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51話 ネット上の伝説、VTuberデビュー1

新章突入です!

「ということで、俺からの提案は以上だ」


 実質の社長である泉を筆頭に、少人数精鋭で運営されているメタガラスだからできることなのだが、月1の頻度で開催することになっている経営会議で、俺は大塚ちゃんの炎上も収まったので、ある提案を行っていた。


「平社員たる僕自身がVTuberデビューをするという提案をされるとはね」


 この前の秘密はなしという大塚ちゃんの発言もあって、事務所全員に泉が実は男であることがバレたので泉は学校に通うときと同じポニテで会議に参加している。


「私もいいと思うぞ、何回もあのときの配信のアーカイブを見てるけど、視聴者さんたちにも社長の声は受け入れられてたしな!」


 大塚ちゃんが俺の意見にそう同調した。


「大塚ちゃん、何回もあの配信を見てるんだ。あの美鈴咲踏みつけ事件の動画をね……」


 彩が俺の方を見ながら、失笑したので俺は努めてその様子をスルーしながら、翼さんの方を見る。

 すると、なにか考え事をしていたのか、翼さんは少し遅れて言葉を放った。


「楓なら、変なボロを出すこともないだろうし、いいと思うわよ」


 翼さんは、表に出ない泉の代わりにいろいろな場所に出張に出ているので疲れているのだろうか。この前の泉ちゃんの炎上が鎮火するきっかけを作ったドキュメンタリーの放送のときも留守にしていたので、俺は少し心配になった。

 

「私もいいと思うっすよ。楓さんが良ければですけど、大塚ちゃん一緒に、楓さんが作詞作曲した曲をデュエットするのもいいと思いますし」


 俺はその言葉に泉の返す言葉が分かった気がした。泉なら、きっとこう答える。


「ふふ、僕は面白くなるなら何でもいいよ……」



 そして、一週間ほどたってついに泉がVTuberデビューする日がやってきた。

 事務方を担っている翼さんと田所以外には3Dモデルも見せない徹底ぶりで今日の日を迎えている。

 俺、彩、早苗さん、大塚ちゃんはそれぞれ体の動きをトレースする機械を身に付けて、同じように機械を身に付けて待機している泉の方を見ている。


「それじゃ、公式チャンネルで配信始めるわよ」


 翼さんがそう声をかけると、俺たちはうなずく。翼さんは田所に開始の合図を送って、梓が音がでないように拍手する。


「今日もたくさんの方が配信を見てくれましたね!」


 チチちゃんこと、彩のロリボイスで配信は始まった。


「今日はV界隈でも、ネット界隈でも、もしかしたら一般人にも名前を知られている烏城ことうちの社長がまさかまさかのVTuberデビューするぜ! お前ら楽しみにしろよな!」


 俺こと美鈴咲がそう盛り上げると、お姉さんボイスの涙子おねえさんこと早苗さんも同調する。


「チチちゃんが前、配信で暴露したミニスカ烏城が3Dで実写化されるらしいということしか、我々も聞いてないので、本当に楽しみです」


「この後もしかしたら、私と歌うことも……」


「「しー!」」


 セーラちゃんこと大塚ちゃんが今日サプライズ的にやることをネタバレしそうになったので、俺たちはそう言って、口に指を当てる。

 大塚ちゃんはやべといった顔で、


「お前らなにも聞いてないよな!」


 そう言った。3Dキャラもやらかしたような顔をしているのは泉の作り込みだからだろうか。芸が細かい。

 チャンネルのリアルタイムコメントを見る限り、視聴者さんたちも色々察したようだが、優しくスルー――してなかった!!


『セーラちゃん、さらっとネタバレしてて草だワン』

『犬って時々、褒めてもらいたくて、突飛なことをしたりするよね。いや、今全く関係ない話なんだけどさ』


 俺が笑いをこらえながら、コメントを見ていると隣で彩がぷぷと小さく吹き出しているのが分かった。器用に口元のマイクをOFFにしているのが抜かりない。

 なお、泉に関してはカメラに写っていないことを良いことに、完全に笑っている。


 セーラちゃんは復帰後、なにかあるたびに視聴者からの愛のある犬イジりを受けることになっていたのだ。流石に大塚ちゃんと言えども視聴者にブチ切れることはないだろうと、俺は安心して大塚ちゃんの方を見ると、


「お前が、私をいじられキャラにしたのが悪い!」


 大塚ちゃんがそう叫びながら俺の方に突撃する様子を目に焼き付けることになった。


「そんな理不尽にゃ!」


 俺のそんなセリフと共に大塚ちゃんは俺をげしと踏みつける。

 俺が床の上から見上げて見たコメント欄には、


『烏城が登場する前に、伝説の神回が再現されてて草』

『語尾が【にゃ】なことに、ワンコロが切れている遠因を感じる』


 と、好き放題に書かれていた。コメント欄の流れるスピード的に、視聴者的には好ましい展開なんだろうと、俺はもはや無抵抗でそんなことを考える。


「えっと、社長的には放っておこうとのことなので、登場してもらいましょう」


 早苗さんがそう言うと、息を整えながら泉がカメラの画角上にやってきて、


「ふ、ふっ、ふふ、んッ、んッ」


 なんとも艶めかしい息遣いで笑って乱れた呼吸を整えて挨拶を行う。


「どうも、烏城です。色々あってハッカー・プログラマー・作曲家・社長兼、VTuberになることになりました」


 配信確認画面に写っている泉はオオカミ少女の銀髪ショートっ娘で、俺は思わず、


「可愛い」


 とつぶやいてしまった。

 視聴者受けもきっといいだろうと思ってコメント欄を見ると、


『烏城、吐息ASMR発売不可避!』

『ヘッドホンから聞こえた吐息で体ビクってなった!』

『販売はまだでしょうか?』


 どうしよう、海外でも使われる日本語に「HENTAI」があることの意味が分かってしまったかもしれない。

 ほとんど吐息の話しかしてないコメント欄を見て、配信画面をヘッドホンをつけながら確認している田所と梓が体をくねくねさせているのを見ると、日本の将来が真剣に心配になるけども。


……あとでアーカイブは確認しよう。


 俺はそう決心した。

実はこの小説、カクヨムでも投稿してまして、そちらのフォローが91人だったのが、カクヨム公式様からの「次元の狭間に輝くVTuber」4選に選ばれるという奇跡がありまして、一日で100人以上増えて現在のフォローが280人! ものすごい増え方ですね。

公式レビューの凄さです……!!

簡単なものでも私、とても喜びますので、ぜひぜひ感想、レビューなんかをもらえると嬉しいです。

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