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高木 瀾(らん) (2)

 謎の音は、1〜2分おきに散発的に響いていた。

 何かが砕けるような音が何回も響き……一端途絶えた後、1〜2分後にまた発生し……。

 時間と共に、音の発生源は近くなっていく。

「『国防戦機・特号機』の位置と音の発生源の方向は記録してるか?」

 私は、後方支援要員に連絡した。

「ビンゴ。音の発生源は、常に、『国防戦機・特号機』とみんなを結ぶ直線上のどこか」

 返事をしたのは久保山(ゆかり)。私の元彼女(カノ)で、今村の彼女(カノ)だ。

「分かれた方がいいな……」

「えっ? どう云う事だ?」

 そう聞いたのは関口。

「私だけと、ルチアと『副店長』、それと残りの3チームに分れて行動する」

「なるほどね……あの音は……遠くから誰かがあたし達を攻撃してる……と」

「ただし、今の所は、射線上の建造物に阻まれてるみたいだが……」

「ちょっと待て、何が……どうなって」

「私達が居る大体の距離と方向が判るヤツが、私達を銃撃してる。ただし、私達を目視出来てる訳じゃないので、途中に有るビルなんかの障害物で弾が阻まれてるみたいだ」

「いや、そいつが誰だか、判んないが、何で私達の居場所を知ってるんだ? しかも、お前の話だと、私達が見えてる訳じゃないらしいのに……」

「多分、そいつは、あたし達と同じ力を持ってる。互いの居場所は何となくだけど判る」

「えっ?」

「『国防戦機・特号機』の操縦者も……『神の紛物(まがいもの)』だ。他の『神』や『神の紛物(まがいもの)』の位置を有る程度は特定出来る」

「えっと……よく判んないけど……」

 その時、さっきから何度も続いている音が、また聞こえた。

 これまでに無いほど近くから……。

 そして、三百mほど先の高層マンションの部屋から、次々と灯りが消え……そして……光る何かが何個も飛び出した。

 灯りが消えたのは、多分、マンションが遠くから何者かに銃撃されたから……。

 光るものは……何発かに一発混っている曳光弾。

「もう……この『島』に安全な場所は無いのか……」

「ああ……『国防戦機・特号機』を何とかしない限り……この『島』は戦場も同じだ……」

「とんだ事になったな……」

「頼みが有る……。お前たちのチームが戦いに巻き込まれた人達を助けてくれ……全員は無理だろうが……1人でも多くを」

 私は関口にそう言った。

「え? 何で、私達?」

「私は……この『鎧』と同じ力で動くヤツを相手にする事になる。多分、巻き込まれた一般人を助ける余裕は無い。それに、この『鎧』を着装している間は、通常の霊的存在を認識出来ない。一般人がその手のモノに襲われていた場合、私では逆に対処が困難だ」

「そう云う事か……。判った。じゃあ、そっちも気を付けてな」

 理由は……もう1つ有る。

 どうやら私は……人生のどこかの時点で、大きな間違いをしてしまったらしい。

 私は……誰かを護る者になろうとしてきた筈なのに……今の私は……誰かを倒す事……自分だけが生き残る事の方が得意になってしまった……らしい。

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