番外編 大塚ちゃんは百合なのか。
温泉回です。
「モブ妹、旅館についたら、なにするんだ?」
大塚ちゃんが、車の中ではしゃぎ続けていたとこで、大塚ちゃんもそれに付き合っていた私もすっかり疲れが溜まって、旅館が待ち遠しくなっている今日このごろ、大人しくなっていた大塚ちゃんが私の方をチラリと見てそう聞いてきた。
「私は、お風呂に入って、夕ご飯までゆっくりしようかな」
私がそう答えると、大塚ちゃんは頷いて言った。
「じゃあ、私はゆっくりしてからお風呂に行く」
「うんうん、ゆっくりしてからお風呂に一緒に行こうか」
私が深くうなずきながらそう答えると。
「モブ妹はゆっくりしてからお風呂に行くんだな。私はお風呂に行ってからゆっくりするから、また夕飯の時に……」
ツンツンしている大塚ちゃんが可愛かったので私は思わず大塚ちゃんを抱きしめた。
「うが、やめ、やめろ!」
そんなわたしたちを見て、早苗さんが言った。
「家族風呂というか、貸し切りみたいっすから、女、3人仲良くお風呂に行きますかね」
それを聞いた大塚ちゃんは、
「私は、一人で入ろうとしたからな! コイツと一緒に入るとロクなことにならない気がする!」
私は聞こえないふりをしながら、すぐ前に見えてきた旅館の方を見て、
「よーし! 大塚ちゃんとお風呂に入るぞ!」
今の気持ちを叫んだ。
*
「いや~、こうやって、中学生と小学生に囲まれながら、お湯に浸かっていると、まるでお母さんのような気持ちになるっすね~」
喧嘩するからという理由で、早苗さんは私と大塚ちゃんの間という、役得なポジションを取ってそうしみじみとした様子で言った。
「早苗さん、どっちが小学生か、聞かせてもらうかんな!」
せっかくの温泉なのにそう言って、すぐ頭に血を上らせている大塚ちゃんを横目で見ながら、私は自分のメロンちゃんと、早苗さんのりんごちゃん。そして、大塚ちゃんのレモンちゃんを見て勝ち誇った笑みで言う。
「早苗さん、どちらかというと、私がお母さんで、あとは中学生、幼稚園児なのが正確ですよ!」
私がそういうと、早苗さんが、長時間の運転で目が疲れているのか、おでこをぴくぴくさせながら答える。
「梓さん、女同士の関わりで話さない方がいい話題というのがあるっすよ……」
「おい! モブ妹! お前、さらっと私を小学生から幼稚園児に格下げしたな!」
大塚ちゃんが自分が幼稚園児枠なのは自覚しているんだなあとか思っていると、肩を怒らせた大塚ちゃんが私の方ににじり寄ってきた。
「そんなに自信のあるモブ妹の発達具合は頭には及ばなかったようだな! その胸、潰して、頭に栄養行き渡らせてやる!」
涙目の大塚ちゃんはそう叫ぶと私のたわわを握りつぶしにかかる。
「あ! 私の大きくて形の良いたわわが大きくて形の崩れたたわわになっちゃう!」
私が胸を守るようにして立ちふさがると、大塚ちゃんは勢いよく水をかき分けて突っ込んでくる。
「潰しても凹まない自信があるなら揉ませろ! 栄養をその鶏頭まで送ってやる!」
私達がそうやってじゃれ合って遊んでいると、
「いや~はじめはペチャパイ言われてムカついたっすけど、百合を見れればそれはそれで良しっすね」
早苗さんが感慨深そうにそう言った。
その言葉に急いで私から離れようとする大塚ちゃんを見ながら。
私は、
大塚ちゃんが実は百合だということに確信を持った!!




