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15話 匂い嗅いだら許さないから

 実際に犯人を懲らしめるために泉から招集を受けたのは東京から戻ってきて3日後の放課後だった。

 泉は、梓に苦手意識を持っているのか、俺と彩だけを呼び出すと話し合いの場として俺の家を指定した。


「それで、制服なんて何に使うのかしら?」


 俺の家のリビングで彩はそう言ってガチ恋泉に訊ねた。


「そりゃまあ、着るためですね」


 泉はそう言うと、彩がテーブルに置いた()()の制服のうちの一着を手に取る。


「おい、泉。なぜ女子の制服を二着用意させたんだ?」


 俺が嫌な予感を感じながらそう尋ねると、泉は当然のように言う。


「もちろん、すーくんに着てもらうためだよ?」


 そう言って、泉がもう一着の制服を俺に押し付けようとすると、彩が横からそれを奪い取った。


「そんなのだめよ!」


 ものすごい剣幕でそう言われたもんだから思わず身をすくませると泉がガチ恋泉のまま言う。


「これから犯人を懲らしめるために普段の日常を再現するんだから、一緒に行動する私達が彩さんの同級生に見られるようにした方がいいんじゃない?」


 そう、泉に言われると、彩はバツが悪そうに言う。


「でも、傑はだめ。これ、女の先輩から借りたものだし……」


「いや? 俺、女装するつもりないからね!?」


 俺が、心外だというように突っ込むと、泉が言う。


「私がお化粧すれば、少なくとも女の子に似たナニカにはなると思うんだけどな」


「いや、似たナニカってなんだよ……」


 俺が、そう突っ込むと、彩は言った。


「女装はともかくとしてこの制服はだめ」


 彩はそう言うと、スポーツバックの中からジャージを取り出した。


「女装に使うならこれにして、これは私のだから私が我慢すればそれでいいし」


 そう言って、彩は俺にジャージを押し付けてくる。

 ジャージを受け取ると、あの女の子のよくわからんがいい匂いがふんわりと漂ってくる。

 そんなことを思っていると、彩はキリッと目尻を上げて言った。


「匂い嗅いだら許さないから」


 俺は、そんなの無理だと思いながらも、彩の恐ろしい表情にしっかりとうなずいた。



 俺が、一人廊下でジャージに着替えると、少し遅れて風呂場の脱衣所から彩と同じ制服姿になって出てきた泉と合流して彩の待つリビングに戻った。

 ちなみに制服姿の泉というと、黒髪ショートが恐ろしく似合っており、彩も思わず声を上げるほどだった。


「こんな可愛くてハッカーなんてちょっと信じられないわ」


 彩の言葉に泉は答える。


「すーくんのお友達にそう言ってもらえてうれしいです。でもやっぱり着慣れてる彩さんはとっても可愛いですね」


「そう、そう言ってもらって嬉しいわ」


 彩はそう答えると、彩のジャージを着た俺を見る。


「身長は大体同じ位だから大丈夫そうね」


 彩は俺の頭から下まで見てそう言う。彩は170センチ近くあるモデル体型なので男子の俺でも彩のジャージはぴったりだった。


「ねえ、ジャージって男女兼用なんだろ? 別に女装しなくても同級生に見られるならこのままでいいだろ」


 俺がそう言うと、彩もその通りだと言うようにうなずく。


「そうね、男女とも同じ指定ジャージだしそれでいいと思うわ」


 彩がそう答えると、彩の死角にいる泉が残念そうに首を振るのに気がついた。

 いつもいつも遊ばれてたまるか、そう思って、ニヤリと勝ち誇るように泉に笑いかけると、彩が嫌そうな声音で言った。


「傑、なんでニヤけるのよ。私のジャージで変なこと考えないでよね」


 彩がそう言うと、泉はニヤリと俺に笑い返してきた。

 きっと、泉はここまで計算していたのだろう。

 俺は、泉には一生勝てないなと切実に思いながら、


「いや誓って変な気は起こさないから」


 そう彩に弁明した。

彼シャツ? いいえ、カノジャージです。

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