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111話 呼び出し

「それで、傑がどうしたっていうんですか?」


 私は、泉さんに呼び出されて頭がおかしいんじゃないかと思うほど冷えた泉さんの作業部屋へとやってきていた。


「私も、流石にちょっと色々思うところがあるっすね」


 私の言葉に同調するように泉さんの部屋に呼び出された二人のうちのもう一人である早苗さんが声をあげた。


「まあ、君たちも彼が心の弱い……ヘタレなのはよく知っているだろう。珍しく勇気を持って声を上げたんだ。受け入れてあげるのが仲間だと僕は思うね。まあ、ヘタレなことには変わりないけどね」


「「そうね(っすね)」」


 私と早苗さんは泉さんの言葉ににべもなく頷く。

 

「全く、彩さんはなぜそんなヘタレな彼が好きになってしまったんでしょうね!!」


 と、私はあらぬところから突然口撃を受けた。泉さんの言葉を後ろでうなずきながら聞いていたエイヴェリーさんがそんなことをのたまってくれたのだ。


「エイヴェリーさんはなにかとんでもない誤解をしているようですね」


 私がそう冷静な口調に聞こえるように返すと、エイヴェリーさんはニヤニヤした様子で続けた。


「ははーん、これが日本の誇る文化ツンデレ……ですね!!」


 なにが嬉しいのか、ニヤニヤした笑みを浮かべるので、私は牽制の意味を込めて、エイヴェリーさんを睨みつける。


「Oh,美人の睨みってなんで怖いんでしょう。これではツンドラです」


 エイヴェリーさんが笑みを凍りつかせたような表情でそう返すので、私は、ずっと無言でやり取りを見守っていた田所くんの方を見る。


「私、怖くないよね?」


「拙者は……」


 おしゃべりな田所くんには珍しくそこで言葉を止めると、田所くんは救いを求めるように、部屋の端っこで見守るように佇む翼さんを見た。


「そこで、私に降るかなー。全く」


 翼さんはそこで言葉を止めると、私を見て、一言言った。


「彩ちゃん、ちょっと怖いからやめようね」


 私は自分の頬が朱色に染まるのを感じた。



「それで、話がそれたけれど、彼の本心が聞けたよ。メタガラスに戻りたいそうだ。僕は、()()許さないと答えた」

 

 泉さんの言葉にみんなはなにも異論はないと続きを促す。


「それでだね、今日、早苗さんと彩さんに来てもらったのは、諸星と諸星の元配偶者である緒方美桜との会合をセッティングしたくてね」


「一応、泉さんにも言ったと思うっすけど、彼女、別れるときに離婚届ごと諸星くんを突き飛ばすほど怒ってたんすよ?」


 早苗さんの言葉に泉さんはいつもの悪い笑みを浮かべると、さも当然のように言う。


「そんなの会場に来てさえもらえればどうにでもなるよ。法律に違反しないか、バレない限りにおいては、()()()()()()()()


 その堂々とした友達を売れという宣言に早苗さんは仕方ないというように笑うと、言う。


「絶交されたら恨むっすよ。泉さんはまだ未成年だから分からないかもしれないっすけど、大人になっても仲良くしてくれる友達って貴重なんすからね」


 早苗さんのその私にはまだあまり実感することのできない言葉に、泉さんはニヒルな笑みを浮かべると言った。


「早苗さん、僕に、友達の話をするのかい……?」


 その言葉に文字通りただでさえ寒い部屋の室温が一段と下がった気がした。


「あの……なんかすみませんっす」


「楓……あなた一応は友達いるでしょ。傑くんとかさ」


 翼さんの言葉に泉はさらに笑みを深くすると、答えた。


「逃げられたけどね」


「……ちゃんとまた戻ろうとしてるじゃない。それに梓ちゃ――」


「彼女は天敵だ」


「全く……」


 翼さんは救いようがないという風に手を上げると、話を軌道に戻すように言った。


「それで、会合の話に戻りましょうか」


「ふむ、それで緒方美桜と諸星との会合をセッティングするという話だね。緒方はなの方は早苗さんに任せるとして諸星の方はすでに彼に頼んであるよ」


 泉さんがそう言うと、早苗さんが疑問があるというように声を上げた。


「でも会合と傑くんを取り返すのとってなんの関係があるかが分からないっすよ」


「僕は、その会合で、諸星にVセカイの買収を提案しようと思っている」


 その泉さんの想像もしてなかった言葉に私たちは息を飲んだ。

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