玉置レナ (4)
「ねえ……『御神渡り』って……昔、長野県の……だったっけ……諏訪湖で起きてたヤツでしょ?」
あたしは、双眼鏡を覗きながら、そう聞いた。
ちなみに、その諏訪湖は、十年前の富士山の噴火で……かなりとんでもない状態になっているらしい。
「ああ……」
「あれ、絶対に『御神渡り』とは違うと思う」
「かもね……」
たしか『御神渡り』は冬に諏訪湖の氷が割れる現象で、絶対に、秋の玄界灘で氷で出来た道が出来る現象じゃないと思う。
「瀾の妹って、一体、何者なの?」
「君の同類だよ。望んでもないのに『神』を名乗る化物に一方的に選ばれ、とんでもない力を授かった人間。……まぁ、その中でも更に桁外れだけど」
なるほど。だから、瀾は、自分の妹を、この「島」で起きた事件に関わらせようとしなかったのか……。
たしかに、あんな力の持ち主が、ちょっとポカしたら、この「島」が丸ごと沈む。
「あのさ……まさかと思うけど、今年の3月に、久留米で起きた……」
「ああ、あいつと同じ力の持ち主がやらかした」
「えっ? 他にも居るの?」
「5人……」
「へっ?」
「水を司る『神』の中でも最上位の5体……世界中の他の『水の神』を自由に支配出来る『神』の巫女が……あいつと3月に久留米で騒ぎを起こしたヤツを含めて5人、日本列島に居る……らしい」
そうか……私と……あと、それ以外の全人類の九十ウン%ぐらいが知らなかっただけで……地球は、遥か大昔から……無数の傍迷惑な自称「神様」が好き勝手に遊んでる地獄のような惑星で、人間の大半は、その神様が面白半分にやってるいたずらや神様同士の喧嘩のとばっちりを「天災ではあっても科学的に説明可能な現象」だと思い込んでたのか……。
そして、氷の道を走って来たトラックは次々と、この島に上陸した。
内2つには工事用のブルドーザー兼バックホーに見えるモノが載っている。……だけど良く見ると違う。
窓は小さい代りにあっちこっちにカメラが搭載されている。
前面のブレードは、やたらブ厚い。
ショベルの代りに付いているのは、頑丈そうなマジックハンド。
良く見ると「腕」も油圧式じゃなくて、電動式の人口筋肉が使われてるらしい。
そして、結構大きい機関銃まで取り付けられている。
「な……なに……あれ……」
「もうすぐ、この『島』に到着するヤツの相手には……あれでも不安だけどね……」
「おい、エテ公。チビ介の応援に行くぞ」
トラックの1つの運転手がそう言った。
「君は残ってくれ……。あの『魔法使い』2人が目を覚ました時に、君が居た方がいい」
そう言うと猿神さんはトラックの方に乗り込んだ。




