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関口 陽(ひなた) (7)

「な……何……あれ?」

 「猿神(ハヌマン)」が呆然とした口調でそう言った。

 私達が、さっきまで居た辺りから、無数の悪霊が溢れ出ていた。

「どうやら……『神保町』の『自警団』のリーダーが呼び出した悪霊達が暴走してるみたいだ……」

「何とか出来るか?」

 そう聞いたのは「副店長」。

「無理……無理……無理……絶対無理……」

 多分、「秋葉原」全体とは行かないまでも、この辺りの区画は、立ち入り禁止にした方がいいレベルのヤバい心霊スポットと化すだろう。

 その時……。

「あれ……まさか……。おい‼ 何で、そいつ助けたのっ⁉」

 「早太郎」が悪霊の(むれ)の中から現われた「羅刹女(ニルリティ)」にそう言った。

「敵とは言え、知らない仲じゃないし……そもそも……お前の身内だろ」

「捨ててくりゃ良かったのに。そいつが、俺の家族に、どんだけ迷惑かけたか知ってるだろ⁉」

「前向きに考えろ。こいつを一度ブチのめしたいと思ってるのは、お前だけじゃないだろ。易々と死なせてやるのも考えモノだ」

 「羅刹女(ニルリティ)」が乗っている三輪バイク(トライク)は……全身に大火傷を負い、縄で縛られた狼男を引き摺っていた。

「で、何が起きてる?」

 こいつは、どうやら、魔法的・霊的なモノから一切害を受けない代りに、魔法的・霊的なモノを何1つ認識出来なくなっているらしい。

 つまり、この大騒動も、こいつには見えていない。

「端的に言えば……かなりマズい事。とんでもない数の悪霊が暴れ回ってる……。今はこの辺りだけだが……放っておくと更に広がる……。下手したら……悪霊達が居る世界への『門』が開いてる可能性が有る」

「何とか出来……」

「ない。出来ない。少なくとも私じゃ無理」

「時間稼ぎも無理なのか?」

「えっ?」

「捕まってるお前の仲間が……二十人以上居るだろ。そいつらを助け出して、クスリが抜けて正気に戻ったら、これを何とかするのを手伝わせる。可能か?」

「ま……まぁ、私より腕が上なのが何人か居るんで……いや……確実とは言えんが……」

「追い祓ったり、半永久的な封じ込めまではしなくていい。お前の仲間を助け出して、回復させるまでの間だけ、一時的に封じ込めるのも無理か?」

「ああ……まぁ……やってみる……。それも確実とは言えないけどな……」

「判った……。この捕虜を頼む。私は戻って、逃げ遅れた一般住民が居ないか確認してくる。『副店長』、この『島』に来てる後方支援要員で、避難誘導に長けた人は?」

「安心しろ、とっくにこっちに向かってる……。十分な人数かは別にしてな……」

「なぁ……所で……、この悪霊を呼び出したヤツは……どうなった?」

 悪霊が暴走してるって事は……制御してるヤツが居なくなった、って事だ……。だとすれば……答は2つに1つ。

「……説明しにくい……。更に悪霊を呼び出そうとしたみたいだが……その直後に、いきなり全身から血飛沫をあげて……何か見えないモノに食われるような感じで……肉片の1つも残さず、どっかに消えた」

 どうやら……『神保町』の『自警団』のリーダーは……悪霊の制御に失敗して自滅したようだ。当然、それまで呼び出してた悪霊も、新たに呼び出そうとした悪霊も制御を失ない暴れ回る事になる。

 何て事だ……たった1日……いや半日足らずの内に、この「島」では……。広域警察の支局と地元警察の両方の荒事専門のエリート部隊は壊滅。その事態をたった1人で引き起こした「本土」のチート級の化物ヤクザも……全身大火傷で戦闘不能……。4つ有る「自警団」は、最強の1つを残して、残り3つは事実上の崩壊。そして、「秋葉原」の一画には立ち入り禁止級の心霊スポットが出現する可能性大。

 だが、この時、私は、まだ知らなかった。

 この「島」の最も長い夜は……そして、気障ダサい言い方だが、この「島」を含めた日本各地に点在する4つの「(まが)い物の東京」全てにとっての歴史の変わり目は……始まったばかりだと云う事を。

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