大きな剣を振り回し、ゴーレムに襲い掛かった。
しかし片腕で弾かれてしまい、ロットスは頭を抱えた。
「そんな。なんでこんな」
「ロットス。魔法を使え、魔法」
「僕に命令しないでください。眠れ」
しかしロットスの魔法は意味がなかった。
ゴーレムが眠ることはなく、吹き飛ばされてメガネが割れる。
「そんな、僕の魔法が」
「お前はそれでも賢者か。アリアの言葉を思い出せ」
「彼の?」
「ゴーレムに催眠系攻撃は効かないんだよ。このっ、プライム・シュート!」
プライムは魔法を使った攻撃を放った。
するとゴーレムの体がみるみるうちに崩れ出した。
「やった」
「てこずったわね」
ロットスとリナは座り込んでしまった。
このさんざんな有様を見たガレゴスは、
「アリアがいればこんなことにはならなかったのだがな」
「そうだね」
プライムもそう口にした。
そしてこうも思っていた。
(そろそろ気づいてくれたかな。僕とお母様からの手紙)
虚しくて辛い空を見上げて、そんな気持ちになっていた。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「はくしゃん!」
俺は盛大なくしゃみをした。
すると心配したシルは、
「大丈夫ですか、マスター」
「うん。誰かが噂でもしてるのかもしれないな」
「それって前にタイチョーが一緒にいた人間さん?」
「さあね。どちらにせよこれを俺に渡してくれた奴は最後まで俺の親友だったよ」
俺はプライムから渡された金色のメダルを見つめ返した。
これは王家の証と言って、凄まじい権力的な効果がある。
これを見せつければ、流石のホーリング家も首を縦に振らざるおえないだろう。
「綺麗なメダルだね」
「だろ」
ウェントが俺の腕の間をすり抜けて、メダルを覗き込んだ。
すると何か気が付いたのか、メダルの裏面を気にしていた。
「タイチョー、このメダルなんか変だよ」
「何が変なんだ?」
「木の匂いがする。これって紙かな?」
紙だと。
俺はメダルをよく観察すると、メダルの裏が加工されていて、開くようになっていた。
「ここに指を引っかけて……開いたぞ」
メダルの裏面がカバーになっていて、カパッと開いた。
俺は中を確認すると、小さな紙切れが収まっていた。
「魔法で加工済みなのか? よっぽど大事なものだろうが」
「読んでみようよ」
「そうだな」
俺は紙を開いた。
すると魔法が解けて元の大きさに戻る。
ちょうど手の大きさに馴染むくらいか。それに品質もいい。
「王家の紋章付きか。しかもこれは」
「口紅の跡?」
ギロッとシルの視線が俺に辛辣に突き刺さる。
読むのが心苦しい。
しかしウェントは、俺を急かした。
「ねー早く早く」
「あぁ。えーっと、やっぱりプライムからか。内容は……
はぁっ!?」
俺は目を丸くした。
その内容は驚愕のもので、俺は唇を嚙むだけではなく、頭を抱えた。
しかし同時に使えるとも思った。
(この情報が本当だったら、何とかなるな)
「タイチョー怖いよ」
「そうかい?」
「その言い方も。不気味っていうか、うぅ! これが寒気ってやつなの?」
ウェントは体を震わせた。
それから、
「シル」
「なに?」
「これから助けるのは女の子だけど、喧嘩しないよね」
「時と場合による」
「仲良くね」
俺は釘を刺した。
それから準備を整えると、早速ホーリング家に向かうことにした。
「団長。これから戦場ですか?」
「貴族のね。でも俺は勝つよ」
「応援しています」
一対一なのは確定したらしい。
しかし勝ち目はあるんだよな。
「さてと、この服じゃ困るかな」
俺はボロボロになった服を見まわした。
するとシルが、
「これ」
そう言って渡したのは真っ黒な服だった。
黒いコウモリのようなマント。それから下に白のワイシャツ。
準備の良さにほれぼれし、俺は着替えてから出発した。
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