緋桜 (2)
「うおりゃあああっっっ‼」
日本の魔法使いの女の子と、ボクの「気弾」を合せて十発近く、それでようやく、白い強化服の「防御魔法」を打ち破れた。
続いて、ようやくボクの「気弾」が効いてくれて、相手の体は麻痺し……そこに日本の魔法使いの女の子が「気」を乗せたハンマーでブッ叩いた。
白い強化服の胸の装甲が大きく凹む。「気」の効果か、物理的なダメージかはともかく、白い強化服の片方は、ようやく倒れてくれた。
「クソ、何が『白き騎士達』だよ……。『モンティ・パイソン&ホーリー・グレイル』の黒騎士じゃないか、これじゃ……」
孫悟空のヘルメットの人が「もうやだ」って感じの口調でそう言った。
「なんなんすか、それ?」
「知らないの?」
孫悟空のヘルメットの人と、白い狼男の足下には……両手両足を失なったのに……血を撒き散らしながら、まだ動き続けてる白い強化服の兵士。
どうやら、この白い強化服のヤツらは、常に2人1組で行動してるらしい。
その時、ボクはある事に気付いた。
「あの……その刀……」
「えっ?」
孫悟空のヘルメットの人は……自分が持ってる刀と、ボクの山刀を見比べる。
材質は違う……。刃は、ボクのが普通の鉄で……孫悟空のヘルメットの人のが妙な虹色の光沢が有る金属。柄は、ボクのが藤を巻き付けた木製で、孫悟空のヘルメットの人のが強化プラスチックらしい素材。
でも……。
「あれ? 良く見りゃ形が似てるような……」
日本の魔法使いの女の子がそう言った。
「いや……僕も良く知らないんだよ……この刀の由来は……。僕の師匠の……そのまた親類の形見をモデルに作ったモノらしいんだけど……」
「その師匠って……?」
「今月の初めに死んだ」
「どう云う人だったの? 何で、その人が、ボクの一族に先祖代々伝わってるのと似た刀を持ってんの?」
「台湾から来たって言ってたよね……」
「うん」
「僕の師匠……第2次朝鮮戦争の頃に脱北した旧・北朝鮮の元特殊部隊員でさ……」
「えぇっ? ちょ……ちょっと待って……。何で、そんな所に……ボク達の一族のと似た刀が有ったの?」
「それが……」
けど、その時……。
「な……なんだ、ありゃ?」
「羅刹女が言ってただろ。こいつらとの戦いに勝てる方法は……皆殺しにするか……司令塔を叩くしか無いって。『靖国神社』の連中は……空に居るのが司令塔だと判断したんだろ」
そこら中に有る神道風の「祠」から無数の「死霊」が現われ天に昇っていく……けど……。
「まさか……これが……護国軍鬼・零号鬼の狙いだったのか……?」
町のあちこちに現われた「死霊の柱」。けど……それらは、突然、崩れ……そして……死霊達は町のある一点に向っていった。
違う……やがて……死霊達は……もう一箇所にも集ってゆき……更に……。
「何で……」
「まだ……日の出は何時間も先だよな……でも……あれは……」
更に町の中心部らしき場所に……巨大な2種類の霊力の柱が出現した。
片方は死霊の群……そして、もう片方は夜明けの空のような鮮やかな赤色の……「太陽」の霊力だった。
その2つの霊力の柱も、更に2つづつに分れて……町の2つの地点を目指していた。
「おい、ちょっと待て、どう云う事だ?」
その時、日本の魔法使いの女の子が叫んだ。




