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39話 大塚ちゃん、隣人になる。

「ふむ、これは可能性が高いね」


 泉は再び髪を結び直して、男子モードに戻ると、解析結果の表示されたパソコン画面を前にそう言った。


「ということは、この防犯カメラのあった茨城県の取手市に向かうことになるんだけれどもね」


 泉はそう言うと、確認を取るように俺たちを見た。


「正直、カメラで確認できたからと言って、本人を見つけるのは至難の技だよ。なにしろここから先は殆ど、人力になるからね……。ということで、僕と姉さんは一週間ほど取手市に向かうけども、君たちはどうするかい?」


 泉は、俺、彩、田所に確認するように尋ねた。


「俺は行くよ」


 俺がそう言うと、彩と田所も。


「私も」


「もちろん、拙者も」


 そう、やる気の溢れた声で言った。


「では、今週は学校に行ってもらって来週一杯休みをとってくるようにお願いするよ」


 泉がそう言って説明したあと、俺たちは今日のところは解散することなった。



 帰り道、俺と彩は家が隣なので、一緒に帰ることになるのだが。


「なあ、彩は茨城県に行ったことあるのか?」


 そう尋ねると、


「そうね、ド・ヘンタイ」


 先程からなにか話しかけるたびに、彩は必ず語尾にそう付けて答えていた。


「あのな、彩。俺は決して泉に女装で添い寝するように頼んだりしてないからな」


 俺がそうすでに何回か説明していることをもう一度言うと。


「そう、よく分かったわ。ド・ヘンタイ」


 彩はそう答える。俺、泣いていいかな?


「じゃあ、私から一つ聞くわね」


 俺が無言になったからだろうか、彩が突然そんなことを言った。


「なんだ?」


 俺がそう聞き返すと彩は言った。


「泉さんが女装で寝てたことを考えるに、泉さんが傑の意識のあるうちに傑で遊んでないわけがないと思うのだけれど」


 彩は確認するように俺の目の前へと顔を近づけてきた。

 俺は顔が赤くなっていることを自覚しながら。


「思うのだけれど?」


 そう繰り返す。


「傑はちゃんと抵抗した?」


「いいえ」


 彩にほとんどゼロ距離でそう聞かれたものだから、俺はつい本当の事を言ってしまった。


 これは彩に色々言われそうだなと、かなり恐怖を感じながら、一度目を閉じてから覚悟を持って、彩の顔を見ると、彩がどうも別の方向を見たまま顔を真っ赤に染めていることに気がついた。


「あ! 彩ちゃんがお兄ちゃんと!」


 俺も釣られて同じ方向を見ると、そこには、いつの間に家の前についていたのか、玄関から俺たちを見ている俺の妹の梓と東京に住んでいるはずなのになぜか家にいる早苗さんと大塚ちゃんがいた。


「あずちゃんこれは別にそういうんじゃ」

 

 彩がそう必死に弁明するも。


「おー、お若いのはお盛んですなー」


 早苗さんのおやじとしか思えない言葉に、彩はちがうのにと、真っ赤な顔を俺に向けて言った。



 ずっと顔を染めたまま口の少なくなった彩を横に伴いながら俺は早苗さんたちと玄関の前で立ち話していた。


「いやー。もうこっちの事務所に所属するならいっそのこと引っ越した方がいいと思ったんすよね」


 早苗さんはそう笑いながら、家の横のもともと空き家だった一軒家を見た。


「私もお母さんに頼んで早苗さんと一緒に住むことにした」


 大塚ちゃんもそう言って説明してくる。


「これで、大塚ちゃんと一緒に学校に通えるし、いつでも一緒に遊べるね! ぐへへ」


 女の子がそんな声で笑ってはいけません。と言うのも変なので、俺はもう梓のことは諦めることにした。


「そうですか、これからよろしくおねがいします」


 俺はなんて言えばいいか少し迷ってからそういった。

 彩も落ち着きを取り戻したようで遅れて言った。


「私の家は傑の家の隣なので2つ隣です。よろしくです」


「よろしくっす~」


 早苗さんがそう返事をすると俺はせっかくという事で、一つ提案をした。


「よかったら、みんなで家でご飯にしましょうか?」


「いいっすね~」


「いいと思うわ」


 早苗さんと彩の了承が取れたことなので俺はみんなを家にあげた。


「ねえねえ、彩ちゃん。あんなに顔を近づけてさ。さっきお兄ちゃんとナニしてたの?」


 ……うちの妹の発音が少しおかしかった気がしたが、後が怖いので俺は少しの間、彩から離れておこうと、心に誓った。

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