にじゅうさんわめ!『お姉ちゃん大好き!』
今後の方針を考えた翌日……
永久ちゃん視点
今日はなんだか織香ちゃんの様子が変だった。
まずは朝、朝食を食べに誘ったときだ。
ピンポーン
ガチャ
『あっ、お姉ちゃん!今日も一緒に朝ごはんを食べに行くの?』
最初に違和感があったのはこのときだ。
いつもの織夏ちゃんとはなんというか違う、違和感があったのだ。
「?うん、そうだよ。」
『じゃあ行こっか!』
「???わかった。」
そう、今日の織夏ちゃんはなんというか積極的なのだ。
それ以降も変だったが、特に変だったのは学校へと向かうバスのことだ。
『ん、えへへ……』
「あの、織夏さん?」
織夏ちゃんは僕よりも先にバスに入ったのだが、なぜか座席に座らず、不思議に思いながらも僕が座ると、なんと膝の上に座ったのだ。
『む〜、さん付けはやだ!』
「ご、ごめん、いや、そうじゃなくて!」
『?』
「なんで膝の上に座ってるの!?」
『だめ……かな?』
「い、いやそんなことないけど」
やっぱりなんだか積極的で、僕は恥ずかしく感じていた。
すると、どうやら顔にもそれが出ていたようで、織夏ちゃんが僕に話しかけてきた。
『あれ?お姉ちゃんなんか顔が赤いよ?体調が悪いの?』
「い、いや、違うよ!?今日はなんだか暑いから。」
『そうかな?』
「うん、ぼ……わたしって暑がりだから。」
『へ〜、そうだったんだ!』
「う、うん。」
本当に暑いのは外気ではなく僕の顔であったが、女の子が女の子にドギマギしているのはおかしいと思うので、バレるわけにはいかなかった。
『ねぇねぇ、お姉ちゃん、頭ナデナデしてくれない?』
「ふぇ!?な、なでなで!?」
『嫌だった?』
織夏ちゃんは見るからにしゅんとして、なんだか罪悪感があった。
だけどなでなでは流石に……
そう思っていると、織夏ちゃんは涙目で上目遣いをしていた。
『してくれないの……?』
「あぅ、す、するよ?」
『やった!』
僕はこの涙目と上目遣いのあわせ技をされてしまっては断ることができなかった。
しかし、今回のこの技はいつもよりも破壊力が高かった気がした。
『ん〜……すりすり……』
「!?」
僕が髪のサラサラ感を感じながら頭をなでていると織夏ちゃんがまるで猫のようにすり寄ってきていた。
それによって、膝の上に座っている時点でも少し感じていた、女の子特有のいい匂いが僕の鼻孔をくすぐった。
「はう……」
『?』
僕は早くバスが到着して欲しいような欲しくないような中途半端の感情に苛まれていた。
そんな変な織夏ちゃんと学校を過ごし、僕は家へと帰っていた。
ピンポーン
ん?誰だろ?
織夏ちゃんかな?
ガチャ
『おねぇちゃぁぁぁん!!!』
「ぐぶっ……」
僕がインターホンがなり、扉を開けると、まるでダンプカーが衝突したかのような衝撃がお腹に走った。
僕は、その勢いのまま倒れ込み、押し倒されてしまった。
『ぎゅ〜』
「お、織夏ちゃん?」
あの、かわいいけどすごく痛いので離してくれませんかね?
痛っ!?
ちょっ、まじで痛い!
万力に潰さるのと同じぐらい痛い!
されたことないけど!
「お、織夏様?」
『あっ、変た……辺城さん!』
「あの、永久様が織夏様の万力のようなパワーによって腹が潰されそうになっているのですが……」
『ふぇ?……!?』
「し……しにゅ……」
『あわわわわ……』
良かった……、離してくれた……
ありがとうメイドさん……
君は命の恩人だよ……
『ご、ごめんねお姉ちゃん!』
「いや……大丈夫だよ……」
もちろん嘘だが、織夏ちゃんに悪気があったわけではあるまいし、黙っておこう。
「ところで織夏ちゃんはこんな時間に何しに来たの?」
現在時刻は22時、出歩くような時間帯ではない。
『あっ、お姉ちゃん、今日一緒に寝よ?』
「!?!?!?」
「!?!?!?」
まて、まだあわてるな、冷静になるんだ。
今織夏ちゃんはなんと言った?
一緒に寝る?
いやいや、無理無理。
……やばいどうしよう!?
そうだ!こんな時こそ頼れるメイドさんに!
「あ、あの、織夏様?」
『どうしたの辺城さん?』
「流石にいくら織夏様でもお母様が許さないのでは?」
いいぞ!
このまま押し切れ!
『大丈夫!お姉ちゃんにならきっと許してくれるよ!』
「くっそ、こんな時に限って勘がするどくねぇ!!!」
「メイドさん!?口調崩れてるよ!?」
くそっ、メイドさんでも駄目ならどうすればいい!
……そうだ、もういっそ受け入れれば……
……いや駄目だろ!?
「はっ、そうだ!」
!?
何かいい案があるのかメイドさん!
メイドさんは携帯を取り出し誰かと話しだした。
「織夏様、こちらを……」
『ん?あれ?お母さん?』
織夏ちゃんのお母さんに電話をかけたのか!
なんで電話番号を知っていたのかはちょっと気になるけどこれなら!
『うん……うん……』
いいぞ。
そのまま諦めてくれ。
『……初めてのお友達とお泊まり会がしてみたくて……駄目……かな?』
ん?
あれ?
なんか嫌な予感が……
『え!いいの!ありがとうお母さん!大好き!』
くっそ陥落しやがった!!!!
prrrrr
ん?電話?
宛先は……
李治音羽……!?
な、なんで当主様から電話が!?
と、とりあえず出ないと。
『音湖だな?』
「は、はい、そうですけど。」
『今連絡が来たんだが……織香とお泊まり会をするんだな?』
「は、はい。」
情報早いな!?
なんでこんなすぐに情報収集されてるんだ!?
李治家こわ……
『くれぐれも織香に手を出すなよ?もし出したら……』
「だ、出したら?」
『……命はないと思え。』
「ひゃっ、ひゃい!」
『連絡事項は以上だ、電話を切るぞ』
「わ、わかりまひた。」
ブツッ
……怖!?
え、怖!?
命がないって何!?
もしかして織夏ちゃんって李治家に匹敵するぐらいの由緒正しいお家柄の人だったりするの!?
もしかして織夏ちゃんと縁を切ったほうが良かったりする!?
……いや、それはないな。
織夏ちゃんと縁を切るのだけはない。
はぁ……
諦めて一緒に寝るか……
……よくよく考えたら織夏ちゃんとの縁を切ったら織夏ちゃんはきっと泣くよな……
そして織夏ちゃんを泣かしたから……
このとき僕はギロチンで首を切り落とされ無惨な姿になった僕の姿が脳裏によぎった。
……これ以上は考えないでおこう。
『じゃあベットに行こっか!』
「う、うん。」
う〜、織夏ちゃんは僕のことを女の子だと思ってるからこんなに楽しそうなんだよなぁ……
本当は男なのに……
うっ……
こう考えると罪悪感がすごい……
『ん……ちょっと狭いかも……』
「はう……」
シングルベッドだから織夏ちゃんと距離が……
うう……いい匂いがする。
!?
抱きついてきた!?
しかもさっきと違って優しい力で抱きしめられてる!?
「ん〜……お姉ちゃん温かい……」
「あわわわわ……」
バスのときよりも匂いが……
や、やばい……
脳がどろどろに溶けるような感覚がしゅりぅぅぅ……
め、めいどしゃんたしゅけてぇ……
「……南無。」
しょんにゃぁぁぁ……
「……これもしかして眼福なのでは?」
うにゅぅぅぅ……
にゃんかめいどしゃんがいってりゅようにゃ……
う〜……にゃんていってるにょかわからにゃい……
『えへ〜、お姉ちゃん……すぅ……』
ぼくもげんかいかも……
おやしゅみぃ……
スヤァ……
* * *
俺が目を覚ますと、そこには永久ちゃんが居た。
……!?
……!?(二度見)
な、なな、なんで永久ちゃんがベットの中に!?
はっ、よくよく見たらここ永久ちゃんの部屋じゃん!?
な、なんで永久ちゃんの部屋に俺はいるんだ!?
「ん、……ふわぁぁぁ。」
「と、永久ちゃん?」
「ん……あれ、織夏ちゃん?……あぁ、そう言えば昨日はお泊まり会をしたんだった……」
お泊まり会!?
そ、そんなことした記憶は……
その瞬間、昨日の記憶がフラッシュバックした。
な、ななな、なんで俺はあんな大胆なことを!?
わ、わからない!
意味不明!
理解不能!
いや、落ち着け俺、クールダウンだ。
切り替えが早いのが俺の唯一の……
いや無理だわ!!!
流石にこの状況はそんなすぐに切り替えができるようなもんじゃねぇだろ!
ちくしょう!
何なんだこの朝チュン展開はぁぁぁぁぁ!!!
ぶりっ子ってこれであってるのか?