28話 グッジョブ!
梓視点で書いてみました。
この回。読者さんが笑ってくれたら私の勝ちですよ。
私は、兄にアホの子だと思われているらしい。
でも、待ってほしい。私は精神年齢が幼いんじゃなくて、ただ、心が若いだけなのだ。
つまり、男子中学生のような純粋な気持ちを持っている純情可憐な女子中学生なだけなのである。
「大塚ちゃんッ マジ可愛いよ。ぐへへ」
そう……男子中学生のような純粋な気持ちを持っている純情可憐な。
「やめろー! これのどこがお友達なんだよ! このモブ! じゃないな。このアホ妹!」
私がもう着れなくなった小学生の時の服を大塚ちゃんに着せて遊んでいたら、Tシャツを頭から被りかけの状態で大塚ちゃんが切れた。
「いやー。可愛いからいいじゃんか! ほらほら」
私がそのままTシャツを下まで下げていくと、姿見に可愛い姿になった大塚ちゃんとそれを後ろから抱きかかえる状態になっている私が写った。
「ほら、可愛いじゃんか」
私が誇らしげに胸を張ると、大塚ちゃんはさらに怒鳴り散らした。
「よく見ろ! 魔法少女のデカデカしたプリントを! こんな服を着て喜ぶ中学生はいないぞ! しかも! 私は来年、高校生だ!」
そう言って、大塚ちゃんは全身を使ってバタバタと抗議の動きをした。
……欲しい物を買ってもらえない小学生みたいで可愛い。
「いや、これはあれだよ。ギャップ萌えだよ。いや、ギャップじゃないかな? ねえ? ギャップってどういう意味?」
自分でも言って分からなくなって直接本人に尋ねると。
「お前、馬鹿にしてるな! ねえ!? 馬鹿にしてるよね?」
大塚ちゃんは更に怒り始めた。
そうして、うるさくしていたからだろうか。ノックもされずに部屋のドアが開けられた。
そこには、ノブを握ってやっちまったという顔をしている彩ちゃんと、私のお兄ちゃん。そして、泉さんに翼さん。早苗さんまで立っていて。
「ぬあああああああああああ」
私、特に悪いことはなにもしてないはずなのに、大塚ちゃんが壊れた。
「おい、お前らなにしてるんだよ」
呆れた声のお兄ちゃんの言葉に私は、
「いや、私が着れなくなった服を大塚ちゃんにあげようと思ってさ。試着してもらってた」
私がそう言って、今度は先程とは正反対に静かになった大塚ちゃんを指差すと、
「ふッ」
お兄ちゃんが吹いた。そして、他の人もお兄ちゃんほど直接的でないにしろ。笑うのをこらえるような顔をしていた。あ、泉さんは完全に肩を揺らしてるかも。
「いや、うん。すごくお似合いだと思う」
お兄ちゃんがそう言うと。
「このモブ顔が! お前は私みたいに特徴すらないモブ顔なんだから、私のほうが上だかんな」
また大塚ちゃんが復活した。そして、お兄ちゃんの言葉に私はギャップの意味を思い出した。
「あ、そうか。ギャップじゃないよね。だってお似合いなんだもん」
私が納得して口に出すと、大塚ちゃんはそのままの服装のまま、部屋を飛び出して、早苗さんのもとへ向かう。
「もうやだよ! この家。魔境じゃん」
大塚ちゃんがそう言って、もう帰るようにせがむと。お兄ちゃんが私に思い出したように言った。
「お前、泉と翼さんと食事に行くことになったから」
「お兄ちゃんマジ?」
私がそう聞くと、お兄ちゃんは泉さんの方をちらりと見て、ニヤリと意地の悪い笑みを漏らす。
なにか、私がそういう扱いをされているようですごく心外なんですけども。
そんなことを思いながら、家をあとにしようとしている大塚ちゃんを見て私は思いつく。
「ねえ、大塚ちゃんも一緒に行かない?」
私がそう聞くと、大塚ちゃんは立ち止まる。
「ねえ、翼さん。どこ行くの?」
私がそう聞くと、翼さんは、
「本場の信州そばでもどう?」
そう言う。すると、先程までぷりぷりしていた大塚ちゃんが小さく言った。
「私も行く」
「じゃ、また今度ね!」
私がそう言うと、大塚ちゃんは素早く離れて。
「食べ物につられたわけじゃないからな。ちょっと興味がでただけだかんな」
大塚ちゃんはそう言い残すと、打ち合わせを終えた早苗さんとともに帰って行く。
食べ物に釣られるなんて可愛いなあ、もう。
そんなことを思いながら私は、もともと着ていた服を私の部屋においたまま、魔法少女のTシャツを着て家へと帰る大塚ちゃんを見送った。
そして、大塚ちゃんが家から出て玄関を閉めると、私は、床に転がって腹を抱えて笑う泉さんの背中を撫でることができた。
……大塚ちゃんグッジョブ。
なんか、評価ポイントラッシュが来てて私嬉しくて震えてます。本当にありがとうございます!
そのうちジャンル別日刊に載る日がくるかもですね(願望)笑




