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82話 再始動!

「ねえねえ! お兄ちゃんは泉さんとなにを話していたの!?」


 泉の実家からの帰り道、梓は泉の隣の席に座るのはすっかり忘れたようで、俺の横から喧しい声を聞かせてきていた。


「秘密だ。秘密」


 俺はそう言って梓を遠ざけるように押し返した。

 そして、泉の早業による助手席ゲットによりまたもや泉の隣の席の獲得に失敗したエイヴェリーさんは不機嫌そうな様子でじゃれ合うように押し合う俺たちを見て言った。


「全く随分仲のいい兄妹ですね。もう泉さんは諦めて兄に養ってもらえばよろしくて?」


 エイヴェリーさんはそうお嬢様言葉で梓をからかう。梓は負けじと後ろを振り返ると口を開いた。


「ふふ、私は兄には養われないんだね。なぜなら……」


 俺はその後に続くしょうもない言葉を想像するとため息をついた。


「私は玉の輿ってやつを夢見る。美少女中学生なんだからね……」


「それって、養われる対象が傑さんから泉さんに変わっただけじゃ……?」


 自分で言って自分で混乱した様子のエイヴェリーさんは目をパチクリしながら梓のことを見返している。

 あまりにもうちの妹とくらべて可愛かったので俺の中に少しからかってみたくなるいたずら心が芽生えた。


「エイヴェリーさんも養われたいですか?」


 俺がそうニヤニヤしながら聞くと、エイヴェリーさんは少し赤面しながらブツブツと言った。


「私は養われるとかじゃなくて、夫婦ふたりで助け合うような関係のほうが……」


 いつもはあんな冗談なんかを言うような女性が真性のデレを見せると可愛いんだなと、思いました。

 俺は泉はどんな反応をしているんだろうかと、俺の斜め前に座る泉の横顔を覗いた。

 あ、少しだけいつもより顔が赤いような気がするなあ。

 俺がそれをネタに泉を弄ろうとすると、梓が俺の袖口を握ってしょんぼりした様子で言ってきた。


「私、女の子として色々と負けた気がするんだよ」


 梓の言葉に俺は思わずというように言う。


「いや、勝ってるところないんじゃないかな」


 俺がそう言うと、梓はショックを受けた様子で俺のことを見返す。


「そのトーンはマジなんだよ!」


 流石に可哀想かなと思って俺は必死に頭を働かせて梓が勝っている部分を考える。


「えと、ボケの才能とか?」


 俺が前もそんなこと言った気がするなあとか思いながらそう苦し紛れに言うと。


「そんなに褒めてもなにもでないぞぅ」

 

 梓が満更でもないというように体をくねくねさせていた。

 ……性格がポジティブとでも言っておけば良かったかな? 

 言い換えれば頭がお花畑とも言うのだが。



 泉の実家から帰ってきて次の日、泉のプレハブ小屋にはメタガラスメンバーが勢ぞろいしていた。


「折角、泉さんが帰ってきたのにまだ、一度も全員で配信してないなって思ったんすよね」


 早苗さんのその言葉に俺は確かにと思って泉に聞いた。


「いまから配信ってできそうか?」


 俺がそう聞くと泉は誰に聞いているんだいとでも言うように笑みを浮かべると頷いた。


「もちろんだとも。最近は色々あってまとめサイトなんかにもメタガラス実は仲が悪い説のようなことも囁かれていたようだしね。ここらで僕たちの結束というものを見せつけてやった方がいいと僕も思っていたのさ」


 泉がそう言うと、プレハブ小屋に集まったみんなも頷くと配信の準備を始める。

 プレハブ小屋を主に管理してくれている翼さんや田所がしっかり整理整頓をしてくれていたので準備はすぐに済んだ。


「傑は右端で大塚ちゃんは左端ね」


 監督みたいに翼さんがそう指示を出した。

 俺と大塚ちゃんがそれぞれ中の人になっている美鈴咲とセーラちゃんはコラボするたびに、美鈴咲がセーラちゃんに一方的にボコボコにされるのがお約束みたいになっていた。

 視聴者的にはなんとなく望まれている展開のような気もするのだが、毎回その後にグダグダになるため、今回翼さんは配置を離すことで対策するつもりらしい。

 ということで、配置的には右から俺、彩、泉、早苗さん、大塚ちゃんという順番になる。


 そうして久々のメタガラス全員での配信はスタートした。

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