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良太からのお誘い

今回は丸々千佳視点のお話になります

着信音に気付いて携帯を手に取った私は画面に浮かぶ名前を見て手を震わせる。

【金本 良太】


「……良太」

こんな夜に電話を掛けてくるなんて珍しい。


今朝の一件以来変な距離感が開いてしまった。

友達なの?っていう素直な一言が余計な誤解を生んでしまうとは……


弁明こそしたけど、それでも向こうはまだ気にしてるんだろうな。


「何であんな事言っちゃったかなぁ」


俯きながら自問自答を行う。

いつも頑張ってる良太を助けてあげたかったのに、いつの間にか余計な心配をさせてしまっていた。


「……って私のバカ!それはともかくとして電話には出なよ!失礼だっての!」

あまりの間抜けさに自分で突っ込んでしまう。

慌てて着信ボタンを押して応答を図る。


彼の声が鼓膜に伝わった瞬間心臓が高鳴るのが分かった。

「あ、もしもし千佳?ごめんね夜遅くに」

「んん……別にまだ21時頃だし大丈夫よ。何かあったの?」



どもらないように事前に咳払いをしておきつつ会話を行う。

表面上は平静を装えては居るけど、内心はぐちゃぐちゃだ。


だって……声が、良太の声が耳元で聞こえるんだよ?

好きな人が近くに居るような錯覚を受けて動揺しない方がおかしい。


でも動揺を態度に出して悟られたらダメ。

あくまで私はまだ……良太の幼馴染なんだから。



それから良太は私に電話するまでのいきさつを丁寧に教えてくれた。

まとめるとこんな感じ。


谷本ちゃんにお礼として今話題になってる七夕映画の試写会チケットを二枚も貰った。


本来は姉と一緒に行くように勧められたけど怜奈ちゃんは相変わらず外に出たがらない。


代わりにポンコツお嬢様を誘ってみたけどまた断られて、最終的に私しか誘う相手が居ないと。



正直言いたいことは幾つかある。


まず何で1番に誘ってくれなかったの?

これじゃあまるで私が滑り止めみたいな扱いじゃない。


頭を抱える。

今朝の事情もあるんだろうけど、3番目という事実は揺るがない。

……私って、良太にとっては折鶴さんより優先順位下なのかな。


勿論【言いたい】ってだけで本当に口に出したりはしない。

だってその事を責める資格なんて無いもん。恋人でもあるまいし。



それともう一つ、映画の主演が亜美だと言う事。

あいつが隙あらば良太にくっついてる様は嫌って言うほど目にしてきた。

おまけに私に対しては度々虫けらでも見るような視線を浴びせてくるし……



そんなあいつが他の人間と恋愛?ましてや百合?

いやないない。あり得ないから。


役と現実を混同しちゃうのはダメなんだろうけど、それでも違和感しかない。

これじゃどう足掻いても自然に映画は楽しめなさそうだ。




「だ……ダメかな?」

考え込んでいると心配そうな良太の声が聞こえてくる。

慌てて通話時間を確認すると、既に10分を過ぎている。


心配されて当然。3分以上は無言になってしまっていた筈だ。

「ごめん!ちょっと悩んでてさ」

「ああ、全然大丈夫だけど……もう決まった?」


とにかく結論から話すべきだろう。

あれこれ言ったけど質問の答え自体は初めから決まっていたんだから。


大きく息を吸って、その二文字を発する。


「行く」


「ほ、本当!?ありがとう千佳!」

「ぅぐっ!」


子犬の様に喜ぶ良太の声に内に潜む母性本能がくすぐられる。

たまらず呻き声を上げてしまった。

「うぐって……大丈夫?どこかぶつけたりした?」

「な、何でもないわよ!ちょっと変な咳が出ちゃっただけ!」



色々不満は言わせてもらったけど……断れるわけがない。

だって良太が誘ってくれたんだよ?


しかも一緒に映画って……デートだよね?これもう完全にデートだよね?

嬉しさのあまり足をバタバタと忙しなく動かしてしまう。


例え3番目だろうと……どんなに主演がいけ好かない奴だろうと……


良太がデートに誘ってくれる。その事実だけで私には充分だった。



「し、仕方ないわね。友達が少ないあんたに免じて付き合ってあげるわよ」


「本当にありがとう。それで集合場所なんだけど、日曜の11時にいつもの駅前で大丈夫?」


「OK。雨が降ろうと槍が降ろうと絶対に向かうわ」


「いやそこまでの覚悟はいらないけど……」

千佳はヒロインの中ではちょっと一癖ある感じにしました。

完全にダメ男好きになるタイプですね


それと本編とは別にキャラクター説明的なのを近いうちに書こうと思います


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