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玉置レナ (1)

「私の人生を無茶苦茶にしに来た……私の救世主」

パク・チャヌク監督「お嬢さん」より


「あの……救急車呼びましょうか?」

 通りすがりの人に、同じ事を聞かれたのは、この2時間で8回目。

「えっと……大丈夫です。もうすぐ家族が迎えに来る筈なんで」

 残念ながら、本当は「家族」なんて居ない。

 両親と弟は十年前の富士の噴火の時に死んだ。……「富士の噴火で死んだ」のではなく、あくまで、その直前。クソったれな排外主義団体が、日本がまだ景気が良かった頃に、日本に働きに来た日系ブラジル人が住んでいた団地を襲撃し……その結果、家族および隣近所の中で、生き残ったのは、あたしだけだったのだ。

 あたしの育ての親だった勇気の父さんも5年前に死亡。

 勇気の妹の仁愛(にあ)ちゃんと弟の正義君は……8月に死んだ。2人を殺したのは、よりにもよって……。

 あたしは、フェリー乗り場の待合室で、高熱で意識が朦朧となっている女の子2人に挟まれて、助けが来るのを待っていた。

「とんだ『両手に花』状態だな」

 声の主は「本土」の友達の高木瀾。

「助かったよ……って、その格好、何?」

 彼女が着ているのは……黒いプロテクター付のライダースジャケットに、迷彩模様の厚手の生地のカーゴパンツに……やたらとごっつい黒のブーツ……多分、安全靴だ。手にはバイク用らしいフルヘルメットを持っている。顔には眼鏡……多分、眼鏡っ娘氏が愛用してるのと同じ「眼鏡型携帯電話(ケータイ)」だ。

「面倒に巻き込まれてるんだろ。用心に越した事は無い」

「でも、明らかに目立つよ、その格好」

 瀾は、あたしより1つ年下の筈だけど……でも、その齢の女の子としても小柄な方だ。そんな子がバイク乗りみたいな格好をしてる。

「じゃあ、あいつらは何だ」

「あいつら?」

「気付かれないように……でも、良く注意して見ろ……待合室でヘルメットを付けたままのヤツが何人も居るぞ」

「えっ?」

 言われてみて、ようやく気付いた。

「誰に狙われてるんだ、一体?」

 ごめん……わかんない……。いや……でも……。

「とりあえず、この2人が意識を取り戻してくれないと判らない……」

「仲間の車に運ぶぞ……。一応、医者も来てくれた」

「医者? どこから医者を連れて来たの?」

「『本土』の『御当地ヒーロー』の医療チームの人だ」

 い……医療チームって……この「島」の「自警団」だと……そんなモノが有るのは、「靖国神社」ぐらいだ……。

「ねぇ……もし、『本土』の『御当地ヒーロー』と、こっちの『自警団』が喧嘩する事になったら……」

「今のところ、そんな予定は無い筈だ」

 でも、これから起きるんじゃないのか? どうしても、そんな不安を消せなかった。

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