表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/101

百瀬 キヅナ (1)

 「秋葉原」の第2の「自警団」は、どうも、かなりタチの悪い狂犬ばかりらしい。

 「九段」地区をうろついていた変な格好……ハロウィンのイベントなら1日早い……の同業者らしき女の子と、更に、地下鉄の中で、その女の子を助けようとした2人の女の子……1人は、これまた同業者で、もう1人は「秋葉原」地区に有る高専のロゴが入った作業着を着ていた……の服に忍ばせておいたGPSは、何故か「島」のほぼ中央に有る公園に移動していた。

 女の子が移動したのでは無い。GPSだけが移動したのだ。

 2つのGPSは、ほぼ同じ位置で動きが止まり……±(プラマイ)一〇m以内の位置まで近付くと……そこには、プロテクター付きのライダースーツにフルヘルメットの男が数人。

 ある者は携帯電話(Nフォン)で誰かと話しており、別の者は半壊したドローンを手に首を傾げている。

「本部……あいつらが何者か判りますか?」

 私は雇い主である「九段」地区の自警団「英霊顕彰会」……通称「靖国神社」……の警備本部に映像を送って問い合わせる。

『多分、「秋葉原」の2つ目の「自警団」だ』

 困った事に、私の術は、同業……魔法使いとか呪術師とか言われてる連中……を騙し討ちに近い方法で倒す事に特化しており、純粋に物理的な防御力が高い相手は苦手だ。

 肌の露出がほとんどない厚手の服、それだけで、私の術をかける事は困難になる。

 ついでに、私の術は、同業者の多くが抱いている、ある思い込みを利用するモノなので、その思い込みを持っていない一般人に使っても意味は無い。

 使ってから効き出すまでにタイムラグが有る上に、術で病気になった相手が普通の医者に担ぎ込まれれば、あっさりタネが割れる。

 「人工の島」に有る数少ない緑豊かな場所。

 私は、公園内の樹の1つに隠れ、様子を窺う。

「追跡は打ち切りますか? それとも応援を……」

 その時、大声がした。

「おい、誰だ、そこに居るのは⁉」

 ……仕方ない、あの手を使うか……。

「出て来い。出て来ないと撃つぞ」

 呪文がまだ途中なのに、とんでもない事を言い出した。

「十数える内に出て来い。一、二……」

 それまでには何とか……。

「七、八……」

 終った。

「な……」

「う……うわぁ……」

 セコい術だ。物理的ダメージは皆無だろう。だが、逃げる暇ぐらいは稼げた筈だ。

 私が召喚したのは……ゴキブリの大群だった。

 ここは、この「島」の人間の憩いの場。当然、ゴキブリの餌となるもの……例えば弁当やスナック菓子の食べ残しなども結構な量が有る。

 つまり、ゴキブリやネズミなどにとっては、そこそこ程度の楽園だ。

 そして、公園のそこかしこから現われた黒い虫達は、ライダースーツの男達の体にたかっていった。

「ま……待て……」

 逃げ出す私の姿を見て、男達の1人がそう言った。

「うわああああっ‼」

「おい、山内、やめろ‼」

「でも、これなら、ゴキブリどもにも効く筈……」

「えっ?」

「そうなの?」

 馬鹿どもが何を騒いで……な……何を考えてるんだ? ここで……こんな場所で……この「島」の4つの地区のどこにも属していない場所……ある意味で、この「島」の「自警団」にとっての中立地帯……ついでに関係ない堅気(一般人)も居ておかしくない場所で……銃器は銃器でも、そんな代物を……。

 奴らの一人は、グレネードランチャー付の自動小銃を私に向けていた。

 そして……閃光と……。

 本物の銃撃の音とは、こんなにも頼り無い感じがするモノなのか?

 その時、私が抱いたマヌケな感想その1が、それだった。

 続いて、マヌケな感想その2が脳裏に浮かんだ。

 この状況で、あれを()()に撃つ意味は有るのか?

 弾頭の種類までは判らないが……()()()()()()()()()()から発射された弾丸は、()()()()()()()()()()()()()()()飛んで行った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ