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107話 事情

「探偵からの報告書がこれだ」


 そう泉さんが言うと、先程までスグルと遊園地に行ったときの写真が映されていたのが、PDFファイルに置き換わった。


「諸星は養育費を払うからりに月1度娘と会う機会を作っているようだね。ただ、()()()()()()()()()()()()()()()()()、どうもこの日は養育費が用意できずに空振りに終わったようだ。同じ場所にいながら会えなかった諸星の気持ちは如何程だっただろうね」


 そんな大人の生々しい話に私がなんとも返せずにいると、早苗さんが不思議そうな様子で言う。


「私が美桜から聞いた話とちょっと違うっすね」


 早苗さんの言葉に泉さんがキョトンとした様で聞き返した。

 というか、さらっと監視カメラの映像を見たと言っていたが、弁護士の知り合いの探偵にハックした映像を提供したのだろうか。私が遵法精神という言葉についてちょっとだけ考えを巡らせていると、続く泉さんの言葉に現実へ引き戻された。


「どういうことだい? 養育費が払えない。だから会えない以上に理由があるとはあまり思えないが」


 泉さんの最もな言葉に私も同意する。離婚してもお金で折り合いをつける。至極単純なことだと思った。


「それが、プライベートな話なんであんまり言うのもあれなんすけど、この間愚痴を聞いたときの話だと当日、司くんの方からお金がないからって一方的に会うことを取りやめたそうなんすよね」


「ふむ、確かにお金を出す側から断りを入れるのも変な話かもしれないね。しかも当日は現場まで来ているときた」


「もしかしたら、はなちゃんに見栄を張りたいのにお金がないから遠くから見守ることを選んだのかもしれないっすね。離婚理由もそんな感じな気もするっすしね」


「早苗さんは離婚理由を知っているのかい?」


 離婚理由について早苗さんがポロッとこぼしたので、泉さんはちょっとだけ眉を上げてそう聞いた。


「美桜の愚痴を聞いているときにあらましだけ聞いたんすよ。会社が危なくて、美桜や娘のはなちゃんに苦労をかけたくないって別れを切り出されたらしいっすよ。美桜本人としては苦しいときほど支えてあげたかったのにそんなことを言われてすごいショックだったらしいっす。別れを切り出された時なんて、無言で離婚届にサインするなり、紙ごと、司くんを張り倒して、家から追い出したらしいっすから」


 その話に私が文字通りの修羅場を想像していると、泉さんも同じように現場を想像したようで、ちょっとだけ小さくなった声で言葉をこぼした。


「ふふ、やはり情報を得るものこそが現代の勝者たりえるわけだね」


 泉さんが一人納得したようにそうひとりごちると、今度はみんなに明瞭に聞こえる声音で言う。


「もう一度探偵に相談することは必要になるが、解決のピースを見つけることができたと思うよ。結局、資本主義のこの世界では資本を持つものが勝つというところを僕が見せつけることになりそうだ」


 一体なにをしでかすつもりなのかは分からなかったが、泉さんの横に立つエイヴェリーさんが泉さんの言葉に頷いているのを見ると、天才的な技術者かつ世界的なIT企業のご令嬢のエイヴェリーさんの存在が泉さんの言葉の説得性を証明しているようでちょっとだけ怖くなった。

 

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