にわめ!入学の準備をしとかないと!
多分この先こんなに長くなることはないです。
基本的には2000文字程度の予定です。
赤ちゃん用品が置かれまくっている部屋の内。
そこには覗き見がバレてベビーベッドに入れられた俺がいた。
……まじかぁ……
ここ『僕とお嬢様のお姫事』の世界なんだ……
……毎回このタイトルは長いからこれからは略称の乙姫にするか。
乙姫の世界……多分高校は如創女学院だろうから主人公と同じ学年だよなぁ……
いや、まだ歳が違うかもしれない!
……確か誕生日は自由に決められる設定だけど誕生した年は2006年だったはずだ。
そして俺は2006年9月6日産まれ……
同い年じゃん……!
はぁ……
………よし!気持ちを切り替えよう!
俺は切り替えが早いのが唯一の特技だからね!
そう!今思えば同い年ってことは生でお嫁さんにしたいランキング1位の主人公と会えるんだ!
そう思うと気分が良くなってきた!
早速主人公とどう接するか考えよう!
そうだな……、せっかくだしヒロインみたいにはなりたいよね。
なら、ヒロインの属性を考えないと。
今いるヒロインの属性は純情、姉御、姉、ボーイッシュ、先生だ。
属性が被るのは嫌だからこれ以外の属性を考えないとな。
う〜ん……ツンデレ?
いや、ツンデレは難しいし恥ずかしいから嫌だな。
ダウナー?
う〜ん、楽だけど自分から主人公に話しかけられないような……
……そういえば、9月6日って妹の日らしいな……
はっ!
これは妹キャラになれという神様からのお告げなのでは!?
よし!なるのは妹属性だ!
そうとなったら妹属性に必要な要素を考えないとな。
まずは可愛らしさ、うん絶対にいるな。
まぁ、これに関してはあんまり考えなくてもいいな。
うちの家系は全員美形だからね。
実際うちの家系で俺のいとこにあたる主人公も美形だし。
え?主人公が俺のいとこってどういうことだって?
あぁ、そういえば言ってなかったな。
主人公って俺の叔父が不倫してできた子供なんだよ。
それで主人公が15歳のときに不倫がバレたから主人公を残して父親と母親が失踪、それを不憫に思った俺のお母さんが主人公を引き取ってそのままお母さんが理事長の如創女学院に入学したんだ。
うん、こう思うと主人公って結構不幸な人生してるね。
まぁ、その代わり女学院とかいう男では本来入れない学校に入れるんだからチャラだよね。
さて、話を戻そう。
次に主人公の呼び方。
うん、お姉ちゃん一択だな。
次に幼い体格。
貧乳に低身長だな。
……低身長?
あれ?むずくね?
主人公の身長150cmだよ?
……頑張って140cmになるしかねぇな。
貧乳はうちの家計は全員貧乳だから多分大丈夫だな。
あとは喋り方か。
まぁ、舌足らずな感じにすればいいか。
よし、だいたいこんなもんかな?
ふむ、問題は身長か140cmを目指すからにはそれ相応の努力をしないとな。
まず牛乳や大豆製品、魚は厳禁。
まぁ、今は赤ちゃんだからミルクを飲むがな。
そして朝食を極力食べない!
朝食を抜くと太るらしいがそこは調節する。
次に筋肉をつけまくる!
まぁ、筋肉ダルマな妹キャラとか嫌だからそこは調節する必要があるが。
あと、正座をする!
正座は身長を伸びにくくする効果があるからな。
最後に寝不足!
22時から2時までがよく身長が伸びるらしいからその時間には寝ないようにしないと。
よし!こんな感じかな!
よ〜し……これから頑張るか!
* * *
その後、俺は身長を伸ばさない努力をしまくった。
牛乳や大豆製品、魚を食べないのはお母さんに不安がられたが苦手ということにした。
実際俺は魚苦手だし。
朝食は食べたあと吐くという脅威的な方法で乗り切った。
ちなみにお母さんには絶対バレないようにした。
朝食食べたあとに毎回吐いてたら絶対病院に連れていかれるからな。
筋トレをしまくった。
まぁ、この家はお金持ちだから暴漢に襲われないように護身術は元から教わらせられたのだが。
ちなみにその結果めっちゃ強くなってしまった。
どれくらいかというと、俺の護衛全員が一斉に襲いかかってきても目を瞑りながら気配で全員倒せるくらいである。
気配を感知できるとかゲームみたいだな。
……ここゲームの世界だったわ。
正座をしまくった。
今なら24時間正座しても足をつらない自身がある。
夜寝ないようにした。
夜は基本的に筋トレか勉強していた。
え?なんで勉強かって?
いやさ、この身体すごいハイスペックなんだよ。
全然眠気が来ないし、筋肉が見た感じではわからない体質で、一度さらっと見たものを全部記憶できる。
凄い過ぎて少し引くぐらいハイスペックだよなぁ。
……あれ?
こんな目立つ能力があるのになんで作中では一回も登場しなかったんだ?
う〜ん……謎だな!
* * *
ある日、俺は中学校を卒業し、暇つぶしに街をぶらぶらしていた。
「う〜ん……ゲームセンターにでも行こうかな?」
そう独り言をつぶやきながら青信号を渡ろうとしたとき。
トラックが青信号なのに動いていることに気が付き足を止める。
しかし、そのトラックに気が付かない人も居た。
どうやら中学生くらいの女子のようだ。
身長は150cmぐらいだ。
俺は理想の140cmを成功させたため、俺よりも10cmほど高い。
まぁ、そのまま歩いていればトラックが来る前に渡れるだろう。
そう思っていると「おい!あぶねぇぞ!」という声がした。
……まずい!
そう思い俺は声をかけられて足を止めてしまった彼女に向けて走り出した。
間に合え!
間一髪のところで俺は彼女の手を掴み歩道へ入った。
あぶねぇ、鍛えてなかったら死んでたな。
そう思いながら助けた女性の顔を見た。
その瞬間俺は電流が走ったような錯覚を起こした。
この人見たことがある。
というか主人公だこの人。
まじか、初接触が今かよ。
まぁとりあえず話しかけよう。
そうだな……
「大丈夫?お姉ちゃん。」
「お、おね……う、うん、大丈夫だよ!助けてくれてありがとう!」
よし、うまく行った。
……それにしても主人公がトラックに引かれかけるなんてそんな描写……あったわ。
確か一番最初に轢かれかけて170cmぐらいのお姉さんが助けたんだっけ、けど代わりにお姉さんが轢かれたっていう……
あ!?そのお姉さんはどこだろ!?
轢かれてないよね!?
そう思い後ろを見たが誰かが轢かれた様子はなかった。
……良かった轢かれてない……
……というかそんなお姉さん自体居なくね?
……もしかして轢かれたお姉さんって本来の俺じゃね?
……やべぇ、そう考えるとめっちゃしっくりくる。
実は俺なんでお母さんが主人公を引き取ったのか疑問だったんだけど。
もしかして娘が死んじゃったから顔が似ていた主人公を引き取ったんじゃね?
うわぁ……一度そう思うとそうとしか考えられねぇ……
あっ、ということは俺が生き残ったからこの後主人公お母さんに引き取られないんじゃ……
やばい!
なんとかしないと!
あっ、そうだ!
もしかしたら俺が主人公と偶然会って話したら楽しかったって言えば名前に引っかかったお母さんが調べてそのまま引き取ってもらえるんじゃないか?
ちょうど今辺りに不倫がバレたはずだし!
というかこれ以外方法がねぇ!
やるしかない!
「ねぇ、助けてくれたお礼がしたいからあそこのファミレスいかない?」
おぉ、ナイスタイミングだ主人公!
うまく行けば引き取ってもらえるぞ!
「うん!」
「……知らない人についていくのはどうなんだ?……まぁいいか」
良くないと思うが今は都合がいいから無視しよう。
そして俺と主人公はファミレスへ入った。
因みに護衛の人は本来止めるべきなのだが、私が襲われて負けるわけないし、主人公が女性(にしか見えない)ためスルーされた。
……始めて俺が家族以外と普通に話すからではないと信じたい。
初めての友達ができるかもとか思われてたりはしないはず。
うん、しない。
「何頼む?奢るからなんでも頼んでいいよ。」
「う〜んと……う〜んと……」
妹キャラっぽい返答は……
パフェだな。
「う〜んとね……これ!」
俺はメニュー表を指で指した。
口で答えないのはそのほうが幼い気がするからだ。
「えっと……バナナパフェだね!すいませ〜ん!」
……ファミレスだから呼び出しボタンがあるのだが……
まぁ、そういうぬけてる所がかわいいんだけどね。
「バナナパフェといちごパフェをください。」
いちごパフェ……そういえば主人公はいちご好きっていう設定だったな。
「ねぇ、君はなんて名前なの?」
「ん〜っとね、天青 織夏だよ!」
ちなみに偽名である。
まぁ、苗字を天青にしただけだが。
理由は理事長の娘だとばれたら主人公によそよそしくされそうで嫌だからだ。
因みに学校でもこの偽名が使えるようにおねだりを既にしている。
理由を聞かれたから「理事長の娘ってバレたら友達ができないかもって不安で……だめ……かな……?」と上目遣いで行ったら即了承された。
これこそまさに可愛いは正義である。
実際中身はともかく見た目は可愛いし。
因みに天青にした理由は親戚の苗字を借りたからだ。
「へぇ〜、織夏ちゃんって言うんだ。」
「うん!お姉ちゃんはなんて名前?」
「僕?僕は音湖 永久だよ。」
よし、デフォルトネームだ。
主人公の名前は変えられるからな〜
「あっ、パフェが来たみたい。」
「わ〜!美味しそうだね!お姉ちゃん!」
「うん、そうだね。」
……なんか妹キャラも慣れてきたな……
最初はめっちゃ恥ずかしかったのに……
う〜ん、嬉しいような嬉しくないような微妙な感じがする……
あっ、めっちゃパフェ美味しいわ。
子供舌っていうのもあるだろうけどめっちゃ美味い。
「美味しいねお姉ちゃん!」
「……あっ、そうだね!」
おやおや……、いちごパフェに夢中になっていたようだな。
「ねぇねぇ、一口頂戴?」
「ん?いいよ。」
そう言っていちごパフェをすくったスプーンを差し出してきた。
……あ〜……これがあーんという物か。
「……あ〜ん……美味しい!」
「良かったね」
……ちょっと流石にあーんは恥ずかしかったな……
「じゃあ、私のバナナパフェも一口あげる!はい!あ〜ん!」
「えぇ!?……ちょっとあーんは……恥ずかしいような……」
おぉ、恥ずかしがってる、かわいい!
「美味しいよ?ほら!早く!」
「えと……あう……」
……なかなか食べないな……
こうなったら最終奥義……
「……私のパフェ……食べてくれないの……?」
上目遣い&涙目だ!
これに打ち勝った人は未だ誰もいない!
「た、食べるから、な、泣かないで?」
「やった!じゃあほら!早く!」
「あ、あ〜ん……」
「おいしい?」
「うん……美味しいよ……」
顔真っ赤だ。
かわいい……
数分後……
「ごちそうさまでした!」
さて、……何しよ?
う〜ん……
「ねぇ、織夏ちゃんは今何歳なの?」
「ん〜?15歳だよ!」
「……え?」
おぉ、驚いてる、まぁ身長的に11歳ぐらいにしか見えないからな。
「む〜、信じてなさそうな顔だね……、はいこれ!」
そう言って俺は永久に生徒手帳を見せる。
「え……、まじで?同い年なの?」
「え!お姉ちゃん同い年なの!偶然だね!」
まぁ、同い年なのは知ってたけどね。
「……良かった、僕は4月4日生まれだから年下じゃない。」
……4月4日って男の娘の日じゃん。
う〜ん……、これは神様からの男の娘になれというお告げに違いないな。
……まぁ、俺あんまり神様信じてないけどね。
「ん〜……、あっ、そろそろ帰らないと!」
「えっ、そうなの?」
「うん!」
「そっか、じゃあまたね」
「うん!また会おうね!お兄ちゃん!」
そう言って俺は走り出した。
「え!?いやまって!今なんて言った!!!」
* * *
「ただいま!」
そう言って俺は家に入った。
「おかえりなさい、あら?なにか嬉しそうね?何かあったの?」
「えっとね……、友達ができたの!」
「え!?」
うむ、対して話してないのに友達扱いするムーブ。
……どちらかといえば幼い感じだな……
「な、なな、一体何でそうなったのかしら?」
……驚きすぎだろ、いや、まぁ確かに今まで友達いなかったけど。
まぁ、全部李治家という家名のせいだがな。
最初の自己紹介ではい終了、萎縮して誰も話しかけてきません。
「えっと……、トラックに轢かれそうになってたお姉ちゃんを助けたの!」
「あら、凄いわね〜」
「でね!お礼がしたいからってパフェを奢ってくれたの!」
「あら、よかったわね〜。そのまま話して友達になったのね、なんて名前の子なの?」
普通について行ったことについてはスルーなんだ。
「えっとね……、永久ちゃんだよ!」
「名字は?」
「音湖って確か言ってたよ!」
「音湖……何処かで聞いたことがあるわね……」
よし!
このままうまく行けば引き取ってもらえるかもしれないな。
「そういえばなんかお姉ちゃん元気なかったかも……、トラックに気づかなかったぐらいだし……」
「あら……」
「なんとかならないかな?お母さん?始めてできたてお友達のお姉ちゃんなの……」
「……ちょっと待ってて頂戴……」
「わかったなの……」
うむ、なんか語尾になのをつけたら幼く見えるな。
採用するか迷うな……
* * *
ところ変わってお母さん視点
「えっとね……、友達ができたの!」
私はこの言葉に卒倒しそうになった。
私の子はとても可愛らしい子だ。
たまにわざとやってるんじゃないかと思うほど純粋無垢な性格でとても可愛らしい。
そんな我が子なので私はすぐに友達ができると思っていた。
だが、李治家の名前によってそうはならなかった。
一度話してみればかわいい娘だとわかるのだが、話す機会すらなかったようだ。
高校に偽の苗字で入ろうとしたときは涙が溢れそうになった。
そんな我が子に初めての友達……
卒倒しそうになって当然だ。
……まさか男じゃないよな……
お姉ちゃんと言っていたが、もしかしたら女装をした変態かもしれない。
男なら私の娘の可愛さに魅力されて襲いかかるに違いない。
……まぁ、私の娘なら返り討ちに合わせるぐらい簡単だろうが……
そう思いつつ、私は娘に友達の名前を聞いたのだが、音湖 永久という名前らしい。
どこかで聞いたことがある名前だ。
親戚だろうか……
そう思っていると娘が「そういえばなんかお姉ちゃん元気なかったかも……、トラックに気づかなかったぐらいだし……」と言った。
そしてなんとかならないかとも言った。
娘が初めての友達を心配している私がなんとかしなければ……
そう思い私は早速名前が引っかかった親戚がから探してみることにした。
私は親戚を纏めた本を見る。
すると、私の夫の弟が不倫してできた子供だということがわかった。
そして男であることもわかった。
やはり女装した変態だったかと思ったが写真を見ると女性にしか見えない顔であったため、娘が勘違いしたようだ。
女装した変態ではなかったようで私は安堵した。
しかしこの男の父親は不倫が妻にバレた結果不倫相手と逃げたらしい。
しかも息子を置いて。
ふむ、どうやら元気がなかった原因はこれのようだな。
解決策は……私が引き取ればいいのか。
……だが、それだとこの男が私の娘に萎縮してしまうのではないか?
私の家に来て娘に会えば娘が私の娘だとバレてしまう。
私の娘は初めての友達と言っていた。
それに、娘がこの男の性別が男だと気づいてしまうのではないか?
娘は初めてできた友達のお姉ちゃんと言っていた。
ならば、お姉ちゃんと思わせたままにしないと悲しませていまいそうだ。
ふむ……解決策は……
そうだ、引き取った後すぐに如創女学院に入学させればいいのでは?
幸い如創女学院は全寮制だから言わなければ私の娘だとバレない。
そして卒業後ならば3年間接しているのだから萎縮などしないはずだ。
それに如創女学院は女学院なのだから当然女性のフリをしなければならない。
つまり私の娘にあっても女性のフリをしなければいけないということだ。
そして卒業後ならば3年間接しているのだから友達が本当は男だと知っても驚きはあれど悲しみはしないはずだ。
幸いこの男は女顔だ。
バレはしないだろう
ふむ、これで全てうまくいくな。
早速引き取る手続きをしよう。
おや、あんなところに私の娘がいるじゃないか。
「あぁ、我が娘よ。彼女の悩みは解決しそうだぞ。」
「ほんと!?ありがとうお母さん!!」
そう言って可愛らしい笑顔で私に抱きついてくる。
私はこの瞬間もう死んでもいいと思った。
* * *
勝手に女学院に入学させられる可愛そうな永久視点……
今日の朝、目覚めると家に誰もいなかった。
リビングのテーブルに置かれていた紙を見るとそこにはこう書かれていた。
『すまん!不倫がバレた!俺は母さんと逃げるからあとはガンバ!』
僕は父親に対して殺意が湧いた。
というか僕が不倫してできた子供だということをちゃんと説明してほしい。
いや、薄々気づいてはいたが、隠す気がまるでなかったし。
「……これからどうしよう。」
……とりあえず僕はお腹が空いてきたので冷蔵庫を開けることにした。
「……なにもない。」
しょうがない今日は外食にしよう。
僕は外に出る準備をして腕時計を着けた。
そして、腕時計を見て今が14時だということに気がついた。
……さてはあいつら逃げるときに僕にバレないよう睡眠薬をもったな!?
僕はあいつらに対して再び殺意が湧いた。
僕は徒歩でファミレスへ向かった。
そしてファミレスへ向かう道中で青信号になったのでわたっていると「おい!あぶねぇぞ!」と声がした。
僕はつい立ち止まって振り返ろうとし、その時にようやく僕に向かって暴走したトラックが突っ込んで来ていることに気がついた。
あっ、死んだわ。
そう思っていると、突然手を引かれ、間一髪でトラックを避けた。
「大丈夫?お姉ちゃん。」
……どうやら140cmほどの女の子に手を引っ張られたようだ。
……あの状況でよく引っ張れたなと思いつつ、ひとまず助けてくれたのだから感謝の言葉を伝えることにした。
……お姉ちゃん呼びが気になってたりはしない。
「お、おね……う、うん、大丈夫だよ!助けてくれてありがとう!」
うん、ごめん、結構気にしてるわ。
そんなに女性に見えるかな僕……
しばらくそのことについて考えた後まだ女の子に助けてくれたお礼をしていないことに気がついた。
何をお礼にしようか……
現金……は女の子に対してのお礼じゃないよな……
そうだ、ちょうどファミレスに行く予定だったしそこで奢ろう。
「ねぇ、助けてくれたお礼がしたいからあそこのファミレスいかない?」
「うん!」
このとき、よくよく考えたら男が女の子をファミレスに連れて行くという字面からしてやばい雰囲気を醸し出すような行為であることに気がついた。
そして、見知らぬ男性(女性だと思われてるけど)にホイホイついていく女の子もどうなんだ?
「……知らない人についていくのはどうなんだ?……まぁいいか」
ふと女の子の顔を見ると一瞬苦笑いをしたように見えたが、おそらく気のせいだろう。
僕と女の子がファミレスにつき店員に案内されて席についた。
「何頼む?奢るからなんでも頼んでいいよ。」
「う〜んと……う〜んと……」
う〜ん……トラックに轢かれかけてびっくりしてたからあんまり顔をよく見てなかったけどめっちゃ可愛らしい女の子だな。
見た目的に小学5年生ぐらいか?
……ますます事件性が増してきたような気もするが気にしないでおこう。
「う〜んとね……これ!」
そう言って女の子がメニュー表を指で指した。
バナナパフェか。
う〜ん、僕もパフェが食べたいような。
よし、隣のいちごパフェにしよう。
いちご好きだし。
「えっと……バナナパフェだね!すいませ〜ん!」
そう言って僕が店員を呼ぶと、女の子が目を逸らしたのでつられて僕もそっちを見る。
するとそこには呼び出しボタンがあった。
よくよく考えたらファミレスなのであって当然である。
……めっちゃ恥ずかしいんですけど。
女の子が気を遣ってなにも言わないでくれていることが更に恥ずかしさを捲し立てている。
「バナナパフェといちごパフェをください。」
僕は恥ずかしさを誤魔化すため店員に注文をした。
だが、その程度で誤魔化される恥ずかしさではなかったので、僕は急いで話題を考え、女の子に話しかける。
「ねぇ、君はなんて名前なの?」
「ん〜っとね、天青 織夏だよ!」
天青……、どこかで聞いたことがあるような気もするが気のせいだろう。
「へぇ〜、織夏ちゃんって言うんだ。」
「うん!お姉ちゃんはなんて名前?」
僕は聞き返された質問に答える。
「僕?僕は音湖 永久だよ。」
う〜ん、いつ聞いても女性っぽい名前だよなぁ……
一体僕の親は何を考えていたのだろうか。
僕は三度あいつらに対して殺意が湧いた。
などと考えていると、パフェが来たことに気がついた。
「あっ、パフェが来たみたい。」
「わ〜!美味しそうだね!お姉ちゃん!」
「うん、そうだね。」
パフェを見て、織夏ちゃんは目を輝かせている。
その風貌はとても可愛らしい。
そう思いながら僕はパフェをスプーンですくい食べる。
いちごの酸っぱさと生クリームの甘さがちょうどよくとても美味しい。
「美味しいねお姉ちゃん!」
「……あっ、そうだね!」
夢中になっていて少し反応が遅れちゃった。
……良かった、織夏ちゃんの顔を見る限り気にしてなさそう。
「ねぇねぇ、一口頂戴?」
「ん?いいよ。」
僕はこの食事がお礼でもあるためあげることにした。
まぁ、こんなにかわいい子からお願いされたらお礼とか関係無しにあげちゃうけど。
そう思って織夏ちゃんをじっと見ているとなぜか正座をしていることに気がついた。
わざわざ靴を脱いでいる。
足をつらないのだろうか、僕だったら5分でつる自信がある。
多分慣れているのだろう。
というか慣れすぎて自分が正座であることにも気づいてないのではないだろうか。
まるで、舌をしまい忘れる猫のようだ。
とても可愛らしい。
まぁ、それはさておき、僕はパフェをスプーンですくい織夏ちゃんに向ける。
……やべっ、自然とあーんの体制になってしまった。
それに間接キスじゃないか。
僕がそれに気付き戻そうとしたが、既に織夏ちゃんはスプーンを咥えていた。
その姿はとても可愛らしい。
もしこれがゲームならばイベントCGが用意されていただろう。
よくよく見ると少し顔が赤いように見える、やはり恥ずかしかったのだろうか。
……いや、いちごパフェが美味しかったからのような気がする。
おそらく後者が正解だろう。
「じゃあ、私のバナナパフェも一口あげる!はい!あ〜ん!」
……まじで?
「えぇ!?……ちょっとあーんは……恥ずかしいような……」
というか恥ずかしいです。
けど、僕が先にやったから無理だなんて言えない……
「美味しいよ?ほら!早く!」
「えと……あう……」
うぅ……
恥ずかしいしなぁ……
「……私のパフェ……食べてくれないの……?」
織夏ちゃんがそう涙目で言ってきた。
ざ……罪悪感がすごい……
「た、食べるから、な、泣かないで?」
うぅ……、でも、男なら覚悟を決めなくちゃ……
よし、食べるぞ〜
「やった!じゃあほら!早く!」
「あ、あ〜ん……」
「おいしい?」
「うん……美味しいよ……」
正直恥ずかしさと女の子にあーんしてもらえるちょっとの嬉しさで味がわからない。
は……恥ずぃぃぃぃ……
けどちょっと嬉しい……
数分後……
「ごちそうさまでした!」
あのあと結局あんまり味を楽しめなかった……
うぅ……
何かしらで気を紛らわさないとこのまま引っ張りそう……
なにか話題……、そうだ!
「ねぇ、織夏ちゃんは今何歳なの?」
「ん〜?15歳だよ!」
「……え?」
15歳?
え?
いや、流石に嘘か、大人ぶりたい年齢なんだろう。
「む〜、信じてなさそうな顔だね……、はいこれ!」
そう言って見せてきたのは生徒手帳だ。
そこには出身中学校や学年が書かれている。
中学校で3年生……そして今の時期的に……
「え……、まじで?同い年なの?」
「え!お姉ちゃん同い年なの!偶然だね!」
う〜ん……、同い年の人にお姉ちゃん呼びはどうなんだ?
いや、僕は男だからそもそもが間違いなんだけど……
いや、月が僕のほうが早いなら……
僕が生徒手帳の誕生月を見るとそこには9月と書かれている。
「……良かった、僕は4月4日生まれだから年下じゃない。」
ちなみについ4月4日がなんの日なのか気になって調べて男の娘の日だと知ったときの衝撃は未だによく覚えている。
僕はあいつらに四度殺意が湧いた。
「ん〜……、あっ、そろそろ帰らないと!」
「えっ、そうなの?」
いや、まぁ当然か、女性が歩き回っていい時間はそろそろすぎるだろうし。
「うん!」
「そっか、じゃあまたね」
「うん!また会おうね!お兄ちゃん!」
そう言って織夏ちゃんは走り去っていった。
……ん?
まって、いま最後なんて言った?
「え!?いやまって!今なんて言った!!!」
お兄ちゃんっていったよね!?
え!?気づいてたの!?
それとも僕の聞き間違い!?
どっち!?
まって!?
まだ行かないで!?
しかし、織夏ちゃんは僕の声に気づかずに走っている。
追いかけようとも考えたが、明らかに事案だから、追いかけようにもできない。
僕は結局モヤモヤしながらその場を去り、途中でスーパーで買い物をして帰った。
「結局どっちだったんだろう……」
わからない……
そう考えているとインターホンがなった。
僕は誰だろうかと考えながらドアを開き、そこにいた黒服を着たいかにもな雰囲気を醸し出すような男性に驚いた。
「うぇ!?」
まさか借金取りか!?
まさか借金残したまま逃げてったの!?
「音湖 永久様ですね、私はこういうものです。」
そう言って黒服が名刺を渡してきた。
そこには李治家当主側近 黒福 側近と書かれていた。
名前そのまんま過ぎるだろ!?
いや、それよりも李治家って僕の音湖家の本家じゃん!?
なんでそんなすごいところの人が来てるの!?
「本日李治家当主である李治 音羽様が貴方を引き取ることを決定しました。」
「えっ!?」
僕を引き取る!?
そっちにどんな利点があるの!?
「拒否なされる場合はなさっても構いませんが、いかがいたしますか?」
「いえ、しません。」
「では、こちらにサインを。」
「はい。」
僕はできるだけきれいな字で名前を書いた。
「はい、では何か質問はございますか?」
「えっと、なんで僕は李治家に引きられるのですか?」
「それはお答えできません。」
「そうですか。」
怖いんだけど!?
「他に質問はございますか?」
「いえ、ありません。」
「わかりました。」
なんで!?なんで僕は引き取られるの!?
絶対可哀想だからとかじゃないよね!?
「ではこれからの話をします。」
「はい。」
「貴方はこれからとある高校で寮生活をしてもらいます。」
「はぁ……、何という高校ですか?」
「如創女学院です。」
「……え?」
如創女学院?
確かそれって李治家の当主が経営している、私立のお嬢様学校じゃ……
え!?僕男だけど!?
「あの!僕男なんですけど!?」
「存じております。」
「ならっ……」
「ですがあなたの容姿であれば問題ないでしょう。」
「それはっ、……そうかも知れませんが……」
認めたく無いが容姿なら問題ない気がする。
「いや、そもそもお嬢様学校に男が入るのは……」
「はい、ですので女装して入学してもらいます。」
「……え?」
「ご安心ください、念の為補助として使用人を側に置く予定です。」
「いやっ!そういう話じゃっ!?」
「当主様にとってはそういう話なのです。」
「けどっ……」
「まぁ、もちろん言いたいこともあるでしょうが3年間如創女学院に通った場合、当主様からとあるものが貴方に与えられます。」
とあるもの?
「10億円です。」
「え……」
「また、在校中には月に100万円が支給されます。」
「は……」
「どうでしょうか。」
「……このままじゃどうせお先真っ暗ですよね?」
「はい、親がいない貴方は恐らくそうなるでしょう。」
「じゃあ、受け入れるしかないじゃないですか。」
「はい」
「うぅ……」
なんか……黒福さんからの同情の視線が送られている気がする……
「わかりました……、受け入れます……」
「はい、ありがとうございます。ではこれより学園へ向かいます。」
「わかりました。」
うぅ……この先どうなるんだ?
当主は母親です。
ちなみに父親の登場予定はありません。
……黒福が父親っていう設定にしようかな……
尚、主人公の武術の才能は筋力以外は転生する前からの自前です。