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118話 観測されてこそ結果は確定するのよ

「ねえ、美桜、今度さ久々にお茶でもどう?」


 私は、電話口にそう美桜に話しかけた。


「良いけど、突然どうしたの? でも、娘もいるから、短時間か、それか子供OKなところしかだめだよ?」


「それでいいっすよ。なんか、最近の近状はどうかなーって思っただけっすから、だって最後に会ったとき美桜……」


「ちょっと、ストップ! 早苗、それは私の黒歴史フォルダに保存された出来事になったんだから」


「まあ、これ以上は言わないっすよ。べつに私も、美桜をいじめるために電話かけたわけじゃないっすから。まあ、私が場所とか見繕っておくっすから、都合の良い日時教えてくれますか?」


「いいわよ、ただ、今すぐはちょっと分からないから、チャットでも良いかな?」


「良いっすよ。じゃあ、私も場所はチャットで送るっすね」


「分かった。じゃあまた今度ね、早苗」


「じゃあね。美桜」


 いや、親友として、ちょっとだけ罪悪感はあるっすよ。だけど私はそれが美桜のためになると信じて、親友を連れ出す約束をした。



「泉さん、美桜を誘い出すことは成功したっすよ。で、場所はどこにするんすか? 相当な修羅場になる気しかしないっすから、一般のカフェでやるというわけにもいかないと思うんっすよね」


 私が泉さんの冷房の効きすぎた部屋で、パソコンの画面から目を離さない泉さんにそう尋ねると、泉さんは、なにか操作を完了したのか、高そうな椅子をクルッと回転させて私に向き直った。


「ふふ、そこらへんは抜かりないよ。ねえ? 姉さん」


「楓、私はあなたの姉であって、召使いじゃないのよ?」


 翼さんは心底呆れたというようにため息をつくと、言った。


「これは私よりもエイヴェリーさんの手柄なんだけど、ブロンドテックがよく商談で使う場所が貸し切りできたわ」


「それは私の手柄というより、ママの手柄ですよ。まあ、ママも将来のお婿さんのためならなんでもしてくれますからね」


「だってさ、楓?」


「うるさい」


 泉さんははじめから、エイヴェリーさんに頼み事をするとそうなると分かっていたというように顔を真っ赤に染めながら、エイヴェリーさんと目を合わせないようにしていた。


「全く、泉さんも少しは人の心が分かるようになったみたいっすけど、まだ子供っすね」


 私が呆れたようにそう言うと、泉さんが涙目で私をキリッと睨みつけた。


「僕は、子供ではない。僕は、平均的な大人じゃ生涯稼ぎ出せない額を一年で稼いでる」


 そう云う所が子供なんすよと言おうかとも思ったが、泉さんを怒らせると、私のどんな情報が抜き取られるか分かったものじゃなかったので話題を変えた。


「じゃあ、これで、諸星も、ワビちゃんも、美桜も、傑くんも、この舞台に必要な人は揃ったわけっすね」


「まあ、そうだね。あとは、僕がどれだけ諸星の心をズタズタにして二度と僕に刃向かえなくするかだね」


「拙者、友達を取られたボッチの気持ちがよく分かりますぞ!! 拙者も同じボッチで、傑どのは数少ない友人でありますからなあ」


 静かに諸星にキレている泉をよそに田所くんはそんなことをのたまった。


「良いかい? 田所、僕は君みたいな非選択的ボッチなのではなくて選択的ボッチなのだよ。だから、君と僕を同じ土俵で語るのは間違っている」


 泉がそう言って、ニヤリと笑みを浮かべると、翼さんが呆れたように言った。


「それはあなたの主観でしょ。第三者から見たら、ボッチが数少ない友達を失ってキレている様は同じにしか見えないわ。いい? 観測されてこそ結果は確定するのよ」


 翼さんが普段の鬱憤を晴らすようにそこでニコリと泉さんに笑いかけると、泉さんは死んだ魚のような目をして、ここにいない誰かさんの悪口を言った。


「君が何も言わずにでてくから僕がこんな目にあう」


 私は、以前全く同じことをしたのは自分じゃないかと思ったが優しい目で泉さんを見るだけにとどめた。

遅くなりました。

必ず完結させますのでゆっくりお待ちいただけると嬉しいです。

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