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86話 破局なの?

『愛の着ぐるみキューピット大作戦! 着ぐるみが手を引いてきたカップル限定で無料でお写真お撮りします!』


 別にバブル生まれとかではないのだが、どこか懐かしく感じるようなネーミングセンスなタイトルに俺と彩はぬいぐるみに引かれていた足を止めていた。


「なあ、俺が知っていたらこんな場所にお前と来ると思うのか?」


 俺がそう聞くと、彩は愚問というようにせせら笑うかのように言った。


「まあ、傑はヘタレだから偶然を装って女の子をこんな場所連れてくるなんてできないわね」


 事実だが、俺はなんだか自分が情けなく思えてきた。


「その通りだけどさ、もう少し言い方を考えてくれても良いんじゃないか」


 俺がそう言うと、彩は仕方ないと言うように頭を振ると、言う。


「まあ、本当に傑が自分から勇気を出した時には一緒に撮ってあげてもいいわ」


 彩がそう言うと、なんだか俺は照れくさくなってそれを隠すように言った。


「それなら、それはその時に取っておいて、今日はやめておこうか。ほら、ぬいぐるみの中の人もなにやら困っているようだし」


 俺がそう言うと、着ぐるみはピクリと不自然な動きをすると、全然そんなことないというように顔の前で手を振った。カップルと思って引いてきたのがまさかのカップルモドキだったのだから俺も少し同情してしまう。

 いつもの意地悪な笑みではなくちょっとした苦笑いを浮かべる彩も同じように感じたようで頷いた。


「そうね、なんだか気が抜けちゃったわね。時間はあることだし、ゆっくり園内を周りましょうか」


 そう彩が言ってぬいぐるみにお礼を言ってその場を去ろうとするのについていこうとすると、なんだか物理的にその場から離れがたいことになっていることに気がついた。

 

「ねえ、お兄ちゃん、お姉ちゃんと別れたの? 破局なの?」


 その幼い声音で俺が嫌な予感を感じながらずいぶんと低いその声の出どころを見ると、そこには真っ赤なワンピースを着た5歳くらいの女の子がいて。


「ねえ、傑? 通報しましょうか?」


「いや、なんで第一声が通報しましょうか? なんだよ……」


 戻ってきた幼なじみに誘拐犯だと疑われました。



「それで、あなたの名前を教えてくれるかな?」


 彩が腰を低くして女の子と目線を合わせるというなんとも母性の感じる魅力的な姿勢でそう聞くと、女の子はぷっくりとしたほっぺたをぷくりと膨らませると不満そうに答えた。


「ねえねえ! お姉ちゃんはこのお兄ちゃんと破局したの?」


 女の子がそう聞くと、彩はこめかみをヒクヒクさせながらも優しげな笑みを浮かべるという高等テクを披露しながら優しく言った。


「あのね? 私はこのお兄ちゃんとは別に付き合ってないの」


 俺がなんだか年の離れた姉妹みたいだな~と癒されるような気持ちで見ていると、いつものキリッとした目線で彩に射抜かれた。


「傑……!」


 俺は神経反射的に声を上げた。


「俺は別にこのお姉ちゃんとは元々付き合ったりはしてないよ」


 俺がそう言うと、彩は満足そうに頷くと、再び女の子に言った。


「ほらね? 破局じゃないの。ほら、お母さんかお父さんを探してあげるからお名前教えて?」


 破局とは随分と難しい言葉を使うロリっ子だなと思っていると、女の子は再びの爆弾発言をしてきた。


「お姉ちゃんとお兄ちゃんが私のママとパパみたいに離婚するのはイヤ! ちゃんと写真撮って!」


 そう言って、ウルウルし始めた女の子を前に俺は彩を顔を合わせると仕方ないというようにお互い頷きあう。

 そして、今の今まで俺たちの周りで職員のくせに迷子を前に役立たずだった猫の着ぐるみを見る。

 すると、猫の着ぐるみはしばらくキョトンとしたかと思えばオーバリアクションとしか思えない全身運動をかましながら俺たちの手を取った。


「私がちゃんと監督してあげる!」


 そして、そう言いながら先導するロリっ娘と、頼りない様子で俺たちの手を引く着ぐるみを前に俺は、随分面倒くさそうなことに巻き込まれたなあとか呑気に考えていた。


 この時はまだ、これがメタガラス全体を巻き込んだ新たな事件の幕開けだとは全く思わずに。

これで第三章完結です!

物語の着想段階ではこの章が最終章予定でしたが、たくさんのブクマ等頂けてもっと物語の続きを書きたいと考えて4章突入することにしました!

最近、更新頻度が落ちていますが、ちょっとリアルが忙しいのと、もともと予定になかった次章とのつじつま合わせなどなどでなかなか筆が進まなかったのも理由ですので、ぼちぼちのんびりと更新をお待ちいただければ幸いです。

良かったら感想なんかもお待ちしております!

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