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64話 尾行

「諏訪地域で出前を頼んだとすると、このそば屋から配達されるということね」


 翼さんは手早く例の蕎麦屋について調べると、諏訪地域にある支店の検索結果を見せてきた。


「ここから配達に出る人を尾行すれば泉が見つかるかもということですね」


 俺はなかなか突破口を見つけられないところからやっと見つけた小さな針穴のような突破口を前に冷静さを忘れないように落ちついた口調でそう言った。

 俺以外もみんなそれが小さな突破口だと分かっているのか一様に真剣な眼差しで頷く。


「私は車に乗って尾行するから助手席でサポートとして彩ちゃんに同乗をお願いするわ」


「分かりました」


「早苗さんはレンタカーで大塚ちゃんと一緒に別の配達員をお願いします」


「任せるっすよ」


「分かったぞ」


 翼さんは手早く各自の役割を割り振っていった。


「俺はどうすればいいですか?」


 俺がそう聞くと、翼さんは少し申し訳ないような表情をして言った。


「傑くんと梓ちゃんは自転車で私達車組が追いきれなかったところをサポートしてほしいの」


「分かりました」


「分かったよ!」


 自転車なんていくらでも漕いでやる。俺がそう決意を持って返事をすると、梓も同じ気持ちなのか元気よく返事をした。


「私は何をすればいいですか!?」


 と、エイヴェリーさんが勢いよく聞いてきた。


「エイヴェリーさんは、例の監視カメラシステムでの監視と、私達が提供するルート情報から配達員の予想配送ルートを割り出してもらえるとありがたいです」


 翼さんの過酷な要求に俺は、一体エイヴェリーさんは応えられるのか疑問に思っていると、エイヴェリーさんはくくくと笑って言った。


「面白いね。それこそ、私達エンジニアの存在意義ですね!」


 エイヴェリーさんの言葉に俺は果たして泉ならどう答えるだろうと考えてしまった。



「じゃあ、傑くんと梓ちゃんはエイヴェリーさんから送られてくる予測データをもとに街の中を移動してね」


 翼さんの言葉に俺たちが頷くと、翼さんはよろしくと言ってそのまま車を走らせていった。残された俺たち兄妹もお互いに小さくうなずくと、それぞれ別の地域を目指して走り始めた。



 私はお兄ちゃんと分かれたあと、耳を塞がなくても聞けるからと翼さんから渡されたイヤホンから流れてくる、エイヴェリーさんの作成した自動応答アプリとの通話に耳を澄ませながら街の中を走っていた。


「この先を右だね!」


 私はすぐ物忘れしてしまう自分のカワイイ脳みそに自覚があるので、アプリから言われたことを忘れないように言われたことを繰り返しながら走っていた。


「なにも連絡がないということは翼さんたちは今のところ配達員さんを見失ったりしてないってことだね」


 私は街の中を走りながらそう呟く。暑くなってきている中、先程からずっと走り続けなのできっと私は女の子あるまじき汗だくの状態だと思う。


「絶対見つけてやるんだからね……!」


 私はそう言ってハアハアと息を切らせながら走る。

 そんな風に、なんの関連性もなく走っているかと思えば、時々蕎麦屋のバイクらしきものや翼さんの車を遠くに見かけたりするのでエイヴェリーさんの作ったソフトはそれなりの精度を持っているみたいだった。


『翼車が蕎麦屋をロストしました。最も可能性の高いエリアが翼車に変更されました。梓さんは次点のエリアに管理者権限によって変更されます』


 と、私が考え事をしながら走っていると、ちょっと変な日本語のアナウンスとともに私の担当エリアが変更された旨が伝えられた。

 流石に音声だけでは心もとないと思ったので、私は一時的に歩道に乗り上げると、一時停止してスマートフォンを開く。


「げっ、遠いよ!」


 と、そこにはここからは遠いエリアにピンが刺さっている地図アプリの表示が写っていた。

 

「これ、絶対探す人の効率を考えて設計してないでしょ!」


 私は一人、歩道でそう叫ぶと、疲れのたまり始めた太ももを叩いて再び自転車にまたがった。


「絶対見つけてやるんだからね!」


 私はそう決意表明すると再び自転車を漕ぎ始めた。

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