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121話 無垢な幼女の恐ろしさ

「な、ななじゅうおくえんなの~~~~~!!!!」


 はなちゃんがそう叫んだとき、泉を除く面々はみな一様に驚愕の表情を浮かべて、そのあらましを見ていた。


「パシャッ」


 と、そんなみんながみんなその様子に驚きをあらわにする中、エイヴェリーさんだけがそんな空気をなんとやら、カメラを持って、写真撮影に勤しんでいた。


「いや~将来の世界的な巨大企業の誕生の瞬間ともなれば価値ある写真だとおもいましたので!」


 エイヴェリーさんがそう言うと、彩が顔を染めながら言う。


「ちょ、今の写真はダメ! 私、口をあんぐり開けてるし…ダメッ!!」


 ダメって否定するような言葉なのにどこか魅力的だよね。とか俺が哲学的な考えを巡らせながら、そう言う彩の様子を見ていると、エイヴェリーさんはニッコリしながら言った。


「ほら、そんなにダメッとか言ってると、あなたに()()()()逃げ出したボーイ君がまた、逃げ出しちゃいますよ?」


 そんな邪な思考をしていたのにバチが当たったのかエイヴェリーさんの流れ弾が俺に着弾した。


「俺は、もうそんなこと吹っ切ったんだよ! もうほじくり返すな!!」


 俺がそう言って、叫ぶと、彩は俺の顔など見たくもないと言うように顔を背けると、顔を真っ赤にして怒り始めた。


「彩、情けない逃げ方してごめん。俺、これからも彩と、みんなと、メタガラスで頑張りたいんだ。もう一度チャンスをくれないか?」


 俺がそう、メタガラスを一方的に抜けてから初めて彩に話しかけると、彩はそっぽを向きながら言った。


「決めるのは私じゃない。みんなと、そして、私達を応援してくれるファンよ」


 彩はそう言うと、携帯電話を取り出すと、電話をかけた。


「まずは、ずっとずっと心配かけ続けたあの子達に電話したら?」


 と、なぜか、着信音が店の入口の方から聞こえてきた。


「えっ?」


 彩の疑問の声をかき消すように、貸し切りのはずのカフェの入口から店員の制止するような声が聞こえてくる。


「あ、あのお客様本日は貸し切りで……」


「うるせー!!」


「押し通るんだよ!!」


 その少女たちの声はここまで聞こえてきた。

 俺は、身の危険を感じて、店の奥の厨房へ引っ込もうとする。


「傑、あの子の怒りをちゃんと受け止めたら、私は許してあげる」


「あ、あやぁ?」


 俺は、厨房への扉を塞いだ幼馴染にそう呼びかけるも、後ろから、なんとも言えぬ覇気を感じて振り返った。


「やあ? 大塚ちゃん、なんとか2つの事務所のすれ違いも解消できて、やっとメタガラスに復帰できそうになったよ」


 俺は自分の声で少女を刺激しないように、今にも千切れそうな大荷物の固定紐のようなその少女たちを見る。


「も、もももも」


「桃?」


「モブ顔!! お前の桃尻、私が2つに引き裂いてやる!!」


 どうやら紐はちぎれてしまったようです……。


「い、いやっ、おしりは元々2つに割れてッ……!!!」


 俺は、少しは手加減してもらえると思って、美鈴咲の声でそう言うものの。


「そこは、お尻じゃなくて、うぎゃあえhづいえhfdんjsdcふぇ」


 俺は断末魔の叫びをあげた。



 玉を潰された俺が、床に蹲っていると、大塚ちゃんは息を荒げながら言った。


「なんで、私達に秘密にしてたんだよ!」


「ごめんっすよ。あやねに言ったら、傑くんのところに突撃しちゃうかもしれないって危惧したんすよ」


「それはッ! そうだけどさ!」


「それなら、私は関係ないんだよ!!」


 大塚ちゃんから少し遅れて来て、息を落ち着けながらそう叫ぶ梓に対して、彩が冷静に突っ込む。


「いや、あずちゃんこそ、絶対に突撃してると思う」


「そんなことないもん! あ、お兄ちゃん!!」


 と、床に蹲る俺を発見した梓が俺の方へ突撃してきた。

 

「おにいちゃあああああん!!」


「うげごxtゆおんfぇf」


 梓は、金玉潰しを食らった俺がテーブルにぶつかったために、床にこぼれていたはなちゃんのオレンジジュースに足を取られてすっ転んだ。そして、そのために梓が俺の鳩尾に衝撃を与えたときの音がこの声だった。


「彩ちゃん、流石に許してあげてもいいと私は思うっすよ」


 早苗さんが潰れたカエルを見たような同情に溢れた顔を俺に向けながら言った。


「ごめんね。私が決めたの。君たちには教えないって」


 と、泉がそう言うと、梓が叫ぶようにして言った。


「久々の女装泉さん、キタコレ!!」


「え、君、今なんて言ったの?」


 諸星さんがそう声をあげると、泉はくくくと笑うと、()()()()を始めた。


「いいかい? ネットの内容は簡単に信用してはいけない。だからといって現実の出来事が信用できるとは限らない」


 諸星さんと、美桜さん、そして美咲ちゃんが驚愕に目を見開くなか、その小さな悪魔は泉さんの足元までやってきていた。


「僕は、男だよ」


 泉はそう言いながら、下ろしていた髪をいつものショートポニーにする。


「あっ! はなちゃんだめ!!」


 その時、彩が咄嗟に止める声も間に合わず、その幼女は男にとってこの世で最も残酷で恐ろしい行為をした。


「見た目女の子なのに、なんか生えてるの~~~~~!!!!」 


 俺は二度と聞くことはないだろう本気の泉の悲鳴を聞いたかもしれない。


遅くなりました。

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