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関口 陽(ひなた) (5)

「しかし……気に食わんな……。『本土』の田舎者どもは御存知無いらしいが……その強化服(パワードスーツ)()()では『英雄』の象徴だ」

 どうやら……私と「副店長」の「水城(みずき)」の事を言っているらしい。

「この『島』の『英雄』のコスプレをした阿呆な他所者(よそもの)が2人か……。しかも……片方は……何だ、その馬鹿っぽい塗装は?」

 少しづつ、「神保町」の「総帥(グランドマスター)」の「気」が高まっていく……。一見、しょ〜もない事をボヤいてるように見えるが、多分、何かの術を使おうとしている。

 この手の空気を読めない……または、わざと読もうとしてないらしい「羅刹女(ニルリティ)」「猿神(ハヌマン)」「早太郎」「副店長」が「神保町」の「総帥(グランドマスター)」を攻撃。

 しかし、「Armored Geeks」の兵隊が次々と「肉の盾」になり、銃弾や矢を防ぎ、「羅刹女(ニルリティ)」と「早太郎」の前に立ちはだかる。

 そうか……。「Armored Geeks」の兵隊の1人は……「精神操作」の「上書き」を阻害する「魔法」がかけられていた。おそらくは、「Armored Geeks」のメンバーの大半は、「精神操作」で「作られた」使い捨ての「兵隊」。

 それこそが、「Armored Geeks」が短期間で勢力を拡大出来た秘密なのだろう。

 その「精神操作」の「魔法」をかけたのは……多分……。

 「科学オタク(Geeks)」を名乗ってる連中が「魔法使い」無しには組織を維持出来ないとは、皮肉としては中の上ぐらいの出来だ。

「やりにくいな」

「全くだ……」

 この4人……「有楽町」の警察の特殊部隊をたった1人で壊滅させた化物を更に鎮圧した連中なら、「Armored Geeks」や「サラマンダーズ」のチンピラなど、一瞬で皆殺しに出来るだろう。

 だが、あいつらは、あくまで「正義の味方」「御当地ヒーロー」。チンピラや人間のクズでも、あまりに弱い相手を一方的に虐殺するのは、気が進まないらしい。

 しかし……ヤツ……「神保町」の「総帥(グランドマスター)」は、私と「副店長」が、この「島」では「英雄の象徴」である「水城(みずき)」を着装してる事をとやかく言ってるが、そもそも、その「英雄」を殺したのは……。

 そうだ……一か八か……やってみるか。

「『偽物の英雄』を殺せ‼」

「この『()()』の『英雄』石川智志(さとし)を殺したのは、そいつだ‼」

 私と「神保町」の「総帥(グランドマスター)」が、ほぼ同時に、「言霊」を込めた「命令」を叫ぶ。

 もちろん……力や技術は向こうが上だ。

 普通の「魔法」勝負なら、私は瞬殺されるだろう。

 しかし、「精神操作」……それも、時間をかけ薬物なんかを併用する「職人芸」ならともかく、今みたいな状況では、単純な力や技術が上のヤツが「勝つ」とは限らない。

 自分を舐めてるヤツの心に恐怖を呼び起こそうとしても、怖がってくれるとは限らない。

 自分を忌み嫌ってるか眼中に無い相手に「俺に惚れろ」と云う「精神操作」をやっても成功率は著しく下る。

 生命の危険が有る状況から逃げたがってるヤツに「逃げるな」と云う「精神操作」を行なうのは困難……少なくとも、何かの一工夫が必要だ。

 そして、この強化服(パワードスーツ)が「英雄の象徴」だと云う強い思い込みが有るヤツらに「あの強化服(パワードスーツ)のヤツらを殺せ」と云う「精神操作」を行なったとしても……。

「……あんた……思ったよりやるな……」

 「羅刹女(ニルリティ)」の口調は、呆れてるのか誉めてくれてんのか、よく判んないモノだった。

 周囲に居た「秋葉原」の2つの「自警団」の連中は、呆然とした表情で立ちすくんでいた。2つの矛盾する「精神操作」をほぼ同時にかけられた結果だ。

「『思ったより』って何だ?」

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