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59話 お手柄

 俺たちが泉の実家を後にした次の日、翼さんから仕事部屋の横のプレハブスタジオへと呼び出しがかかった。

 梓と彩にも同じメッセージが届いたようなのできっと全員に呼び出しがかかったんだと思う。事実、家を出たところで早苗さんと大塚ちゃんにも遭遇した。


「お、三人と会ったということは、全員集合ってことすかね。用件が書いてなかったっすけど、やっぱり、烏城対策っすかねえ」


 早苗さんたちは、そう言って、俺たちののところへと合流する。


「ひとまず楓さんが無事で良かった。あずちゃんから聞いたけど、楓さんの小さなときの写真にひとまず反応はしてくれたようね」


 彩はそう言って、少し安心したような表情を浮かべた。


「私ほど、泉さんを理解している女の子はいないからね! 私以上に泉さんを理解しているのは、実のお姉さんの翼さんと、男同士の友情で相思相愛、愛し合っているお兄ちゃんくらいだからね!」


 梓がなにやら分けの分からないことをのたまった。

 ……相思相愛、愛し合っているとは心外だ。泉なんて、ただの男友達。いや……俺は親友で同志だと思って……。

 俺はそこまで考えたところで、アホな妹の思考回路に毒されていることに気づいて頭を振った。

 だめだ、()()()同じステージに立ってはいけない。


「傑、大丈夫? ちょっと顔色悪いけど」


 と、横にいる彩が馬鹿にするでもなく真剣な顔で俺の方を覗き込むと心配そうにそう聞いてきた。


「いや、俺たちが泉に抱いているこの気持ちとさ、泉が俺たちに抱いている気持ちって違うんじゃないのかなと思ってさ」


 俺がそう言うと、彩は小さく言った。


「傑。『俺たち』って言っているけど、今は楓さんを連れ戻すという気持ちで私たちは一致しているけど、その中の楓さんを連れ戻したい気持ちの中身っていうのは、私達それぞれで変わってくるんじゃない?」


 俺が彩の言葉の意味を頭の中で組み立てていると、彩は付け足すように言った。


「結局、言いたいのは、楓さんの本当の気持ちを聞きたいなら、本人に直接聞かないといけないということ」


 俺がその言葉に頷くと、彩はちょっと笑いながら言う。


「ちなみに、私が楓さんを連れ戻したい理由の2割くらいは、このままもてあそばれたまま終わりたくないっていうことよ」

 

 泉に散々に遊ばれた彩がそう言うと、俺はそれ以上に遊ばれた身であるので言ってやった。


「ふ、俺は5割だね」


 俺がそう言うと、早苗さんたちも共感するように笑って、梓が元気よく言った。


「私は、愛が100割だね」


 100割とは一体?



 俺たちがプレハブスタジオに入っていくと、そこには翼さんと田所、そして、泉の仕事部屋から持ち出したと思われるパソコン一式を前になにやら作業をしているエイヴェリーさんがいた。


「来たわね」


 翼さんは俺たちを迎えると、そのまま会議スタイルに並べてある椅子に座るように促した。


「早速だけれど、結論から言うわね。アクセス制限については解除できなかったわ」


 翼さんはそう言うと、作業を中断してこちらの方へ向いているエイヴェリーさんに説明するように促す。


「はい、私も色々やってみたのですが、()()()()()()()既にシステムに使われているプラグインなどの脆弱性なんかも最新のパッチが当たっていて侵入は叶いませんでした。残念です!」


 エイヴェリーさんはそうオーバーな身振り手振りで説明する。随分と難しい日本語をずいぶんと変なイントネーションでしゃべているのだが、俺はその様子を見ながら、実は日本語がペラペラなのにテレビではたどたどしくなるという噂の外国人の芸能人を思い出していた。


「そこで、万策尽きたと思ったのだけれど、今朝実家から電話があったの」


 その言葉に俺たちはなにやら泉の手がかりが見つかったのかと少し前かがみになる。

 すると、翼さんは随分と複雑そうな顔をして梓を見た。


「お手柄よ。梓ちゃん」


「「へ?」」


 予想打にしてなかった言葉に俺たち、そして梓本人ですら気の抜けたような言葉を返した。

最近投稿頻度が少なくて申し訳ないです。仕事が変わりまして新しいことに慣れないといけない日々でございます。なんとか頻度を上げるように頑張りますので、続きも楽しんでもらえると嬉しいです。


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