66話 発見
次の日の日曜日、翼さんは俺と梓と彩を連れて例の家の近くで車を停めて張り込んでいた。
ちなみに早苗さんと大塚ちゃんは蕎麦屋の尾行、エイヴェリーさんはそのサポートで田所はそのまたサポートをしてくれていた。
「……一体どこがおかしいと言うんだよ」
俺はスモークガラスになっている後部座席から梓が違和感を感じたという家を見てそう言った。
朝の6時から張り込んでいるが、11時になった今になっても家から人が出てくる気配はなかった。
「休みだからか、今日は外にでないのかな?」
俺が今日の曜日を思ってそう言うと、翼さんも言う。
「仮にここにあの子がいるとしても、用事がなければまず部屋からでないと思うわ」
俺はその言葉に深くため息をついた。
「つまり宅配便なんかがこの家にやってくるのを待たないといけないということですね」
俺がそう言うと、梓が車のドアを開けて、外に出た。
「私、もう我慢できない! 直接ピンポン押してくる!」
梓はそう言うと、俺たちが止める間もなく玄関に突撃すると、インターホンを押した。
「お、おい!」
俺は車から半身を出しながらそう言うと、梓はにっこり笑顔で言う。
「もう、押しちゃったもんね!」
俺が呆れて言葉もでないという風に頭を振ると、遅れて出てきた彩が言った。
「この家、特にインターホンにカメラの付いているタイプではないようだから問題ないと思うわ」
彩の言葉に玄関に向かいながら確認してみると、たしかに家は築年数が経っておりハイテクな機器がついているようには見えなかった。
「確かに、出てきたところを確認してみればいいよな」
俺がそう言っていると、梓が不思議そうにこちらを見てきた。
「あれ? いないのかな?」
確かに在宅であればそろそろ出てきても良さそうな頃合いであった。
「不在なんじゃないか?」
俺は無駄な時間を過ごしてしまったとスマホを取り出して時間を確認しようとした。
「一回泉さんに電話かけてみよう!」
梓はそういうと、俺の携帯を奪って泉に電話をかけた。すると、家の中からかすかに電話のコール音が聞こえてくることに気がついた。
「え?」
俺たちは真剣な眼差しになると耳を澄ませる。
「一回切ってみてくれないか?」
俺がそう言うと、梓がコクリとうなずくとキャンセルボタンを押して通話を終了させる。
すると、少しの間をおいて、家の中から聞こえてくるコール音も止んだ。
「彩、泉にメッセージを送れるか?」
俺の言葉に彩はうなずくと、泉にスタンプを送信した。
今度はタイムラグもほとんどなくあの特徴的な通知音が聞こえてきた。
と、俺たちの様子に疑問を感じたのか、翼さんが車から降りてこちらへとやってきた。
「どうしたの?」
「それが……」
*
俺が状況を説明すると、翼さんは頷くとポケットからスマホを取り出して泉にコールした。
「確かに電話をかけると家の中から微かに通話音が聞こえてくるわね」
翼さんは眉間に手を当てながらそう言った。
「でも、だとするとなぜあの子インターホンに反応しないの? 電話の呼び出しなんてすぐに切ればいいのだし……」
すると、梓がなにかに気がついたように、焦った顔をするとドアノブを握ると勢いよくドアを開いた。
「お、おい! お前なにを……」
俺がそう言って止める間もなく梓は靴を脱ぎ捨てると、玄関を駆け抜けて奥へと走っていく。
「お兄ちゃん! 大変! 来て!」
梓の焦った声に俺たちも部屋へと駆け込むと、そこには。
床に倒れた泉の姿があった。




