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116話 デレてない

「ねえ、大塚ちゃん」


「なんだよ、モブ妹」


 私は、あのモブ顔がいなくなった二人の家の、モブ妹の部屋でモブ妹と一緒に、モブ顔を取り戻すための計画を練っていた。


「最近さ、彩ちゃんも早苗さんとも全然会えてなくない?」


「それは……そうだな」


 私は、モブ妹にそう尋ねられて最近の自分の身の回りの人間関係について思い出していた。私と一緒に暮らしている早苗さんとはもちろん毎日会っている。だけど、最近は一度家から出れば、もう帰ってくるまで会わないといったような日が続いていた。

 それに、彩ちゃんだって、一緒に傑を取り戻すと約束したにも関わらずなにやらいつも忙しそうで一緒に話す機会を設けられていない。

 そして、泉さんとその一味に関しては、私はもう完全に無視することにしていた。

 なにが「去るものは追わず」だよ。自分がピンチの時は、モブ顔にあんだけ助けれておいて。


「確かに、こうやって話し合っているのも私とモブ妹だけだもんな」


 私がそう言うと、モブ妹は不満そうにぶーと頬を膨らませた。


「ねえ、大塚ちゃん。私のことはさ、梓とか、あずちゃんとか呼んで欲しいな!」


「う、うるさい、今はそんなことよりも」


「泉さんに会いたいなあ」


「は?」


 私は思わずといったふうにそう返していた。


「あのな、あんな人情味のない奴のことなんかよりも、今は、お前の兄のことだろ。だって、アイツがいないと色々困るじゃんか。ほら」


 私がそう言うと、モブ妹は何が面白いのかニヤニヤと笑みを浮かべると言った。


「おー、恋バナかなー?」


「どこがだよ!!」


 私が思わずそう叫ぶと、モブ妹はなんだか下卑た笑みを浮かべて言う。


「だってさ、困るじゃんか。ほら……って言ってた時の表情なんかなんだかツンデレみたいでワタシ的にとってもポイント高かったんだよ!!」


「私は、ほらのあとに貯めなんて設けてない! そんな風に、デレた顔をしてない!!」


 私がそう叫ぶと、モブ妹は満足したように言う。


「ごちそうさまでした」


「だからーーー!!」


 私がそう叫ぶと、モブ妹は交換条件と言うように胸を張った。


「あずちゃんて言ってみなー?」


「そう呼んだら、もう変にからかうのをやめるのか?」


 私がそう言うと、モブ妹は、よく聞こえないとでも言うように耳に手を当てて、こちらにわざとらしく顔を向ける。


「……あずちゃん」


「んんーー??」


「あずちゃん! これで良いんだろ! これでもうアイツのことでからかうのは止めるんだろ!」


 私がそう叫ぶと、あずちゃんは満足したように頷くと、言った。


「口約束は約束じゃないって言うけど、今私はその口約束すらしてないし、頷いてもないよね」


 その開き直ったような言葉に私は、自分の中の何かが音を立ててキレる音が聞こえた。


「コノヤロー!!」


 私は、あずちゃんを後ろのベッドへと押し倒した。



 女の子の部屋で、二人の女の子がハアハアと荒々しい息を立てていた。


「ヒドイじゃんかあ、私、一言も約束なんてしてないって言ってないじゃんか、ただ、今現在の状況を述べただけであって」


「お前、私をからかうつもりしかなかったじゃんか」


 私がそう言うと、あずちゃんはそんなことは知らないというようにしらを切ると、別の話題というように、あるものを机の引き出しから出した。


「ここにあるのは何でしょう?」


 手に持っていたのは、数年前の携帯ゲーム機。


「ゲーム機なんて自慢気にどうしたんだよ」


 私がそう言うと、あずちゃんはふふんと鼻歌を鳴らすと、言った。


「これ、お兄ちゃんから借りてたやつ。だからもちろん、中のアカウントはお兄ちゃんのやつで……」


 あずちゃんはそこで尤もらしく言葉を止めると、じゃじゃーんと見せびらかすように、画面を見せてきた。


「これ、お兄ちゃんの現行機の所在位置だよ」


 それは、ここからそこまで遠くないアパートの場所を示していた。

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