11.聖女様はいただきます
変な意味じゃないから安心してね。
俺は邪魔が入らないようランスとウェントに見張りを任せた。
それから、冒険者のような格好をした俺はシルを連れて屋敷の中に入った。
屋敷内はシーンとしていて誰もいない。
それ故アポを取らずに簡単に不法侵入ができたのだ。
「なんだ貴様は」
「初めまして。俺はアリアです」
「アリア? 聞いたこともない名前だ。一体何の用だ」
クーゲル侯爵はそう言った。
しかし俺からしたら、クーゲル何て目じゃない。
完全に無視することにした俺は、奥で急に立ち上がってホーリング侯爵を前にする。
「初めまして、ホーリング侯爵様。俺はアリアと言います。先日はそちらのソフィア様が、町に巣くうモンスターとの戦闘を経験し、無事勝利したとのこと。噂はかねがねです」
「君がアリア君か。その件は娘が大変お世話になったそうじゃないか」
「いえいえ。私はたまたま通りががっただけにございます。つきましてはホーリング侯爵様。俺と話でも致しませんか?」
「話?」
「はい。ソフィア様も交えて」
俺はカタコトだったが、そう伝えた。
するとホーリング侯爵は寛大な方のようで、俺なんかのどこの馬の骨ともわからない奴をすんなり受け入れてくれた。
貴族でもない自分にも優しくしてくれるとは、大変心の広い人だ。
それに比べて……
「なんだ貴様。一般市民がでしゃばる出ない。今は私が話している番だ。さっさとどけ!」
「まだいたんですか。迷惑してるんですよ」
「なんだと」
俺はクーゲルに顔を近づけ、威圧的な視線を送る。
「いいですか。さっきの会話聞こえてましたよ。縁談が如何とか、本人の意思はないんですか?」
「ふん。私は侯爵貴族。それに王族とも深い関係にある。たかが普通の侯爵如きが……」
「たかがか。どんだけあんたが偉いんだよ」
「なんだと。口の利き方を慎め!」
クーゲルはボコッと出た腹を見せつけて、俺の胸ぐらを掴んだ。
しかし俺は難なく抜け出すと、
「あんたの出る幕じゃないんだよ。彼女は俺が貰ってく」
「えっ!?」
俺はそう言った。
すると部屋の中の空気がざわめく。
クーゲルの護衛騎士も、ホーリング侯爵も、何より一番驚いていたのはソフィア本人だった。
慌てたように小言を吐いたり、シーンとしたりしている。
「貴様が、聖女を?」
「悪いけど、婚約だとかじゃない。俺は彼女に頼まれただけだ。最初は悩んだが、ここに来て決心がついた。少なくとも、あんたみたいなロクでもない貴族のものになるのは見てて辛いんだよ」
「なんだと! おい、早くこいつを摘み出せ」
クーゲルの雇った騎士は、言われた通り俺を部屋の外に摘み出そうとした。
しかし騎士達の前にシルが立ちはだかる。
「なんだお前」
「そこをどけ」
「行かせない」
シルは鋭く威圧的な気配を飛ばす。
どこで用意したのか、風をイメージしたような美しいドレスを翻していた。
「おい、早くしろ」
「は、はい。邪魔だ!」
騎士の1人が手を挙げた。
しかしシルには通用せず、軽く投げ飛ばされてしまう。
「なぁっ!?」
騎士は前に向かって回転するように倒れこんだ。
しかしシルは何でもないみたいで、小さなため息を吐く始末だ。
「チッ! おい、何をぐずぐずしている」
「はい。すみません。この女、少々手強いみたいです」
「手強いだと? なんだ。無口ないい女じゃないか」
「ふん」
クーゲルがシルに手を出そうとした。
なんて、暴挙だ。
俺は頭を抱えて、口に出さないため息を吐く。
(あの馬鹿。どうなっても知らないぞ)
「貴女、とても素敵ですね。どうですか、私と一緒に……」
「興味ない。消えて」
「そんな堅いこと言わなくてもいいじゃないか。こんな礼儀も知らない男……」
「マスターを馬鹿にするな」
その瞬間、シルはクーゲルの巨体を軽くひねり倒した。
ぐるっと回転して、騎士ともども部屋の外に投げ飛ばした。
「マスター」
「シル、やりすぎだぞ」
「ごめん」
またしても部屋の中に異質な空気が流れ込んだ。
しかし今度は、唖然と興奮からくるもので、俺は心配になった。
「すみません、私の部下が」
「いや構わないよ。それにしても大したものだよ。これなら本当に任せられそうだ」
「はい?」
何故か、ホーリング侯爵の好感度がいい。
しかし俺はその空気に付いていけず、ホーリング侯爵の配慮もあってか、俺は話をすることになった。
その場には俺とシルだけでなく、ソフィアも話の輪に入るのだった。
「さて、単刀直入に聞かせてもらおう。君は私の娘、ソフィアのことをどう思っている?」
「如何って言われても。良い人ってぐらいです」
「ほぉ」
「ここに来たのも約束ですから。そこでものは相談です。ソフィアがこれ以上貴族同士の婚姻に巻き込まれないようにしませんか」
俺は話をそう切り出した。
するとホーリング侯爵も少し考えるそぶりを見せてから、
「詳しく聞かせてもらおうか」
話に乗って来てくれた。
そこで俺はプライムから渡された王家の証を見せることにしました。
すると、明らかに目の色が変わる。メダルと俺とを交互に見ながら、指と指を絡ませて、肘を机の上に深く乗せていた。
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