プラモデル
「僕たち友達じゃ無かったのかな……」
教室にて気落ちした僕は椅子に腰かけながらぼうっと天井を見上げる。
あの後千佳からは
「ごめん。本当にそういう意味じゃないから!言葉の綾ってやつだから!」
と両手を合わせて謝られたけど真っ向からは受け止められない。
勿論本当かもしれないけど、気を遣われたと言う可能性も全然否定は出来ないんだ。
「千佳はあれ以上は何も説明してくれないし……どうしたらいいんだ?」
八方ふさがりの現状に頭を抱える。
唯一気兼ねなく話せる幼馴染であり親友と断言した途端にこれだ。
フラグ回収とか狙ってやってるんじゃないからね?
と、そんな悩みを抱えていた矢先の事だった。
「ふふふ、誰でしょうか?」
視界が突如謎の手によって塞がれる。
僕はその出来事に少しの驚きとどこか懐かしさを覚えていた。
小さい頃幾度となくやった遊びだ。
視覚を塞いで後ろの相手が誰かを考えるというもの。
僕は十数秒間を置いて正体を当てて見せる。
「折鶴さんでしょ?」
目の前に光が取り戻されたと同時に満面の笑みを浮かべた折鶴さんが映り込む。
……いや何やってんの?
「さすが良太様……これが愛の為せる業なのですね」
「いや、普通に消去法だけど」
また勝手に感動されてるんだけど、別に特別な方法を使った訳じゃない。
頼みごとを抜きに僕に親しく接してくる人間なんてかなり限られているんだ。
それこそ折鶴さんくらいしか……
と言いたいところだけど残念ながら他にも数人は居るな。
でも同級生に敬語を使うのなんてお嬢様くらいだし、そもそも声で分かる。
じゃあ何で十秒程考え込んでたのかと言うと、彼女が休み時間に話しかけてくるのが珍しいからだ。
と言うのも、折鶴さんは基本的に人が居る場所では僕に話しかけてこない。
何故なら僕の目立ちなくないという意思を積極的に汲み取ってるから。
昨日も放課後になって話しかけてきただろう?
好意はともかく、この配慮自体は非常に助かっていた。
しかし何故今日は普通に接してきたんだろうか?
「どうしたの?何かあった?」
自然に考えれば何か用件があって来たんだと思う。
……例えばまたあのぬいぐるみに異変が起きたとか?
折鶴さんは悲し気な表情を浮かべる。
「いえ、その…どこか浮かない顔をしていらっしゃったので」
「あぁ……」
どうやら他人から見ても明らかに不自然なレベルで落ち込んでいたようだ。
余計な心配をかけてしまった。
適当な言い訳で濁しておこう。
千佳との問題には巻き込みたくはない。
周りに聞こえないように互いに小声になりながら本題に入る。
「その…プラモデル作りを頼まれたんだけどね」
「プラモデル……ですか?」
「うん。それでニッパーとかが必要らしいけど、家に無いんだ」
言い訳ではあるけど嘘じゃない。
プラモデル作りを頼まれたのは事実だし道具が無いのも本当だ。
だからこそ放課後は駅前の模型屋で色々見ていこうと思ってた。
悩みはしてないが、嘘じゃない以上そう簡単に見破れはしないだろう。
咄嗟に行ったにしては中々に上等な言い訳じゃないだろうか。
しかし僕の目論見は外れてしまう。
いきなり折鶴さんはそれだと言うように両手をパンと叩く。
「でしたらお任せください!私の家にはそういった道具も一通り揃っておりますので!」
「え」
「学校が終わったら早速行きましょう!」
しまった……そう来るとは。
「待って折鶴さん、道具は自分でやるから」
と忠告してみるものの向こうはとうに聞く耳を持っていない。
「ふふふ……お父様に連絡しなくては。生涯を共に添い遂げる殿方がついに挨拶に来ると」
「誤解を生むから止めて!」