緋桜 (2)
「多分……みんなが居るのは……この辺り」
ボクは、地下鉄で助けてくれたおね〜さんと眼鏡の女の子、そして、誰だか知らないもう1人の女の子と共に電動バイクで「秋葉原」までやって来た。
もちろん、本当の「秋葉原」じゃなくて、この人工の島に作られた「かつての秋葉原」に似せて作られた町。
「ねぇ……あれ……何?」
そこに居たのは……。
「そ……そんな……。あれは……」
多分、ボク以上に真っ青な顔になってる眼鏡の女の子が、そう言った……。どうやら、あれが何か知ってるらしい。
「何?」
「何?」
おね〜さんと知らない女の子が、ほぼ同時に怪訝そうな顔をする。
ちょっと待って……あれが見えてないのか?
変だよ。絶対に変。
「見え」なくても明らかにマズい「気配」ぐらいは感じる筈なのに……。
「おい、何しに来た?」
そう声をかけたのは……その場に居た、白い狼男が1人に、作業用強化服が2人に、京劇の孫悟空みたいなペイントをしたフルヘルメットを被ったのが1人と云う……何が何だか良く判んない集団の中の、作業用強化服の片方。
声からすると二〇代か三〇代の女の人。
「いや……この眼鏡っ子ちゃんが、仲間が心配だって……」
「あたしは、家がこの辺りなんで……」
「連れて来た2人は病み上がりじゃなかったっけ……? 何考えてる?」
「いや、ちょっと待て、その眼鏡の奴と変なパーカーの奴、私の同業みたいだ……」
今度は作業用強化服のもう1人。声からすると……ボクより少し齢上ぐらいの女の子。
強化服には馬鹿っぽいファイアーペイントがされていて、片手には……大型ハンマー……あれ?
強化服自体が「気配を隠す」効果が有るっぽい呪具。
ハンマーも「気」を集めたり貯めたりする効果が有るみたいだ……。
「何で判る?」
「え〜っと……『気』で……」
「『気』?」
「何って説明すればいいか……私の同業は『気』の量だけじゃなくて……感じも違う……」
「格闘技マニアの中には、選手の筋肉の付き方見れば、組み技系か打撃系か判るヤツが居るみたいなモノ?」
「……ええっと……多分、そう云う感じっす」
「手伝ってもらうか?」
「まぁ、私1人じゃ無理だから……」
「あの……手伝うって、あれを封じ込めたりとか、追い返したりとか……」
ボクは、少し先で暴れまくってる悪霊の群を指差した。
「そう」
「無理、無理、無理、無理、無理……」
「そうです、あれは……『野蛮なるモノ』と言われてる……」
眼鏡の子がそう言った。
「何か、知ってるのか?」
そう聞いたのは、大人の方の作業用強化服の人。
その時、何だか良く判らない悪霊の群の中から……。
ど……どうなってるんだよ、一体?
「中には、生きた人間は見当たらなかった……。念の為、小型ドローンをいくつか置いて来たけど……」
青い三輪バイクに乗って、妙に金属装甲部分が多い……その上に、肘や膝や手首には格闘用らしい棘まで有る……多分、戦闘用らしい強化服を着た誰かは、そう言った。
「やっぱりか……」
いや、当り前だよ。あんな状況じゃ……って言うか、この子、何で、無事なの?
そう……戦闘用強化服の「人」と言うより、「子」だ。
身長は一六〇㎝未満……多分、一五〇㎝台前半。
声も……下手したら、ボクより年下の女の子……。
「丁度いい。おい、自白剤有るか?」
今度は阿呆っぽいペイントの作業用強化服。
「お前が引っかかったのと同じ手が通じるマヌケがそうそう居ると思うのか?」
「うるせぇ」




