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75話 ネタバラシ1

「いいかい? 人の見た目や言動で簡単に判断してはいけないよ。だって私は、」


 エイヴェリーさんはそこで言葉を止めると魅力的な笑顔で言う。


「女の子だからね」


 その衝撃的な言葉をエイヴェリーさんが放つとメタガラスメンバーはみんな驚きで声も出ないという様子で泉に抱きつくエイヴェリーさんを凝視した。

 暴れて逃れようとする泉だったが、華奢なその体では、改めてみれば外国人らしく身長の高いエイヴェリーさんからは逃れようもないようで無駄に体力を失っている様子だった。


「わ、わ、私! エイヴェリーさんが苦手って思った理由がやっと分かったよ! つまり、女の勘だね!」


 確かにそんなことを梓は言っていたなあと思考停止しかけていた頭に処理が戻ってくると、場を更に混乱させるように梓が全速力で泉に突撃していった。


「わ、き、君は来るな!」


 悲しいかな、必死に逃れるのに息も絶え絶えの泉の言葉は梓には届かなかった。

 ……声が聞こえてたとしても止まらなかったのではないかという指摘は今は置いておこう。


「むが、むがむが!」


「ワオ!」


 と、ドスという音を響かせて背中から梓のタックルを受けた泉がエイヴェリーさんの胸に顔面を押し付けるようにして変な声を出し始めた。なんとも羨ましい事……。


「傑? 何を考えているの?」


 彩の恐ろしい声音に俺は邪な気持ちを心の奥底に仕舞うと泉を救出するためにサンドイッチ泉の方へ向かっていった。



「君たちは僕を殺すつもりなのかい……?」


 胸で窒息死という羨ましいのか恥ずかしいのか分からない死に方をしそうになっていた泉をなんとか二人から引きなすと、俺は泉と、エイヴェリーさん、梓を引き離すように座らせて一先ず衝撃な事実を含めた状況説明をエイヴェリーさんに求めた。


「それで、エイヴェリーさんはなんで男のフリをするという頭のおかしな行動に走ったんですか?」


 俺が多数の前科持ちの泉を横目で見ながら聞くと、エイヴェリーさんはさも当然のように言った。


「私が面白いからよ」


 俺は精一杯のため息をつきながら泉を見る。


「ちなみにお前はどういう理由で女装をしたんだっけか?」


「もちろん、面白いからだよ」


「天才ハッカーはみんな女装や男装をする趣味でもあるのかよ……」


 俺は念のためというようにエイヴェリーさんの母親の方を見る。先程からニヤニヤと俺達を観察しているのが嫌らしい。


「私も大学の時ちょっとだけ……」


「ママ! 私、その写真見たいわ!」


「いや、でも恥ずかしいわね……」


 いや、本当に会話がこの世の終わりすぎるのだが。


「ちなみに田所、お前はなにかそういう……」

 

 俺は天才ではなくとも泉からITスキルを叩き込まれている田所の方を見てそう聞いた。


「拙者でありますか? ちょっとだけスカートとストッキングを履いて自撮りしてみたことはありますぞ……毛の生えた生ハムにしか見えなかったですが」


「キモッ……」


 俺もキモいと思いますけども、彩さん、田所が泣いてるから本人に聞こえない声量でお願いします。

 俺は気を取り直すようにエイヴェリーさんに尋ねる。


「それでエイヴェリーさん、なんか色々秘密にしていること、あるんじゃないですか?」


 俺がそう聞くと、親子でなにやら写真を見せあっていたエイヴェリーさんはいたずらな笑みでこちらを見てきた。


「そんなにママの若い頃の男装写真が見たいんですか?」


「……そうじゃなくて、別の色々だよ」


「傑、今の間はなに?」


 俺が彩の声が聞こえなかったふりをすると、梓が同調するように言った。


「そうなんだよ! まだ私達に秘密にしていたことがある気がするんだよ!」


 梓がそう言うと、エイヴェリーさんは仕方がないですねと、ネタバラシを始めた。

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