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93話 どちらのスマホ

 俺は、そのメッセージに添付された写真を改めて見てみた。

 その写真は俺と彩が二人で並んでおり、俺がスマホを構えて時計塔の写真を取っている様子がバッチリと写っていた。そして、この写真に写っている時計塔が示す時間はちょうど俺が投稿した写真の時計塔の時間と一致しており、俺は頭を抱えると同時に机に頭を突っ伏した。


「気をつけていたつもりだったんだけどな。これじゃ間抜けじゃないか」


 俺は今まで何人もの先輩VTuberだったりがその身元をネット上の海の上に公開されていることを思い出してそう呟いた。

 すぐに頭を切り替えると、俺は次の最善の一手を考えるために頭を回転させた。


「もし、メッセージを無視すればこの写真が公開されるわけだな」


 俺はそう呟くと、次に起きることを予想していった。


「となれば、当然、画角の検証が始まるよな。そして、本当に同日に撮られている写真かが、やり玉に挙げられるわけで」


 俺は再び、別の人になったつもりになって、俺の投稿した写真と添付されていた写真との類似点や、同じ時間の別日かもしれないと言えるだけの材料を探す。


「まず、同日であるという証拠が写真内に写り込んでいるかだな」


 俺はそう言うと、同じ写真をスマホからパソコンに転送すると、ディスプレイの大画面で写真を適宜拡大しながら証拠を探し始める。


「良かった。取り敢えず、日付が写っている部分はない!」


 俺は1ピクセルも見逃さないと瞬きもせずにいて乾きを感じた目をグッと閉じるとそう独り言ちた。


「次は日付以外から分かる同日である証拠を探さないと」


 そして、再び写真を隅々まで見ていく。


「取り敢えず明確に同日だという証拠は……」


 元々SNSに上げるかもしれないという前提のもと撮った写真であったので、俺の撮った写真には人間の姿は写っていなかった。

 そして、俺を脅してきた謎の人物の写真も別に美鈴咲を狙って撮ったわけではなく元々は単純に時計塔を写すために撮ったらしく俺たち以外の人は写っていない。


「同じ人物が写ってはいなくて良かった」


 俺はそう呟いて、今回のこの写真は無視しようと思いかける。そして、写真の端、なにやら見覚えのあるものが写っていることに気がついた。


「これは、おい、嘘だろ……」


 そこには随分とお世話になった着ぐるみが写っており、その手にはあの見覚えのある看板を持っていたわけで。


「あのフェアはいつからいつまで開催されていたんだ?」


 そう俺が呟いた瞬間だった。スマホのバイブ音が鳴った。


『この二枚の写真が同日に撮った証拠はもちろんありますよ。写真に写っている着ぐるみが持っているカップルフェアの看板。これはあなたがその遊園地に行ったその日限定のイベントですからね』


 そのメッセージに俺は、うめき声を上げた。



 何度、泉に相談しようとスマホを持ち上げたか分からなかった。

 だけど、結局俺は泉に相談することができなかった。泉は俺に期待して、会社の株の2%を俺に持たせてくれた。そんな俺は自滅に近い形でメタガラスに危機を持ち込んでしまった。

 俺は自分が不甲斐なさ過ぎて、情けなさ過ぎて、どんな言い訳もできずに、泉に相談する、そんな口では簡単に言えることができなかった。

 ……どれだけ勇気がないんだよ。


 俺はそう頭の中でつぶやくと、泉と繋がった新しいスマホではなく、見知らぬ誰かと繋がった古いスマホを取り上げるとメッセージを打った。


『写真の件について相談があります。どこで会えばいいでしょうか?』


 俺がそうメッセージを送ると、相手もずっとメッセージを待っていたようですぐに返信が帰ってきた。


『そうですね。〇〇でどうでしょうか?』


 そこは東京のある場所で。俺はひとまず住所はバレてないという確認が取れたと今更あまり変わらないであろう事実に少しだけ皮肉気な笑みを浮かべた。

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