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38話 これは、ラブコメです。

 初めて入る泉の仕事部屋の隣の部屋は畳の上に布団が敷いてあるだけのシンプルさでここがただ寝るためだけの部屋なのがよく分かった。


「お前のことだから、寝室もハイテクなものになってるのかと思ってたよ」


 俺がそう泉に言うと、泉は面白そうな顔で俺を見返す。


「ふふ、僕の寝室にパソコン環境を用意してみたまえ、すぐさま僕は作業を初めてしまうだろうよ。それを見越したのか姉には寝室に端末を持ち込むのを禁止されている」


 泉はそう言うと、押入れを指差して言った。


「姉の布団はそこにしまってある。自分で敷いて寝たまえよ」


 泉はそう言うと、さっさと自分の布団の中に包まってしまった。


「よっこらせっと」


 俺は押入れを開けると、翼さんが使うにしてはちょっと子供っぽい花柄のカバーの布団を取り出した。


「これでいいんだよな?」


 俺が尋ねると、泉は毛布から顔だけだしてこちらを見てうなずく。


「そうだよ」

 

 泉はそう言ってすぐ毛布の中に顔を入れ込んだ。泉は毛布の中で丸まって寝るタイプのようだった。

 腹を出して寝ているうちの妹とは真逆だった。


「俺も寝るか」


 部屋自体が寝るためだけに用意されたこともあって布団を泉の真横に敷いてもギリギリだった。俺は、布団を敷くとそのまま横になった。


 ……と、泉が再び毛布から顔をだした。布団の中でなにやらごそごそしていたかと思えば。


「お、お前……」


 泉がガチ恋泉になって出てきた。と、言ってもいつもの服装までの本格的なものではなく、頭の後ろで束ねていた髪を解いてショートカットにしただけなのだが、それが何となく、オフの時の女の子そのものな感じでなんとも。


「すーくん、一緒に寝よ」


 俺はうろたえながら、布団の逆側へと身を捩らせる。


「そんなに緊張しないでさ」


 泉はそう言って、ちょっとひんやりとした手を俺の毛布の中に入れ込んで、手を握ってきた。


「えい」


 泉はそう言うと、完全に俺の布団の中に体を入れ込むと、体を密着させる。


「……」


 俺はもう、抵抗を拒否することにした。



 私は翼さんに耳打ちをされて傑が翼さんの布団で寝ることをスルーすることに決めた。


「彩ちゃん、あの布団。私のものではあるけど、私は一度も使ったことがないの」


 そう翼さんは面白そうに言った。確かに、泊まるときに使うための布団と言っていて、使ったことがある布団とは一言も言ってなかった。

 翼さんはそれで面白がっているのだろう。そして、私もそれを面白がることをよく理解しているみたいだ。

 私は、口元に少し笑みを漏らしながら、傑を静観することにした。

 と、傑が私達がなにやらやり取りしていることに気づいたようで聞いてきた。


「何を話してるんです?」


「なんでもないわ。ヘンタイ」


 私は、そう言ってはぐらかした。


 傑たちが寝室に向かってから30分ほどたった頃だろうか、田所くんがしょんぼりしながら眺めていたディスプレイになにか表示されていることに気がついたようで声を上げた。


「見つかりましたぞ!」


 田所が歓喜に溢れた顔でそう言うと、翼さんは真剣そうな顔で確認するように横からディスプレイを見る。


「予測との一致率、90%超え。可能性は高いようね。楓にも確認を取りましょう」


 翼さんがそう言うと、私達は先程から仮眠を取り始めたばかりの二人を起こすために隣の部屋へと向かっていった。



 睡魔とはすごいもので俺も俺で遊んでいた泉もすぐに眠りに落ちてしまった。連日徹夜の泉は言わずもがな。一応は毎日睡眠時間5時間はとっている俺も自分では気づかぬうちに披露が溜まっていたようだった。

 と、まだ眠りに入ったのがすぐだったからか、扉を開ける音で俺は目を覚ました。

 目線だけで扉の方を見ると、面白そうに見ている翼さんと目を見開いてこちらを見ている彩が目に入った。


「どうしたんだ? ん、体が」


 と、視線を下げて横を見てみると、黒髪ショートのガチ恋泉が俺を抱き枕にするかのようにしがみついていた。俺は、そのうれしはずかしな状況よりも今にも彩の表情が驚きの顔から軽蔑の顔に変わりそうな状況に焦りを覚える。


「あのな、彩。これは俺から頼んだわけじゃないからな?」


 俺が疑問形でそう言うと、先程のちょっと冗談めかしたものとは違い。


「友達のお姉さんの布団に惹かれて寝に行っただけでは飽き足らず、まさかその男友達に女装で添い寝してもらって、あまつさえ抱き枕みたいに抱きついてもらうなんてね。ヘンタイ」


 俺が状況証拠に言い訳もできずに絶句していると、身を捩る感じを体に感じ、泉が起き出した。


「すーくん、女装で添い寝はもういいの?」


 泉は目を擦りながら、ちらりと俺を見てくる。同時に彩の俺を見る目がさらに険しいものになっていく。

 寝始めの方で随分と艶めかしい吐息を漏らしていたけど、もしかしてではなく、実は泉、ずっと起きていたのではないだろうか。

 彩が言った。


「このド・ヘンタイ」


 どうしよう、俺。ヘンタイからド・ヘンタイにレベルアップしちゃったよ。

 

 Q.またオレ何かやっちゃいました?

 A.いいえ、男友達の横で寝ていただけです。

サービスシーンの中のひとつの添い寝は読者様がラブコメに求める要素のひとつと言っても過言ではないでしょう。

この作品は王道ラブコメですからね。もちろん添い寝だってしちゃうわけです。

ラブコメ要素盛りだくさんになるわけですね。はい。

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