じゅうにわめ!これが最強の力......
シューティングホラーゲームも終え、しばらく他のゲームをした後……
「お姉ちゃん、そろそろ1時間がすぎるよ。」
「そうなの?じゃあそろそろ出よっか。」
「分かった。」
ふむ、今回は一時間消費か。
……今の所主人公が全くレベル上げとかしてないけど大丈夫か?
1年最後の敵はレベル50なんだけど……
因みに2年生の最後の敵はレベル90、3年の最後の敵はレベル130である。
ここはゲームの世界じゃなくて現実だからレベル制度はなくなってるんだろうけどそれでもいまの永久ちゃんで勝てるような相手じゃないと思うんだよなぁ。
ゲームの世界だったらラストの敵も嵌めたりして低レベルでも倒せたけど今のこの世界じゃそんなことにはならないだろう。
このままだとひ弱な永久ちゃんがつよつよなお姉さま方にぼこぼこにされちゃうかもしれない。
それはよくない、よくないぞぉ。
俺は前世のころからかわいそうは抜けない派なんだ。
う~ん、俺が永久ちゃんに気配察知の仕方とか教えればいいのかな?
この気配を感知する能力はゲームの中だと存在しなかった。
だからこの能力を永久ちゃんに教えられたら簡単に勝てるようになるんじゃないかな?
......あ~、でもよく考えたら無理かも。
実は乙姫の世界ではヒロインと主人公にはそれぞれ特殊能力を持っていることにされてるんだよね。
それで、ヒロインの一人である俺の特殊能力がこの気配を感知する能力かもしれない。
正直ギャルゲーに特殊能力いるか?とも思ったが主人公達に特別感を出すためらしい。
とはいえこの特殊能力は現実でもあってもぎりぎりおかしくないものばかりなためぎりぎりファンタジー世界ではないと言える。
因みに主人公の特殊能力はヒロインオーラというもので、可愛さアピールをすることで庇護欲を味方に与え、自分以外の味方全員のステータスを20も上昇させるというものだ。
男性主人公なのにヒロインという不思議。
う~ん地道に永久ちゃんを鍛えるしかないのかな?
俺が一人で勝つこともできるだろうけどそれじゃあつまらないし。
永久ちゃんもおんぶにだっこは嫌がるだろうから。
「じゃあ……、うん、そろそろ帰らない?」
「分かった!」
どうやら帰るらしい。
うむ、丁度いいし家に戻ったあと永久ちゃんの育成プランでも考えるか。
俺たちは帰りのバスに乗り、寮へと戻り、自分の部屋へと向かう。
すると俺の部屋の永久ちゃんとは反対の部屋の住人がちょうど部屋を出るところだったようで、ドアノブを握った状態でそこにいた。
「こんにちは。」
「ん?あぁ。」
永久ちゃんがあいさつをするとその人がそう返事を返した。
赤黒いまるで血のような色の少しぼさついた腰ほどまである髪の毛、眼力だけで人を殺せそうな鋭い目つき。
まちがいない、あの人だ。
うそだろ、隣の部屋なのかよ。
「えっと、あなたも新入生の人ですか?」
「あぁ、そういうあんたらもか?」
「はい、そうです。」
「そうか、私は一組の西園寺 鏡花だ。」
「あ、僕は音湖 永久です。」
「て、天青 織夏です。」
名前を問われたもののつい緊張して永久ちゃんの背中に隠れてしまう。
「一組ってことはおなじクラスの人なんですね。」
「ん?そうなのか、いろいろあって学校につくのが遅れて今日ついたから知らなかった。」
「あぁ、道理で見たことないと思いました。」
「わたしはこれから食堂で飯を食いに行くところなんだがあんたらもどうだ?」
「あ、僕たちはもうさっきたべてきちゃったので。」
「ん、そうなのか、じゃあ一人で行くとするか、じゃあまたな。」
「はい、また。」
そういって、鏡花さんは離れていった。
「あれ?そうしたの織夏ちゃん。」
「へ?あ、ううん、何でもないよ。」
「そう?」
「あ、わたしは部屋にもどるから、じゃあね!」
「え、うん」
そう言って俺は急いで部屋に戻り、ドアを勢いよく閉じた。
「や、やばい、あの人だけは正直会いたくなかった。」
西園寺 鏡花、乙姫においてヒロインキャラではないにもかかわらず人気投票において最も人気が高かったキャラクターである。
彼女はいわゆる友人キャラとして登場し、随所で主人公のサポートを行う役割を担っているのだが、どこかおかしいのがこのキャラなのだ。
まず、主人公の性別を真っ先に見抜いたのが彼女なのだが、その方法が見たらわかったというとんでもない理由なのだ。
彼女曰く男性の骨格をしていたかららしいのだが、そんなの女子高生がわかるわけないだろ。
他にも主人公がいろいろあって謎の組織に誘拐された際に、それぞれヒロインのルートに入っている場合はそのヒロインの財閥がそれぞれ助けに来るのだが、どのヒロインも攻略しない場合に入る通称鏡花最強伝説ルートでは鏡花一人で組織に攻め込み壊滅させているのだ。
他にもいろいろととんでもない活躍を見せており、間違いなく最強のキャラなのである。
そんな最強のキャラが近くにいる。
ということは俺の妹キャラが見破られるにきまってるじゃないか!
やばい、やばいぞ。
同じ寮にいるとは思ってなかった。
ゲームだと同じ寮じゃなかったのに何で同じ寮になってるんだよ。
俺が増えた影響で同じ寮になったのか?
いや、そんなの気にしてる暇はない。
何とかして鏡花の目をごまかす方法を考えないと。
鏡花さんは織夏と同等以上の実力を持つ設定です。