関口 陽(ひなた) (2)
銃弾と魔法が飛び交う混乱状態。
それが、今の「秋葉原」だ。
早速、自動小銃を乱射している河童と、それに何かの魔法をかけようとしていた「神保町」の「魔法使い」の戦いの場に遭遇した。
「ちょっと行って来る」
「羅刹女」は乗っていた青い三輪バイクから降りると……。
轟音。
「羅刹女」の「鎧」の背中と脹脛から……何か……炎のようなモノが吹き出る……。
いや……炎じゃない……。何だ、アレは……?
霊的なモノらしいので、他の人間も同じに見えるとは限らないが、私には、それが炎に焼かれる無数の死霊に見えた。
もの凄いスピードで、自分達に接近している「羅刹女」に気付いた河童は……唖然とした……いや、河童の表情が人間と同じかは判らないが、少なくとも唖然としているように見える表情になり、どこかに無線で連絡。
しかし、それが終らない内に、「羅刹女」の手が河童の頭を掴み……微かな光……そして、河童の体から力が抜け、自動小銃は地面に落ちる。
「わ……我が……前方にラファエル……。我が後方にガブリエル」
それを見た「神保町」の「魔法使い」は呪文を唱える。動き易くラフな格好の三十前後の男だが、ダークグレイのフード付のブルゾンには防御魔法が、手に持ってる実用性皆無のデザインのナイフは明らかに「魔法武器」「焦点具」、そして、そいつの「気」も、そこそこの「量」で、しかも「気」を武器として操れる者に特有の「型」が有った。
「羅刹女」は「魔法使い」に威嚇射撃。
「まさか『呪文を唱えてる最中に卑怯だぞ』なんて言わないよな?」
おい、何、呑気な事を言ってる?
ヤツの「使い魔」……オレンジ色の巨大なコブラに見えるモノは既に召喚が終って……。
「うわあああっ‼」
とは言え「魔法使い」も、どこの誰か判んないヤツが、いきなり現われた挙句に銃撃してきて、流石に慌てているようだった。
オレンジ色のコブラは口を開け、かなり強力な「気」を「羅刹女」に吹き掛け……。
何も起きなかった。
そして、一瞬の後、「神保町」の「魔法使い」の方も、何も起きなかった事が何を意味するかを理解したようだった。
「うわあああっ⁉ 何でだっ⁉ ぎゃぁっ‼」
「羅刹女」は悠々と「魔法使い」の元まで歩いて行って、軽く掌底突き。河童の時と同じく、わずかな発光……おそらくは電撃だ。
「おい、どうなってる?」
顔は見えないが、一瞬、キョトンとした事だけは推測出来た。
「えっ?……ああ、こいつが何かやったのか?」
「み……見えなかったのか?」
おかしい……。あの使い魔は、そこそこ程度のヤツで、しかも、気配を隠すような真似はやっていなかった。霊感0のヤツでも気配ぐらいは感じる筈だ。
「この『鎧』は……大概の霊的攻撃を防げる……代りに、着装してる間は、大概の霊的存在を認識出来なくなる……らしい」
「どう云う『鎧』だ?」
妙な「鎧」だ……。まるで、チート能力を与える代りに、「何か」を奪ってしまうような……。
「科学」の産物では無いのは確かだ。同時に「魔法」の産物でも無い。こんな「鎧」を作る「魔法」など聞いた事は無い……。
まさか……与太話だと思っていた、あれは、本当だったのか?
「魔法」に似て非なる……そして「科学」とも異なる「何か」……「魔法使い」にとっての「魔法使い」……「超能力者」にとっての「超能力者」……そうとしか呼べない「何か」が存在している、と云う……。
「説明は後だ。この手のモノを使った事は?」
「羅刹女」は、河童から奪った自動小銃を私に渡そうとする。
「ごめん……無い……えっ?」
「また……てめえか……」
「羅刹女」の背後に、そいつが居た。
「元気そうで何よりだ」
「こ……こいつ……まさか……」
「そうだ。味方じゃない方だ」
呼吸を整え、平常心に戻るまで、何秒かかっただろう。
心の中で、私の守護尊・金剛蔵王権現の「種子」を描く。
「オン・バキリュウ・ソワカっ‼」
下腹部に「気」を溜める。
「吽っ‼」
気弾は、その「狼男」に命中した。
続いて、「羅刹女」が、狼男を攻撃。
私に見えたのは3つ。
まず、銃撃。続いて蹴り。更にフックのように狼男の首を殴り付け……いや違う……「羅刹女」の手首に刃が出現していた。殴ると見せ掛けて、その刃による斬撃。
轟ッ‼
もの凄い風切り音と共に狼男の蹴り。
「羅刹女」は吹き飛ばされ……。




