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高木 瀾(らん) (4)

「何が起きてるか判るか?」

 自ら「肉の盾」となって重症を負った連中が立ち上がり、私にしがみ付き始めた。

『お前が攻撃しようとしたヤツが……大量の悪霊を呼び出した。その悪霊に取り憑かれたんだ』

 「大元帥明王(アータヴァカ)」から返事。

「その悪霊を何とかする方法は?」

『無い。今の私じゃ……無理だ』

「悪霊を呼び出したヤツを倒せば、何とか成るのか?」

『ああ、多分な……けど……』

「けど……何だ?」

『かなり凶悪な悪霊だ……。除霊出来ても……取り憑かれた奴らは無事じゃ……』

「行けっ‼ 早く‼ 行って、お前の仲間の無事を確認しろっ‼」

『えっ⁈』

「その悪霊とやらが、お前の仲間にも取り憑いてる可能性が有るだろっ‼」

『わ……判った……』

「腕も装備も中々だが……所詮は、お行儀のいい『本土』の『正義の味方』か……」

 目の前に居る「神保町」の自警団のリーダー……多分……が嘲るようにそう言った。

「この程度で、私を何とか出来ると本気で思っているのか?」

 そう言ったモノの、マズいのは確かだ。

 「鎧」の(てのひら)の端子から電流を流しても、「悪霊」に取り憑かれたヤツは動き続けている。

「あの……総帥(グランドマスター)……これ……流石に……」

 「神保町」の「自警団」員らしきヤツが、躊躇(ためら)いがちな口調でそう言う。

「街頭防犯カメラは、まだ動いてるのか?」

「えっ?」

「聞かれた事に答えろ」

「ええ……ええっと……」

 自分達のリーダーに、そう言われた「神保町」の「自警団」員は、携帯電話(Nフォン)を操作する。

「この辺りのヤツは……壊れてるみたいです」

「なら、問題ない。その『鎧』が電池切れになるか……『鎧』の中のヤツが疲れ果てるのを、ゆっくり見物しよう」

(いず)(いき)は入る(いき)を待つ事なし。風の前の露、なお(たとえ)にあらず」

「何の(まじな)いだ?『魔法』の専門家として忠告させてもらうが……何の霊力(ちから)も感じなかったぞ……。つまり……」

 私が、その言葉を唱えると、「神保町」の自警団のリーダーは、出来の悪い生徒へ教えるように告げる。

 次の瞬間、銃声と血飛沫と絶叫。

 私の手には拳銃が握られていた。

 「鎧」の両手首には隠し武器である(ブレード)が出現。

 私の動きを封じようとしたゾンビもどき達は、ある者は片腕が千切れ、ある者は片足を失ない……戦闘能力を半減させていた。

 私が唱えたのは、もちろん呪文などでは無い。

 効力が有るのは、私だけだ。

『5分後に、私の()()()()を解除するキーワードを無線で連絡してくれ』

 私は、仲間に、そう無線連絡した。

了解(Affirm)

 苹采(ほつみ)姉さんより返事。

 かなり危険な手だが……これしか無いだろう……。

 あと5分間……私は……大半の人間が持っている「殺人に対する本能的な禁忌感情」が抑制された状態に有る。

 言うなれば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()状態だ。

 そうだ……「英雄」になる為に、自分の妹と弟を殺した、あの底が抜けまくった阿呆と同じ……一時的・擬似的なサイコパス。

 私とヤツの違いは……嫌でも正気に戻れる手を打ったか、あえて心を凍り付かせたままでいるかぐらいだ。

「撤退か……降伏を勧告する」

「ふざけるな‼」

 「神保町」の自警団のリーダーの回答と同時に……次々とゾンビもどきが押し寄せてきた。

「訂正。自己暗示の解除は……3分後で十分だ」

 次の瞬間……ゾンビもどきの頭が3つ宙を舞った。

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