夢かと思ったら転生だった
なんだか騒がしい。気がする。
わやわやしているbgmをバックに、なんだか意識がはっきりしてきた。
(そういえば私轢かれなかったっけ?運良く生きれた系?)
とりあえず起き上がってみた。
『……ここどこ?』
どうみても病院ではない。木造のレトロでお洒落な部屋だった。
大混乱中に、1人の男が入って来た。そして私を見るなり、目をまん丸くして叫んだ。
「メイナちゃんが起きたーーーーー!!!!!!」
ルークだった。今しがた叫んだ男。長年推し続けた男、ルークだった。
(夢だな。)
もう割り切った。
1人で悟りを開いていると、ぞろぞろと人が入ってきた。
物知りのライアンに、俺様なエイダン。マイペースなノア、寒がりのディラン、シャイさんと不思議さんの兄弟のレオ・リオまで。
あのゲームのメンツである。
(夢だな。)
再認識した。
夢でならいつも会ってるので驚くことも何にもない。
ただただその国宝級顔面を拝むだけだ。
「熱下がったかなー??」
ルークが心配そうに近づいてきた。
そして私のおでこに手を当ててきた。
尊死。夢とはわかっているがこれは尊死案件。
ただいま推しと至近距離。オタクとしてすべきことは一つ。
私は思いっきりルークに抱きついた。そして思いっきり匂いを嗅いだ。
「わ。ちょっと、メイナちゃん?」
困っている。非常に申し訳ないが、ずっと我慢してきたんだ。夢の中でくらい嗅がせてくれ!
と思いつつ匂いを堪能していたら、上から拳骨が降ってきた。
『いった!?!!!!!』
眉を顰めて立っていたのは、エイダン。
ゲームで言うと、主人公の幼馴染みポジである。
「ルークが困ってるだろうが。」
引き剥がされた。
「な、何はともあれ。メイナちゃんが回復したみたいでよかった。」
ルークは言うが、
『回復?なんのこと?』
私にはちんぷんかんぷんである。
「お前、覚えてないのかよ。お前ん家が燃えて、行く場所がなくなったって言うから、
この俺様が仕方なくこの家に連れてきてやったんだよ。そしたらどうした。
この遺影に入った瞬間足滑らせてこけて頭打って丸一日寝てたんだよ。覚えてないのか?」
覚えてるもなにも…夢だし…
なんとなく反論しようとした時、後頭部に痛みが走った。
エイダンに殴られたとことは違う。
そういえば、何かがおかしい。
そうだ。鮮明さが、夢と全然違うんだ。
おまけにさっき交通事故にあったときてる。
(あ、これ、転生したな。)
悟った。
じゃあ私がヒロイン!?と喜びに満ちたのも束の間。
先程の醜態を思い出した。
居た堪れなすぎる。なんてことを…
後悔の真っ最中にまたもや痛みが来た。
さっきとは比べ物にならない痛みである。
みんながわやわやしているのをbgmに、私の意識は遠のいていった__。