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29話 出発

「梓をよろしくお願いします」


 そう言って、お兄ちゃんは私を家から送り出した。

 別にもうすぐ高校生なんだからそんなに過保護にしなくてもいいのに、お兄ちゃんは海外で働いている両親の代わりを務めているつもりなのかいつも私を気にかける。

 それならもう少し私の頭の良さを認めてくれたって良いのにとは思うけど、感謝はしているので口には出さない。

 私がお兄ちゃんに手を降って家の敷地を出ると、ムスッとした顔の大塚ちゃんと泉姉弟が私を迎えてくれ、


「うっ」


 たと思ったら、大塚ちゃんから私のお腹へと、なにやら紙袋を押し付けられた。


「なに?」


 私が首をかしげると、大塚ちゃんは言う。


「モブ(まい)にプレゼントだ」


 紙袋を開けると、そこには魔法少女のプリントの施されたトートバックが入っていた。


「ふん、この前はよく私にあのTシャツを着せて街の中に放り出してくれたな、モブ妹。お前の小学生レベルのオツムにはそれがぴったりだろ」


 自分であの格好で帰ったんじゃないの。とちょっとだけ思ったけど、私はその言葉に感動した! これはまさしく。


「ツンデレだよ」


「ん?」


 大塚ちゃんは怪訝そうにそう聞き返す。つまり大塚ちゃんは、ツンデレが何か分かっていないのに其の実、ツンデレである、言うなれば、ピュアツンデレということなのだ!


「ありがとう! 大塚ちゃん!」


「え、あれ?」


 お礼を言われることになれてないのか大塚ちゃんはそう言って、抱きつく私にされるがままになっている。ここはお姉さんとして私もなにかお返ししなければと頭を働かせる。


「ねえ、翼さんたち、少し時間いい?」


 私は翼さんと楓さんの方を見てそう聞いた。


「ええ」


「もちろんいいよ」


 翼さんは怪訝そうに、泉さんはどこかホカホカしたような表情で了承の返事をする。

 すると、大塚ちゃんはなにかを感じたのか、私の両手から逃れようとする。


「離せ! モブ妹!」


「そんなに遠慮しなくてもいいのに~」

 

 私はそう言いながらたった今閉じた玄関の扉を開けると、もう戻ってきたのかといった顔をしているお兄ちゃんをスルーして大塚ちゃんを部屋へと連れて行く。


「この前の服、実は別の色もあるんだ!」


 私がそう言って大塚ちゃんに笑いかけると、大塚ちゃんは、照れているのか顔を真っ赤にして抵抗する。


「私が悪かったから、もう許して」


 私は大塚ちゃんを着替えさせると再び家から連れ出した。



 私は、大塚ちゃんとお揃いの魔法少女コーデで町中を歩いている。


「お揃いだね」


「どうして、どうしてこうなった」


 大塚ちゃんはなにやらブツブツ言っているけど、大塚ちゃんの可愛さを証明するようになにやら周りの人達が言っている。


「あの子可愛いね。お姉ちゃんもトートバックでお揃いにしてて優しそうね」


 今だって、20くらいの女の人二人組がそう言っているのが聞こえてきた。姉妹だと間違えられているけど、大塚ちゃんが可愛いというなによりの証明なのだ。


「ふふ」


 と、泉さんがどこか機嫌良さそうに歩いているのに気がついた。私は、どうしたのかと思って泉さんに近づいていく。


「ひッ」


 すると、泉さんは私に微かに聞こえるくらいの小さな声で悲鳴をあげると、私から距離をとった。

 これは……照れているんだな!

 そう思って私は大塚ちゃんから離れて泉さんの方へと向かう。背後からよしといった声が聞こえたような気がしたけどきっと幻聴だと思う。


「泉さん、そば好きなの?」


 そう言って、肩が触れるか触れないかギリギリのところまで近づいた。

 触れてしまって照れた泉さんが、前みたいに鼻血を出したら大変なので加減が大事なのである。


「もちろん、好き」


 泉さんはそう言ってうなずく。女装しているのが嘘みたいに可愛い。

 泉さんの姉の翼さんもどこか、微笑ましそうに、いや、なんだろうどこか嬉しそうに私達の様子を見守っている。

 そうか~弟に私みたいな可愛い女の子の友達ができれば嬉しいもんね!


「楽しみだね!」


「うん。とっても()()()()()()


 なにか、どこかのアニメで聞いたようなセリフを聞いた気がしたが、私達は蕎麦屋を目指して市街地を歩いていった。

なんと、ジャンル別日刊の63位に入ってました! まさか言った次の日に入るとは……。

いつも読んでくださり本当にありがとうございます!

評価ポイントは最新話まで読んでくれている人しかつけられないので、本当に励みになります。ありがとうございました。

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