7.気に入られてしまった
今回は半分半分だよ。
俺は森の中をゆっくり歩いていた。
本当はもう少し飛ばしたい。けれど怪我人だった人がいる前で、それは俺の中の倫理観が如何かと問いてくる。
もちろんそんなこと彼女は気にも留めない。
俺は隣を歩く少女、ソフィアに声をかけた。
「あの、なんで付いて来てるの」
「その理由をお話しするためです。あの場では、話しづらいことでしたので」
「はぁ?」
つまり聞かれるとまずい会話らしい。
それに巻き込まれても困るのだが、一応聞いてあげることにした。
「じゃあここで話そう」
「分かりました。単刀直入に言わせていただきます。私を貴方の元にいさせてください」
「何言ってんの」
俺は正直に口から出た。
しかしながら至って真剣な様子のソフィアは真面目で、
「私は本気です。あの瞬間、私を助けていただいたとき、よくわからないんですけど、私の中のモヤモヤが弾けていなくなった。貴方と一緒にいたいと思ったんです」
「寝ぼけたこと言わないでほしんだけど。俺は魔族で、ソフィアは……」
「でも半分は人間のはずです。それに今の貴方は完全な人間です」
ソフィアは言い切った。
聖女様に言われると、やっぱり説得力が違う。
俺は言葉を詰まらせ。息を飲んだ。
「本当に私にもよくわからないんです。でも確かに感じたんです」
「それは勝手だ。けど聖女には聖女の役目があって、家のことは」
「どっちも本当は捨ててしまいたいんです」
「はぁ?」
さっきから驚くか呆れるかしか出来ていない。
俺は困惑させられ、頭を抱えた。
「捨てたい?」
「はい。私は聖女に選ばれたことが嫌なんです。お父様もお母様も喜んでくださいました。しかしそれは私の道を狭めるだけ。勇者パーティーに組み入り、自分の欲のために私を利用しようとする方も出てくる思うんです。すでに、親族の間では縁談が決まりつつあります」
「貴族同士の面倒なやり取りだ。鬱陶しい」
「だからおこがましいかもしれませんが、私を助けてください。私を自由に……」
俺は返す言葉もなかった。
このことに俺が深く踏み込むことはできない。
しかし、
「それでも一回戻るべきだ。大丈夫、今回の出来事を包み隠さず報告する。それで全てが丸く収まる」
「なんでわかるんですか?」
「なんとなく」
俺は不敵な笑みを浮かべた。
それから今日のところはソフィアを返すことにした。
その背中は悲痛に満ちていたのが、見ている俺からしても辛かった。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
さて、ソフィアとあんな約束をしてしまった。
これは面倒なことになる。
俺はアイツらに会ってあら、相談してみることにした。
(アイツらなら何て言うんだろうな)
少し怖いが興味もある。
アイツらが俺の意見に背いてくれるならそれでもいい。
しかしそれを成長ということにして、俺1人でもソフィアの問題を解決するだろうな。
「さてと、飛ばすか!」
怪我人もいなくなったところで、俺はスピードを上げた。
森の景色がゆっくりと過ぎ去っていく。
置き去りにされた風景をどけて、俺は待ち合わせ場所の小屋まで戻ってきた。
「ううっ」
しかしそこにいたのはさっき俺が倒した盗賊たちだった。
「しまった。ここに置いといたんだったか」
アイツらが来る前にどうにかしておくか。
俺は盗賊の男達を並べて縛ると、適当に森の片隅に捨てておくことにした。
「後で誰か見つけるだろ」
他人任せにはなるが、俺がしてやることでもなかった。
それにこの辺りに危ないモンスターはいない。
結界が張ってあることを感謝するんだな。
「さてと、まだ来てないか」
3人が活動の拠点としている場所はそれぞれ違う。
しばらく待っていれば来るだろうと軽い気持ちで、近くの切り株に腰を下ろすと、
「なんだこの気配!」
俺は怪しい気配を感じた。
少し強いな。だが俺には劣る。
しかし超高速で迫る3つの気配は、よくよく探るとアイツらだと分かった。
俺は成長が楽しみで仕方なかった。
口が若干にやけ、アイツらを待った。
そして、
「来たか」
パサッ
背後で風がそよぎ葉が揺れる。
俺はそれだけで気が付いた。
「久しぶりだな」
振り返るとそこには3人の姿があった。
黒い鎧に身を包んだ騎士、腕から鳥の羽を生やした女性、愛くるしい顔をしたオオカミの少年。
俺は懐かしい顔ぶりに、気づかれない笑みを浮かべた。
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