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77話 帰路

 結局、メアリー社長との面会は、次の予定があるということでお開きとなった。

 電車の予定もあるため、俺たちは簡単に東京のお土産を買うと、駅までの道のりを歩き始めていた。




 梓とエイヴェリーさんにすっかり恐怖を感じているのか、泉は俺と田所に護衛されるかのように間に入って、東京の街並みを歩いている。


「ねえ、お兄ちゃん、場所変わらない?」


 すると、俺と田所のガードが固く泉の横に入れなかった梓がそう俺に聞いてきた。

 

「いや……」


 俺がそう答えかけると、割り込むように泉の不機嫌そうな声が響いた。


「断る」


「泉さん、私はお兄ちゃんに聞いてるんだよ!」


 梓がそう言ってドヤ顔で泉に胸を張る中、俺は顔に近づいてきた蚊を追い払うように梓を遠ざけた。


「どうせ、ロクでもないことになるから断る」


 俺がそう言うと、そんな様子を見てニッコリと笑みを浮かべたエイヴェリーさんが泉の左隣にいる田所に話しかけた。


「ねえ、田所さん。私と場所を変わってくださらないかしら? ね?」


 エイヴェリーさんはそう言うと、田所の体に密着するように近づいた。

 ……羨ましくなんてないんだからね!

 俺は刺々しい彩の視線を感じながらそう自分に言い聞かせた。


「せ、拙者、はもち、もちろん!」


 田所がそう言った所で、自らの身の危機を感じ取ったのか、泉はメンズなポニーテールにしている髪を解くと、とたんにショートカット泉ちゃんに変身した。


「田所、僕を裏切る気かい? 君は僕の弟子じゃないか」


 なんとも、ファンタジーラノベにありそうなセリフを吐きながらも泉はその美少女ぶりを全力で発揮すると、田所にそう言った。

 そして、左右から色仕掛けを仕掛けられるという田所の人生に二度とないだろう幸福を前に、彼はどうするかといえば。


「拙者、師匠を裏切ることはありませぬ」


 田所は金髪碧眼美少女ではなく、黒髪ショート女装男子を選びましたとさ。


「なんで、私なんで、男の子に色仕掛けで負けているのかしら!」


 エイヴェリーさんはそう現実が信じられないというように叫ぶと、ならば相手を変えるまでと俺の方へと寄ってきた。


……いいとも、俺は来る者は拒まずだよ。


 俺がそういった心理であたかもなにも期待していませんよという表情を浮かべていると、彩がエイヴェリーさんに言った。


「エイヴェリーさん、電車が来るからあとにしましょう?」


 彩の思わずブルッとしてしまいそうな声音を前にしても欧米人の度胸は揺るがないのか、エイヴェリーさんは負けじと彩に言った。


「彩さん、私はあなたの弱みを……」


「それがどうしたのかしら?」


「クッ……せっかく、協力してくれればあなたが気になっていそうな情報も教えようと思ったのに」


 彩の強気な態度にエイヴェリーさんが負け惜しみにそう言うとエイヴェリーさんは諦めたとでも言うように、翼さんや早苗さんのいる方へと向かっていく。

 エイヴェリーさんは、気づいてないようだけど彩が少し後悔しているような表情をしていたことは言わないことにしよう。面倒くさそうだし。

 俺がそんなことを思っているとまだ諦めていなかったらしい梓が今度は田所の方へと向かっていくと体を寄せて囁くように言った。


「ねえねえ、田所さん。場所変わらない?」


 そして、そんなことを言われた田所は衝撃的な言葉を放った。


「拙者、アホな妹キャラには興味ないでござる」


「なんですとッ……!」


 一人衝撃を受けて立ち止まった梓を放置して俺たちはそのまま駅までの道のりを歩いてゆくのであった。




「……拙者が手を出せば師匠がお怒りになるでしょうからな」


 田所が付け足すように言ったその言葉はきっと泉にも聞こえていたのだろうが、泉は特に否定したりはしなかった。

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