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12話 僕はとても性格が悪いんだ

 打ち合わせの様子は逐次送られてきたが、俺はそれについて返すことができなかった。

 泉は事情を汲み取ったのか、代わりにタブレットを受け取ると、梓に指示やアドバイスを行っている。 

 どうやら、梓と彩はそれぞれ別人ということで通すつもりなのか、お互いに指摘することはなく、表向きは穏やかに打ち合わせが行われている。


「まさか、君の知り合いが、コラボ相手のVtuberだったなんてね。世の中狭いものだよ」


 泉はそう言って、ちらりと、彩の方を見る。


「何があったかは知らないが、君にとって歓迎できない出来事なのは確かなようだね」


 泉は、そうやって話しかけてくれたが、俺はどう彩に言い訳するかで頭がいっぱいだった。なにしろ、ちょうど彩が家に遊びに来て梓と遊んでいる最中に俺は美鈴咲として配信を行っていたのだ。どうやっても言い訳が通じるはずがなかった。

 そんな風に頭を巡らせていると、ぼーっと見ていたタブレット端末に梓からのメッセージが送られてきたのに気がついた。


『とりあえず打ち合わせは終わりってことになったよ。涙子おねえさんも彩ちゃんもこれで帰るって』


 そのメッセージを受け取ったところで、梓たちがいる席を見ると、ちょうど涙子おねえさんが伝票を持ってレジへと向かっていた。その後ろをどこかぎこちなさそうな様子で梓と彩はついていく。


「今日はありがとうね。また頑張りましょう」


 涙子おねえさんはそう言って梓と彩に手を振りながら新宿の雑踏の中へと消えていく。

 それを見計らってから、彩は梓に詰め寄った。


「あずちゃん、これはどういうこと?」


 そもそも、俺の責任なので、俺は会計を泉に頼むと、二人のいるところへと向かっていく。


「久しぶりだな」


 俺は、なんと言えばいいか迷ってただそう言った。


「そういうことだったのね」


 彩は黒髪ロングヘアをふわりと翻してこちらを見る。ぷっくりとした二重のはずの目が、今はきつくつり上がって俺を射抜く。


「それで、替え玉まで用意してVtuberの中の人を暴いた気持ちはどんななの?」


「それは……」


 俺が答えに窮すると、タイミングを見計らったかのように会計を終えた泉が店からでてきた。


「すーくん、どうしたの?」


 泉がガチ恋泉になってやってきた。


「あなたは?」


 彩が冷たい冷気を発して泉を見る。


「私は、泉楓って言います。学校やV関係で傑くんと仲良くさせてもらってます。あ、ネットの世界では烏城ってよばれていたりしまーす」


「そう、そういうことなのね。二人は付き合っていると」


 その言葉に泉は否定とも肯定とも受け取れる笑みを浮かべる。

 俺はとっさに否定しようと声を上げようとするも背後に回った泉に思い切りつねられる。


「ふー」


 彩はなにかを落ち着けるようにそう息を吐くと言った。


「あなたが、性別を偽ってVの活動をしていることは黙っていてあげる。代わりに頼み事があるの」


「何をすればいいんだ?」


 頼み事を聞かざるおえない状況なので俺はそう尋ねた。


「私のところにくる不審メールをどうにかしてほしいの」


 彩はそう言うと、キリッと泉の方をみて言った。


「もちろん、あなたにも手伝ってもらうわ。というかあなたのほうが得意よね。こういうことは」


 彩がそう言うと、泉はにっこりと微笑むと言った。


「もちろん、すーくんのおともだちのためなら力になるよ」


 凍りついた雰囲気に俺も梓も泉の真実を言うこともできずにその日は帰路につくこととなった。

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