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9/14

ヤンデレアイドル

暑さヤバすぎじゃないっすかね……

家に帰った僕は二枚のチケットを渋い顔で眺める。


【貴女は私の彦星様】

約一か月先の7月7日に公開予定の映画。

七夕の日に出会った少女達の想いが交差する……所謂同性愛を題材にした作品だ。


主役を演じるのは人気アイドルの小鳥遊 亜美(たかなし あみ)と女優の双葉 由佳(ふたば ゆうか)


どちらもブレイク真っ最中、そんな二人が織りなす百合物語という事もあってかなり注目を浴びている。



実際に僕も初報が公開された際は是非見てみたいと思った。

だからこそこの試写会入場券は本来願ってもない贈り物だ。


うん、本来は喜ぶべき物なんだけど……



声に出してタイミングの悪さを噛み締める。

「ごめん谷本さん……もう見たことあるんだ」



僕は既にこの作品を視聴済みなのだ。


仕方ない。これをくれた谷本さんはそんな事を予測できる筈もないのだから。

さっきも言った通り通常公開はまだ一月も先だ。

特殊なコネクションでも無ければ一般人がお目にかかる事はまず出来ない。


僕に業界人の関係者が居るなどと彼女は微塵も思っていなかったのだろう。


だが生憎居たんだ。何なら関係者どころかすぐ近くに住んでいる。


どんな人物かと言うのは……今朝の千佳との会話を思い出して欲しい。


『あと、ヤンデレアイドルと例の双子は?あいつらには変な事されてないの?』

『大丈夫。小鳥遊さんは仕事が忙しいみたいで…あの二人も最近は大人しいし』



もう分かっただろう。(ヤンデレ)アイドル。

映画の主演を務める今話題の美少女、小鳥遊亜美と僕はご近所さん同士だったのだ。



と言っても、ただのご近所さんじゃないんだけどね。


小鳥遊さんも理由があって僕の素性を知っている。

そして、残念なことにそのまま僕に惚れてしまったのだ。


百歩譲ってそれが普通の恋愛感情ならまだ良かったんだけど……



話は約3週間ほど前に遡る。

彼女の家に煮物のおすそ分けをした際に軽い近況報告をしていた時の事だ。


「そう言えば私が主演務めた映画、今度関係者を集めて上映会やるらしいの。良太君も来るよね?」

当然のように言われるが意味が分からず、ありのままの感想を返す。

「え?いや僕関係者じゃないけど……」



その一言を発した瞬間、彼女の青色の瞳から瞬く間に光が消えた。


「関係者だよね?ご近所さんだよね?恋人同士だよね?おしどり夫婦だよね?」

恐ろしい剣幕でにじり寄ってくる小鳥遊さん。

僕は的確に地雷を踏み抜いてしまったのだ。



「ご近所はさておき夫婦って…ちょっと話が飛躍しすぎじゃ……うわっ!?」


曖昧な言葉で濁そうとするも全力の抱擁で遮られる。


「た、小鳥遊さん…離して……!」

「飛躍してないよ?だってずっと昔から好き同士だったよね?私と良太君は結ばれる運命だもんね?嘘じゃないんだよね?愛してくれてるんだもんね?」



言動や行動のみを抜き出すなら折鶴さんや姉さんと大差は無いのかもしれない。

急に夫婦だの言い出したり抱き着いたりとかね。


でも、小鳥遊さんの愛は二人と比べてもかなり異質で……歪なんだ。

彼女を一言で表すのなら正にヤンデレ。

断ったら最後。どんな事をされるのか想像できない、したくもない。


言われるがまま僕は関係者に交じって上映会に参加した。


映画そのものは非常に素晴らしい出来栄えだった。

悩める思春期の少女たちの苦悩や葛藤が非常に丁寧かつ美しく描かれている。

更に衝撃の結末……終始飽きないように練られた構成だ。




しかしメインの結末を知ってしまっていては二度目を見ても初回程盛り上がれる気はしない。

そこをどうするかというのが僕の悩みである。


「うーん」

いくら考えても打開策は出そうにない。さすがの僕でも記憶消去とかは出来ないし。


正直どうしようもないが……せっかくの貰い物を無碍にするのも忍びない話である。


何とか思考を極力プラス方向に傾けていく。


結末を知ってからだと序盤の見え方はかなり違ってくる筈だ。

それにひょっとしたら一回目じゃ気付けなかった発見に出会えるかもしれない。


「二回目だからこそ出来る楽しみ方もあるよね」

自分に言い聞かせるように頷く。



よし。使わせてもらうのは決定として、次に考えるべき点は……


「誰と一緒に見に行くか……だな」

今回はヤンデレアイドルの説明回

あくまでまだ説明の段階です、本格的な登場時期は……お楽しみという事で


小鳥遊さんとの出会いのきっかけはいずれじっくり書かせてもらいまする

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