表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/122

10話 可愛すぎるんじゃないだろうか

 特急あずさに乗った俺達は4人がけのボックス席を3人で座って東京へと向かっていた。

 先程から、泉はずっと不機嫌そうに、ノートパソコンをいじっている。


「さっきはごめんね。泉さん」


 そんな雰囲気に耐えきれなかったのか、梓はちょっとしょんぼりした様子で泉にそう言った。


「僕は別に怒っていない」


 泉は窓側の俺の隣の席に座りながら、斜めまえに座っている梓を見た。


「本当? じゃなにかゲームしようよ」


 梓は嬉しそうにそう言って手提げバックからトランプを取り出す。そんな様子を泉はキョトンとした目で眺める。


「やったことないの?」


「やったことはないが、有名所のゲームなら一通りできるはずだよ」


「梓、やるなら記憶力が大事なゲームはやめておいたほうがいいぞ。絶対に勝てないから」


 泉にその手のゲームで勝負を挑むのは愚か者のすることだ。この天才には勝てる気がしない。


「いいだろう。じゃあババ抜きでもやろうか」


 泉はそう言って、トランプを梓から受け取ると、シャッフルしてすぐに配り始めた。



「強すぎる」


 すでに何ゲームか行っているが、そのすべてで泉は最適な手札がわかっているかのようにすぐに一番であがっていた。


「僕は、天才のようだからね」


 泉はそう言って、ニヒルに笑う。


「お兄ちゃん、さっきからずっと泉さんがトランプをシャッフルしていたよね?」


 梓はそう言って、疑いの目を泉に向ける。俺も口には出さなかったが、そうなんじゃないかと思っていた。


「流石に見破られたようだね」


 そう言って、泉は切ろうとしていたトランプの束を梓に返す。


「でも、どうやってインチキしたの? どう見ても普通にシャッフルして配ったようにしか見えなかったけど、このトランプに印があるわけでもなさそうだし」


 梓の言う通りだった。先程から泉のイカサマを見破ろうと、瞬きもせずに見ていたのに、泉は軽くトランプを確認したあと、高速にシャッフルをしてランダムに配っていたようにしか見えなかったのだ。


「僕ぐらいになるとトランプの札を好きな位置で配ることなんて容易なことさ」


 泉はそう言って、広角を持ち上げる。


「でも、泉さんトランプはやったことないって言ってたよね。一人でそんなこと練習してたんだねー」


 梓は泉の胸を抉るような威力のある指摘をした。


「そ、そんなこと」


 俺は泉が流石に可哀想だと思ったので泉に助け舟をだした。


「あ、そろそろ新宿に着きそうだ。荷物片付けちゃって」


 俺がそう言うと、泉は目をうるませながら、俺の顔を見てきた。可愛い。

 普通に戻れなくなりそうなので切実にやめてほしいとい思いながら、俺は天才の敵はおバカなのかもしれないという謎の確信を得たのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ