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67話 病室

 幸いにも泉は問題なく息はしていたため、すぐそばに病院があることを確認した翼さんが、病院に連絡を入れた。翼さんは車の後部座席に眠ったようにぐったりとしている泉を乗せると焦ったような声で言った。


「ごめんね。病院に連絡を入れたから今からこの子を病院に連れていくね。傑くんは一緒に乗って楓の様子を見てもらえると助かる」


 翼さんがそう言うと、俺はすぐにうなずくと車に乗り込んだ。

 俺がドアを閉めたのを確認すると、翼さんはすぐに車を出した。


「……なにしてんだよ、お前は」


 俺は蒼白な顔で後部座席で横になっている泉を見てそう呟いた。

 しかし、その言葉に泉はなにも答えることはなく、俺は泉が席から落ちないようにサポートしながら、病院までの道のりを過ごした。



 病院につくと、入り口で待ち受けていた医師たちが泉をキャスターのついた担架のようなもので連れていった。

 そして一人残った初老の医師が俺と翼さんを見て言う。


「ご家族の方は一緒に来てください」


 その言葉に翼さんは頷くと、ちらりと俺の方を見てきた。


「俺はいいです。病室の前で待ってますから」


 俺が力なくそういうと翼さんは頷くと初老の医師に連れられてそのまま病院の建物の中へと入っていった。

 そう、俺は別に泉の家族ではない。そしてどうも俺は泉から友達とも思われてなかったようだ。

 俺はそう思ってから、泉が倒れている状況でもなおそう考えてしまった自分の思考に嫌悪感を感じた。

 

 俺はしばらく目尻に感じる熱さを病院の入口にできている日陰で冷ますと、翼さんたちを見失わないようにそのあとに続いた。



 1、2時間か経っていた。

 いつの間にか、俺の横には彩たちも合流していて、俺たちは揃って廊下の長椅子に座っていた。

 白い廊下にこう何人も座っているとどうも違和感を感じる景色だった。

 と、そんなどうでもいいことを考えているとドアが開いて、翼さんが出てきた。


「過労で倒れたとのことで数日安静にする必要はあるけど特に問題はないようね」


 翼さんはそう病室の奥を見ながら言った。

 俺が釣られて病室の奥をちらりと見てみると、ベットから上半身を持ち上げている人影がちらりと見えた。

 すると、翼さんが俺たちの気持ちを見透かしたように聞いてきた。


「あの子に会ってく?」


 俺は確認を取るように初老の医師の方を見る。


「少しの間だったら問題ないよ」


「それなら」


 俺はそう言って立ち上がる。すると、横の彩たちが立ち上がらずに俺の方を見ていることに気がついた。


「彩たちは来ないのか?」


「まずは傑くんから行くべきっすよ。なにしろ一番泉さんと長い付き合いっすからね。私からも言いたいことはたくさんあるっすけど、今日は代表して傑くんに託します」


 俺はその言葉に異論はないかとみんなを見た。


「お兄ちゃんに任せるんだよ」


「ちゃんとあいつに言ってやれよな!」


「ガツンと言ってあげて」


 俺はみんなの言葉に頷くと、あの最高に天才で、最高にバカタレのアイツの顔を思い浮かべながら、病室へと足を踏み入れた。

遅くなりました。

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